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ラグビー コラム 2018年6月5日

【ラグビー日本代表コラム】ヤマハ発動機ジュビロの清宮克幸監督は2018年春の日本代表強化をどう見るのか?(後編)

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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2019年のラグビーワールドカップ(RWC)まで500日を切り、日本代表の強化もいよいよ最終段階に入ってきた。スーパーラグビーに参戦するサンウルブズ、日本代表予備軍をレベルアップさせるナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)、そして日本代表の3本柱での強化は順調に進んでいるのだろうか。日本ラグビー屈指のコーチである、ヤマハ発動機ジュビロの清宮克幸監督はどう見るのか、2018年春の日本代表強化についてお話を伺った。このインタビューが行われたのは、NDSのニュージーランド遠征が終了し、サンウルブズがクルセイダーズ、ハリケーンズという昨年、一昨年の王者に敗れた直後のことだった。

«前編はこちら»

──6月は日本代表のテストマッチが行われます。この時期にイタリア、ジョージアという2チームと戦うことについては、どう思われますか。

サンウルブズ

6月のウインドウマンスで日本代表はFWが強いイタリア、ジョージアとの対戦する

「両チームともFWが強いチームですから、そこでどこまで戦えるかが一つの見どころです。イタリアは、シックスネーションズの試合を見る限り、出来上がったチームではない。穴はあると思います。ただし、イタリアは体が大きく、タックルミスをしてしまうと、ボールをつながれてしまうでしょう。ジョージアに対してはあの強力なスクラムとモールにどれだけ対応できるか。あとは、世界のレフリーがどんな笛の吹き方をするのかも注目です。日本代表がいろんな工夫でモールを止めると思いますが、そのときにどんな判定をされるのか、このあたりRWCへの準備になるでしょうね」

──2019年のRWCを見据えると、今年の6月、11月、来年の6月、日本代表のテストマッチ期間は3回しかありません。強化の時間は限られていますね。

「チーム作りとしては、すでに終盤に来ていますよね。いま強化をしているセットプレーと接点というコアの部分が、今秋に対戦するニュージーランド、イングランドにある程度通じたら、かなり自信になると思います。そこに向けて、イタリアとジョージアとの試合は大切です。コアの部分が通用しないと、猫だましのような戦い方をしないといけなくなりますから」

──奇襲作戦ではRWCで勝つことができないということですね。

「1試合であれば良いのですが、プール戦は4試合あります。2015年のRWCでの日本代表を振り返ると、試合で初めて披露したプレーは通用していました。南アフリカ戦でモールからトライを獲ったのも、それまでと押し方が違った。五郎丸がトライしたサインプレーも現地に入ってから作ったサインプレーです。しかも練習で一度も成功しなかったプレーが決まった。一発勝負はそういうことがある。2019年もそういうことができるはずですが、一試合分しか準備できなかったらそれで終わります。4試合分、準備をしておかないといけませんね」

──2015年は南アフリカにターゲットを絞って勝ちました。2019年のプール戦ではアイルランドが一番の強敵です。第2戦になりますが、ここで勝つことができれば、決勝トーナメント進出の可能性が大きくなります。ターゲットを絞るべきでしょうか。

「そういうヤマのはり方はしないほうが良いと思います。4試合分、しっかり準備しておくべきです。たとえば、ゴール前に攻め込んだ時のプレーを4つ準備して、1試合目はこれ、2試合目はこれ、というように。これは日本人的な考えですから、ジェイミーがどう考えるかは分かりません。2015年の日本代表は、2014年までと違うプレーをし始めました。RWCでは初めて見るプレーで相手が驚いていた。ベースを上げる時期と、RWCイヤーの一年は別だということだと思います。仕上げは最後の数か月、いや、最後の一カ月かもしれません」

──選手たちからは、アシスタントコーチ(アタック担当)のトニー・ブラウンを高く評価する声が聞こえてきます。彼のアタックをどう思いますか。

「面白いと思って見ています。彼自身がずっとラグビーのことを考えている感じですよね」

──サンウルブズの攻撃スタイルをどう思いますか。

清宮克幸監督

「面白いけど、加えてトニー・ブラウンみたいな10番が出てきて、ゲームをコントロールしないといけないと思います。いまは10番がボールを触る回数が少なすぎる気がします。トニー・ブラウンは選手時代、ひとりで20点持っているSOでした。田村優に任せればできるかもしれないけれど、そこまでボールを持たせていないですよね」

──SOを早く固定しないと間に合わない気がするのですが。

「どう戦うかというのは、ラインアウトと同じだと思うので、10番問題もそう考えれば良いと思いますよ。大事なのはコアの部分ですから。たとえば、RWC本番では対戦相手が初めて見る10番が出てきた方が良いかもしれませんよ」

──NDSの若手選手で注目している選手はいますか。

「SH斎藤直人のボールさばきの素早さは、すぐに代表に入れたほうが良いと思いました」

──日本ラグビーの素早さを体現できるということでしょうか。

福岡堅樹

福岡堅樹みたいによく動くWTBは海外にはいない

「たとえば、福岡堅樹みたいによく動くWTBは海外にはいないと思います。彼は日本人の俊敏性の代名詞みたいな選手です。ああいう選手が入って、ジェイミーのニュージーランドラグビーのアクセントになる。斎藤直人が入ってアクセントになる。長谷川慎(日本代表FWコーチ)のジャパニーズスクラムがアクセントになる。そうやって、ニュージーランドと日本のラグビーが融合して強いチームができる。そんなストーリーが綺麗ですよね」

──2019年のRWCで活躍が期待できる選手は誰ですか。

「それは分からない。2015年で言えば、トンプソン ルークがあんなに頑張るなんて誰も想像していなかったのではないですか。2019年も想像できないような活躍をする選手が出てくるかもしれない。トンプソンが日本代表のプレースタイルに合ったように、チームのスタイルと選手の能力が合致した時にいいパフォーマンスは出るものだと思います」

──優勝争いについては、いまのところ、ニュージーランド、イングランド、アイルランドあたりが候補に挙がっていますね。世界の勢力図をどう見ていますか。

「そういう視点で世界を見ていないので、なんとも言えないのですが、ひとつ言えるのは、プレースタイルには慣れが出てくるものだということです。ニュージーランドはスタイルがあるようでない。試合中にスタイルを変えられるから強いわけです。2年間快進撃を続けていたイングランドが今年に入って3敗した。これは相手に対応されたということです。そのときの処理能力、対応能力が足りなかったということでしょう。イングランドは今後、相手が慣れていないことをして2019年に向かうと思います。強化のピークと流行の終わり、その波の中をどう渡っていくかということなのでしょうね」

──2019年に向け、日本国内のラグビー熱をどう盛り上げれば良いと思いますか。

「日本全体が盛り上がるには日本代表が勝つしかない。でも、試合の開催地やキャンプ地といった、それぞれのエリアでの企画で小さな花を咲かせていくことはできる。ラグビーに関わってきた人間が力を合わせ、いろんなところで花火を上げていくしかない。僕は静岡を盛り上げたいと思っていますし、釜石など、これまで縁のあるところも盛り上げたい。それぞれの地元で、みんなが汗をかいていくしかないと思います」

──清宮さんが考えるラグビーワールドカップの魅力とは。

「RWCは国と国とが威信をかけてぶつかる代理戦争みたいなものです。どのスポーツでも国代表の戦いは同じかもしれませんが、ラグビーは体をぶつけ合うし、戦略的にもいろんな工夫ができます。インテリジェンスと勇気が必要で、どちらが人間力があるのかということを競う大会です。それが4年に一度だけ行われる。すべてのスポーツの究極形がラグビーのワールドカップだと僕は思っています。そのあたりを感じてもらいたいですね」

──最後に、6月の日本代表戦をどんな気持ちで見ればいいのか、教えてください。

「自分の子供が、来年の9月に大事な受験を迎える。そこに向かっての一回目の模擬テストだと考えてください。ここから自分たちの息子たちがどれだけ強くなっていくのか、どんなドラマが生まれるのか、その目撃者になっていくということです。野球で言えば、少年野球でデビューするくらいに思って、中学、高校、大学、そして日の丸を背負って戦うところまで見守る。そんなふうに見てもらったらどうでしょう。無理やり野球に結びつけてみました(笑)」

最後は、長男の幸太郎選手(北海道日本ハムファイターズ)に結びつけて語ったくれた清宮監督。日本代表について厳しい言葉が出るのかと思いきや、条件付きながら、十分にRWCで戦えるチームになってきていると高く評価した。しかも、サンウルブズが史上初の連勝をするのは、このインタビュー後のことだ。2019年9月20日の開幕戦に向かって、日本代表がどんな成長を見せてくれるのか、6月の日本代表戦がますます楽しみになってきた。

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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