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北半球と南半球のチームが戦う、「ウインドウマンス」、6月のテストマッチの時期もクライマックスを迎えた。
6月23日(土)、世界ランキング4位のオーストラリア代表と同2位のアイルランド代表の3連戦の最終戦が、オーストラリア・シドニーにあるアリアンツスタジアムで行われた。
2戦を終わっての対戦成績は1勝1敗。オーストラリアはホームでランキング上位の強豪に勝ち越しを狙い、一方のシックスネーションズ全勝優勝のアイルランドは、このツアーをチームの結束力を高めることと、層の底上げをテーマに置いた。
ブリスベンで6月9日に行われた第1戦、アイルランドは司令塔のSO(スタンドオフ)ジョナサン・セクストンを先発させずに、セクストンと同じ欧州クラブ王者レンスターに所属する22歳のジョーイ・カーベリーを起用した。
だが、ホームのオーストラリアが気迫で上回り、ノートライに抑えて、18-9でアイルランドに勝利した。
メルボルンで6月16日に行われた第2戦では、オーストラリアのマイケル・チェイカHC(ヘッドコーチ)は、2013年に指揮官に就任してから初めて、前の試合と同じメンバーで臨んで連勝を狙った。
一方のアイルランドのジョー・シュミットHCはSOにセクストンを先発させる。オーストラリアに先制されるも、SH(スクラムハーフ)コナー・マレーとSOセクストンのハーフ団がゲームをコントロールし、26-21でアイルランドが敵地で39年ぶりに白星を奪った。
「ランズダウンカップ」をかけた両国のシリーズの勝敗は、最終戦で決着をつけることになった。シドニーのアリアンツ・スタジアムスタジアムには会場最多となる4万4085人のファンが駆けつけた。
この3連戦、基本的に固定メンバーで臨む方針だったオーストラリア。前の試合で腕を骨折したSH(スクラムハーフ)ウィル・ゲニアに替えてニック・フィップスを起用。
バックローにはFL(フランカー)カレブ・ティムに替えて、ルクハン・トゥイが先発。ジャッカルの名手デーヴィッド・ポーコックがNO8(ナンバーエイト)に入った。
対してアイルランドは、ケガ人などの影響もあり、5人の先発を変更したが、試合直前に先発予定だったHO(フッカー)ショーン・クローニンが外れ、HOニール・スカンネルが第2戦に引き続き先発することになった。ハーフ団は2戦目と同じSHマレーとSOセクストンが務めた。
オーストラリアのSOバーナード・フォーリーのキックオフで始まった試合は、アウェーのアイルランドが積極的に攻めるが、ホームのオーストラリアもそのアタックをディフェンスで止める拮抗した展開から始まった。
先制したのはアイルランド。相手の反則から前半8分、SOセクストンが40mの距離のPG(ペナルティゴール)を沈め、0-3。だが、オーストラリアも11分にSOフォーリーのPGですぐに3-3の同点とする。
14分にオーストラリアはキャプテンのFLマイケル・フーパーが負傷し途中交代してしまうが、アイルランドは21分にWTB(ウィング)ジェイコブ・ストックデールがシンビン(10分間の退場)となり、その直後のPGをSOフォーリーが決め、オーストラリアが6-3と勝ち越しに成功する。
しかし、その後のゲームの流れはアイルランドに傾いていく。数的不利を感じさせないアタックでオーストラリア陣内を攻めて、PG以上の得点を許さない。
30分、空中戦でアイルランドのキャプテンFLピーター・オマホニーとオーストラリアFB(フルバック)イズラエル・フォラウが空中で競り合って、オマホニーは脳しんとうで交替。
フォラウはシンビンになり、今度はアイルランドが数的有利となる。直後のPGをSOセクストンがPGを決めて、アイルランドが6-6と再び同点に。
34分にアイルランドが、SOセクストンのPGで3点を加えて6-9とするが、39分に今度はオーストラリアがPGで再び追いつく。そしてロスタイムにアイルランドが、PGを成功させ前半を9-12とリードして折り返す。
PGでしか得点が入らす、拮抗した展開だった前半と違い、後半はいきなり試合が動く。4分、アイルランドは得意のラインアウトからFWでモールを押して、最後はFLのCJスタンダーが右隅にトライ。SOセクストンのゴールは外れたが、アイルランドが9-17とリードを広げる。
ホームで連敗は避けたいオーストラリアは、積極的にボールを継続してアタックを仕掛けていく。やっとアイルランドディフェンスを崩したのは14分だった。
13フェイズを重ねて、最後はSOフォーリーがディフェンス裏にキックでボールを転がし、そのボールをWTBマリカ・コロインベテが拾って、そのまま右中間にトライ。SOフォーリーのゴールも入り、16-17と1点差まで追い上げる。
ここからはホームのオーストラリアが敵陣で攻める時間が長くなるが、26分に得たPGのチャンスを、SOフォーリーが外し、逆転することができない。
その後は、お互いにボールを継続する両者の一進一退の攻防が続く中、38分、アイルランドが相手のペナルティから得たPGを、SOセクストンが決めて、16-20とし、勝利をぐっと近づける。
試合終了まで残り1分となったところで、トライしかないオーストラリアは、リスタートのボールをFBフォラウがキャッチ。そこからフェイズを重ねて敵陣へと切り込んでいく。
しかし、右展開のパスがつながらず、最後はTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)の判定となったが、そのままノーサイドを迎えた。
16-20で勝利したアイルランドが2勝1敗とし、オーストラリア相手に1979年以来の敵地での勝ち越しとなった。
勝利したアイルランドのシュミットHCは、「今日はかなりペナルティで得点が取れたが、トライが欲しかったので、後半最初のトライには満足している」。
「このツアーでたくさんの若い選手が出てきた。このダイヤモンドをもっと磨かないといけない。選手にも全てのスタッフにも感謝しないといけない」と敵地での成果に満足そうに語った。
敗戦したオーストラリアのチェイカHCは、レフェリーの判定に不満だったようで、試合後の会見に出るよう、レフェリーを促したが断られたという。
チェイカHCは試合後の会見で「(メディアの)みなさんが見ていたのだから、この疑問に答えられるのはレフェリーしかいないのは明白ではないか」と口にした。ただ欧州王者のアイルランドと互角に戦えたことはコーチ陣、選手たちにとって自信になったに違いない。
アイルランドの選手たちは、この後休暇に入り、9月から始まるシーズン、そして代表としては11月のホームで戦うイタリア代表、アルゼンチン代表、ニュージーランド代表、アメリカ代表とのテストマッチに備える。
一方のオーストラリアの選手たちは、スーパーラグビーの残りの試合に戻り、南半球代表4カ国の対抗戦「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」、ニュージーランド代表との「ブレディースローカップ」に向けて、8月には再び代表キャンプが始まる。
ワールドカップ日本大会まで1年あまりとなった6月、オーストラリア、アイルランドともに実りのある1ヶ月になったようだ。
オートラリア代表はプールD、日本代表と同じプールAのアイルランドは、ワールドカップ本番では準決勝以降でしか当たらない。両者は2019年までレベルアップし、日本で再び対戦することがあるのか。楽しみに待ちたい。
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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