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2019年のラグビーワールドカップ(RWC)まで500日を切り、日本代表の強化もいよいよ最終段階に入ってきた。スーパーラグビーに参戦するサンウルブズ、日本代表予備軍をレベルアップさせるナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)、そして日本代表の3本柱での強化は順調に進んでいるのだろうか。日本ラグビー屈指のコーチである、ヤマハ発動機ジュビロの清宮克幸監督はどう見るのか、2018年春の日本代表強化についてお話を伺った。このインタビューが行われたのは、NDSのニュージーランド遠征が終了し、サンウルブズがクルセイダーズ、ハリケーンズという昨年、一昨年の王者に敗れた直後のことだった。
──苦しい戦いを続けるサンウルブズですが、スーパーラグビーで戦う成果をどう見ていますか。
「日本代表とサンウルブズが、ほぼ同じメンバーでチーム作りをしているということが成果でしょうね。メンバーをほぼ固めて、残りの一年数カ月を過ごすことができる。(ラグビーワールドカップで勝つ)可能性はいくらでも広がります。2019年に向かって計算できる選手も出てきた。今はまだ戦術を統一するというところまでは行っていないと思います。セットプレー(スクラム、ラインアウト)も安定してきた。ラインアウトは(RWC)直前でも、いろんな工夫ができる。RWCで初めて体験する動きをされたら、どんなチームも対応できない。絵の描き方次第ですが、それまでのテストマッチと違うシステムを、自滅しないでできればボールは獲れます」
──スーパーラグビーで、クルセイダーズやハリケーンズといった強豪国と変わらない実力を持つチームと戦えることも貴重な機会ですね。
「それによって地力は絶対についているでしょうね。もちろん、試合展開を見ていて、その動きは拙い、そこはしっかりコントロールすべきと気になるところはあります。そこがしっかりできれば、2、3トライの差は詰まるというところは、今後突き詰めていくでしょう。でも、根本のところはしっかり戦えていると思います」
──根本というのは何ですか
「セットプレーと、接点(相手とコンタクトする局面)です。ここで負けていたら話にならないけれど、戦えていますからゲームを作ることはできます。あとは、ロングキッカーがほしい。それから、ディフェンスもシステムに合う選手が何人かほしいですね。(いま取り組んでいる)前に出るディフェンスは良いと思いますが、出るだけになっている選手も何人かいます。そのあたりはメンバーを変えながら行けばいい。可能性はあると思いますよ」
──具体的にスーパーラグビーに参戦して良かったことは何でしょう。
「この一年ということではなく、5年、10年というスパンで考えたら、クルセイダーズ、ハリケーンズと後半の途中まで勝負になっているというのは格段の進歩だと思います。(スーパーラグビーのレベルで)それぞれに与えられた役割をしっかりできる選手が増えてきたということでしょう」
──サンウルブズの勝ち星が伸びないことをどう感じていますか。
「そんなに問題じゃないでしょう。見ているだけでもいくつかの課題はあります。しかし、課題があるほうが先のロードマップは作りやすいですからね」
──今年の4月に、NDSがニュージーランドに遠征しました。JAPAN Aとして、スーパーラグビーの若手チームと3戦して2勝1敗という成績でした。この結果をどう見ますか。
「そのレベルで戦える選手が増えているということです。僕がサントリーの監督をしているとき(2006年~2009年)、ハリケーンズの若手チームと練習試合をしたことがあります。今後、頑張ればハリケーンズとプロとして契約できるという20歳以下の選手たちでしたが、サントリーは歯が立たなかった。5、6人、サントリーにほしいと思ったくらいです。今回、NDSの選手たちが試合をした相手というのはそのレベルの選手たちです。そう考えると、日本の選手も立派に戦えるようになったなと思います」
──コーチ陣も堀川隆延ヘッドコーチ(ヤマハ発動機ジュビロ)、アシスタントコーチの大久保直弥さん(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス)、相馬朋和さん(パナソニック ワイルドナイツ)など、トップリーグのコーチが軸でしたね。
「いまのトップリーグが持っているスタッフのエキスが出たと思います。ジェイミー(ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ)のやりたいことは彼らも分かっている。しかし、ジェイミーに足りないところも気付いている。今回の遠征は、ジェイミーの足りないところを日本人のスタッフで補ったのではないでしょうか。そして、選手たちが持っている力の多くを出すことができた。そして結果につながったと僕は見ています」
──足りないところとは。
「アジャストでしょう。ディフェンスで前に出るのが決まりですが、こういうシチュエーションの時は出るのをやめる、というようなアジャストです。今のサンウルブズは、出ようと決めたのだから出ようとしている。おそらく今は前に出て、前に出る能力が高くなったときに、引くこともできるようにすると、段階的に考えていると思います。しかし、すべて前に出ていたら足の速いWTBに(外側のスペースを)どんどん走られてしまう。そのあたりを、NDSはカバーし合ったのではないかと思います」
──サンウルブズは、いまベースを作っている段階と見ているのですね。
「戦うための武器を集めている段階でしょうね。NDSはそこに多少の調整をしたと思います。サンウルブズのようなプレッシャーもないから、遠征も楽しかったでしょう。どんどんエネルギーが出たのではないですか。ああいう遠征は楽しいでしょうね(笑)」
──ジョセフHCの今後のコーチングにも良い影響を与えそうですね。
「そういう話し合いはしていると思います。NDSのように日本人選手を多く起用しながら結果が出たら、同じポジションで実力が変わらない選手がいる場合、日本人選手にチャンスをあげてほしい。迷ったら日本人選手を起用する。それがNDSの試合で証明できたと思います。WTBのプレーを見ていると、福岡堅樹はボールを持っていないときの動きが明らかに他の選手よりも優れていますよね」
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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