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ラグビー コラム 2018年6月18日

【ラグビー日本代表コラム】連勝するには、まだ実力が足りなかった。それを痛感する敗戦だった。6月テストマッチ第2戦イタリア戦レビュー

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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連勝するには、まだ実力が足りなかった。それを痛感する敗戦だった。ただ、試合直後のリーチ マイケル日本代表キャプテンは、悔しさだけではない表情をしていた。「結果にはガッカリしています。けれど、ハートは日本にもイタリアにも感じました」。記者会見ではこんなコメントもあった。「流れが悪くなった時、リーダー陣がどう対応して立て直すか、後半入ってきた選手も含めゲームをどうコントロールし、(勝利に)もっていくかの勉強になりました。全体的にチームはレベルアップできたと思います」。トップレベルのテストマッチで勝つことの難しさを体感し、さらにチームは成長できる。言葉だけでは伝えられないことを伝えられた。キャプテンとして、そんな感触を得たのかもしれない。

ラグビー日本代表

日本代表は「ティア1」相手の連勝を目指すもその壁が厚く。

ラグビーには世界ランキングとは別に「ティア1」、「ティア2」という階層分けがある。北半球最高峰の選手権「シックスネーションズ」に参加するイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、フランス、イタリア。南半球最高峰の「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」に所属するニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンの計10か国が「ティア1」。日本も含む、それ以下の世界ランキング20位くらいまでの国が「ティア2」だ。ティア1の国々は互いに切磋琢磨してレベルアップできるが、ティア2をどう強化していくのか、それが世界のラグビー界の課題だった。

そして今、スーパーラグビーへチームを送り込み、急速にティア1との差を詰め、その中に割って入ろうとしているのが日本だ。だからこそ、イタリアに連勝することに意味があった。一方、ティア1のイタリアとしては意地でもティア2には連敗できなかった。イタリア代表のコナー・オシェイヘッドコーチはほっとした表情だった。「第1戦は我々の本来の姿ではない。そのことを、日本の皆さんにも、イタリアのファンにも証明する必要がありました。素晴らしいテストマッチ(国代表同士の試合)だったし、選手たちのパフォーマンスは素晴らしかった」。

互いに負けられないテストマッチは、6月16日、午後2時にキックオフされた。ノエビアスタジアム神戸には、20,276人の観衆が集っていた。ピッチはハイブリット芝(天然芝と人工芝の混合)。日本国内のラグビーでは初めてハイブリット芝の上で行われる戦いだった。イタリアは立ち上がりからフィジカルの強みを押し出して激しく前に出た。日本は第1戦で勝利したものの、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチによれば、36のミスタックルがあり、この部分の改善が連勝の生命線だった。しかし、フィジカル面で対抗する気持ちが強すぎたのか、前半4分、LOアニセ サムエラがハイタックル(肩から上へのタックル)でシンビン(10分間の一時退場)となる。14人となった日本だが簡単には崩されなかった。イタリアのモールを止め、ゴールラインを背負っても的確なタックルで対抗する。6分、イタリアが日本のインゴールに蹴り込んだボールを素早いバッキングアップで先に確保したSH田中史朗のプレーは危機管理能力の高さを示した。

イタリアのブレイクダウンで集中力高く一歩でも前に出る姿勢に日本の攻撃は芽を摘まれた。

イタリアのブレイクダウンで集中力高く一歩でも前に出る姿勢に日本の攻撃は芽を摘まれた。

前半14分、日本が先制PGのチャンスを得たが、SO田村優のキックが決まらず先制機を逃す。直後にアニセが戻って15人となったが、受けに回った十数分でイタリアに主導権を握られてしまった。19分、自陣からの攻撃でWTB福岡堅樹が相手陣深くにボールを蹴り込んだが、キックを追うディフェンスラインが揃っておらず、イタリアFBジェイデン・ヘイワードにカウンターアタックから抜け出され、WTBトンマーゾ・ベンヴェヌーティにトライを許す。スコアは、0-7。イタリアはブレイクダウン(ボール争奪局面)で集中力高く戦い、一人一人が一歩でも前に出る姿勢を示し、ターンオーバーを勝ち取るなど日本の素早い攻撃の芽を摘んだ。26分には、ラインアウトからのモールでトライを追加、日本も34分に田村がPGを返し、3-12で前半を折り返した。

後半も先にトライしたのはイタリアだった。4分、日本陣中盤のラインアウトからの攻撃でCTBミケーレ・カンパニャーロが大きくゲイン、最後はラックサイドに走り込んだFLジェイク・ポッレードリが2人のタックルを弾いてインゴールに躍り込む。これでスコアは、3-19。この16点差が最後まで日本に重くのしかかることになった。日本は後半なかば過ぎから、交代出場のSH流大、SO松田力也らが攻撃をテンポアップさせ、疲れの見えるイタリアの防御を翻弄。20分にCTBウィリアム・トゥポウ、25分には素早いパス回しからNO8アマナキ・レレイ・マフィがトライ。松田が難しいゴールを決めて、17-19と一気に差を詰める。勝利の可能性を感じたスタジアムが揺れた。

しかし、30分を過ぎて日本は自陣で手痛い反則を繰り返し、2本のPGを決められてしまう。最後は松島幸太朗のトライで、22-25の3点差に迫ったが届かなかった。松島の個人技に見えるトライだが、松島の大外にサポートで走っていたのは交代出場のPR浅原拓真。彼にタックラーの一人が引きつけられたからこそのトライであり、その献身的なサポートが光った。

ジョセフHC、リーチ マイケル

ジョセフHCは「規律が守れなかった」ことを敗因の一つにあげた。

試合後の記者会見では、ジョセフヘッドコーチが「規律が守れなかった」ことを敗因の一つにあげた。イタリアの圧力を受けた中でのミス、反則が多く、それがそのまま失点につながったからだ。攻撃面でも序盤は消極的になっていた。機を見てボールを展開しても選手が孤立してボールを奪われてしまう。攻撃選択のチグハグさもあり、サポートの遅れも目立った。イタリアはブレイクダウンへの激しさ、姿勢の低さがあり、モールが押し込めると見るやBKの選手も参加して押し切ろうとするなど勝利に対してどん欲だった。日本は第1戦の快勝でチームとして「準備通りやれば勝てる」という精神状態になっていたのかもしれない。試合に向けてのメンタルの作り方の難しさを感じる戦いでもあった。

ティア1カントリーに対して、チャレンジャーとして戦えていたのかと問われれば、そうではなかった気がする。なにより、イタリアのオシェイヘッドコーチが、「リアクションの部分で上回ることができた」とコメントしたように、攻守の切り替えなどリアクションで後れを取ったのは大きな反省点だ。パワーで列強に劣る日本は、攻守のリアクションの良さで勝負しなくてはいけないチームだ。スクラム、ラインアウトは互角に戦えるようになったが、素早さの部分が失われてはティア1に勝つことはできない。「19点を奪われてもあきらめず、勝つ可能性のあるポジションまでもって行けたことはポジティブです」。ジョセフヘッドコーチは、最後に追い込んだ選手たちを称えることは忘れなかった。

ラグビー日本代表

日本代表は過去の試合とは比較にならない「学び」を得てジョージアとの3試合目へ

冒頭のリーチのコメント通り、学ぶことの多い試合だった。ティア1と2試合、互いに分析をし合いながらの真剣勝負ができたことは何よりの財産だ。「貴重な経験」という定型句を過去に何度も使ってきたが、今回の2連戦での「学び」は過去の試合とは比較にならないほど多い。ティア1との2連戦で、先に勝って2戦目を迎えることは過去になかったからだ。リーチは、「どうやって勝つところまで持って行くのか、リーダー陣で話し合ってジョージア戦に向かいたいです」と前を向いた。ジョージアは世界最強のスクラムを組み、パワープレーはイタリアよりも上だと思ったほうが良い。テストマッチは勝つことを最優先にする戦いだ。今回の反省をもとに勝つことにどん欲な姿勢を見せてもらいたい。

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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