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ラグビー コラム 2018年5月21日

サンウルブズ、ロスタイムの劇的勝利。初のスーパーラグビー2連勝

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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前節のレッズ戦で、10試合目にして今季初勝利を挙げたヒト・コミュニケーションズ サンウルブズは、5月19日(土)スーパーラグビー2018の第14節、ホームの一つ香港にストーマーズ(南アフリカ)を迎えた。

サンウルブズにとっては海外での初勝利、そして初の連勝がかかった試合になった。なお、香港でスーパーラグビーの試合が行われることは初めてのことだった。

「暑さが一つポイントになる」とジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)が言うように、高温多湿な香港でキックを上手く使いたいと意図したサンウルブズはレッズ戦からメンバーを変更。

バックスリーはWTB(ウィング)福岡堅樹だけでなく、空中戦に強いWTB山田章仁が、FB(フルバック)には松島幸太朗が先発に復帰。

共同のキャプテンの一人であるSH(スクラムハーフ)流大がリザーブに回り、この試合はもう一人の共同キャプテンのNO8(ナンバーエイト)ヴィリー・ブリッツがキャプテンを務めた。

ハーフ団はSH田中史朗と、前節、12本中12本のプレースキックを決めたSO(スタンドオフ)ヘイデン・パーカーと経験豊富な2人が務め、CTB(センター)は7試合連続でマイケル・リトルラファエレ・ティモシーがコンビを組んだ。

一方のサンウルブズに過去2勝1分とリードしているストーマーズは、PR(プロップ)ウィルコ・ロウ、LO(ロック)ピーター ステフ・デュトイ、NO8(ナンバーエイト)ニザーム・カー。

また、元近鉄CTBダミアン・デアリエンディ、元豊田自動織機CTBのJJ・エンゲルブレヒト、WTBディリン・レイズら、南アフリカ代表歴のある選手を先発に並べた。

他にもWTBにはセブンズのスター選手であるシアベロ・シナトラ、ロングキッカーのFBのSP・マレイがおり、ベンチにもPRフランス・マルハーバ、FL(フランカー)シヤ・コリシ、WTBレイモンド・ルールとスプリングボクス経験者が控えていた。

それもそのはずストーマーズは5勝7敗、総勝ち点が23と、2位に1点差と僅差ながらカンファレンス最下位に位置している。プレーオフ進出を考慮すると、白星は必須という負けられない状況だった。

試合は32度、湿度78%の中、4500人を超えるファンが見つめる中、キックオされた。前半からサンウルブズペースで試合は進むが、6分、SOパーカーのハイパントキックのキャッチでミスが起き、そのまま相手のWTBレイズに60mほどの独走を許してトライを献上(0-5)。

さらに21分にもターンオーバーからの攻撃を焦ったか、NO8ブリッツのパスをCTBエンゲルブレヒトにインターセプトされてトライを与えてしまい、0-12とリードを広げられてしまう。

ただ、ここでベテランが冴えを見せる。24分、SH田中がラックから、相手のディフェンスがいないと判断して抜け出しゲイン。

キックは相手に当たるが、その跳ね返りをCTBラファエレ・ティモシーがキャッチし、フォローしたSOパーカーが中央にトライ(7-12)。

前半33分。ストーマーズのWTBレイズに再びトライを許してしまい、7-17とされたが、サンウルブズは38分にSOパーカーがPG(ペナルティゴール)を決めて、10-17として前半を折り返した。

自陣からコンテストキックを蹴り続けて、自分たちより大きな相手FW陣の体力を消耗させるようという狙いは十分に伝わってきた。

ただ前半終了後、「ソフトトライを与えてしまった」とジョセフHCが指摘したように、後半、ディフェンスで粘り、どこまで相手の失点を抑えるかが鍵になると予想された。

後半、アタックのテンポを挙げたサンウルブズの攻撃が実ったのは、後半17分のことだった。

ボールを左右に大きく動かし、途中出場のSH流からSOパーカー、FB松島とパスをつなぎ、最後は右サイドでFLリーチ マイケルがLOグラント・ハッティングにオフロードパス。

ハッティングが長い手でファンブルしたボールをどうにか収めて、そのままトライ、ついに17-17の同点に追いつく。

25分、サンウルブズは途中交代で入ったLOヘル ウヴェがジャッカルで相手の反則を誘い、SOパーカーがPGを決めて20-17と、この試合初めて逆転に成功する。

しかし、負けられないストーマーズも31分、34分にはFBのマレイが長い距離のPGをしっかりと決めて、再び、20-23とリードに成功する。

ホーム、そして初の香港での試合で意地を見せたいサンウルブズは、40分、再び、LOウヴェがジャッカルを決めて、左サイド、逆風の中で40mを超えるPGをSOパーカーが決めて23-23と同点に。

ロスタイム、ストーマーズは反則を狙うかのように、強力FW陣を中心に17次攻撃を継続するが、サンウルブズは途中出場のHOジャバ・ブレグバゼがジャッカルし、ターンオーバーに成功。

自陣から左に展開、SOパーカーのキックパスをWTB福岡がキャッチし、ボールをつなぐ。さらに攻撃を重ね、ラックからSH流がSOパーカーにパス。

そのSOパーカーが、相手SHのプレッシャーを感じて、利き足ではない右足でDG(ドロップゴール)を決めて、26-23。試合はそのままサンウルブズの勝利でノーサイド。

前節に続いて殊勲のSOパーカーは「今日のように、最後にDGを決めて勝利したことは初めての経験です。(利き足の)左足で狙おうと考えていたが、たまたまその位置になってしまったので、右足でいくしかなくなって、やってやろうと思った」と胸を張った。

この試合もマイボールスクラムは100%(6/6)、さらに連敗中は課題だったラインアウトも風が吹く中でも、94%(15/16)とセットプレーの安定がアタックのリズムを生んだ。

また、タックル成功率は88%と高く、後半、チーム一丸となったディフェンスでしっかり粘れたこと、そして前半からキックを使って相手を疲れさせたことが勝利を呼んだと言えよう。

この試合が13試合目だったストーマーズも7点差以内の敗戦でどうにか勝ち点1を挙げて、総勝ち点を24としたが、南アフリカカンファレンス最下位のまま。

ストーマーズより試合消化が1試合少ないジャガーズ(アルゼンチン)が今節勝利して、総勝ち点を29と伸ばしてカンファレンス2位&全体7位。

同じく試合消化が1試合少ないシャークスも勝利して総勝ち点28としてカンファレンス3位&全体8位に順位を上げたため、ストーマーズのプレーオフ進出はかなり厳しい状況となった。

そのため、ストーマーズのゲームキャプテンLOクリス・ファン セイルは、「とても残念です。前半はチャンスが多かったが、そこで取り切れなかったので、後半あのような結果になってしまった」とコメント。

「後半、サンウルブズのパフォーマンスが我々を上回っていたと思うが、言い訳はしない。初めての香港のゲームは素晴らしい経験となったが、結果としては残念だ」と肩を落とした。

一方のサンウルブズはチームとして初の連勝、そして国外での初勝利、さらにストーマーズに対しても初勝利を収めることにも成功し、勝ち点4を積み上げて、総勝ち点を10に伸ばした。

オーストラリアカンファレンス最下位は変わらないが、4位のブランビーズとの差は6に縮まった。

DGが決まった直後、手を叩いて喜んでいたジョセフHCは「後半最後のゲームの流れは、チームを信じていました。パーカーのパフォーマンスは素晴らしいものでした。称賛を送りたいと思います」。

そして、「ここまで厳しい時もありましたが、サンウルブズの歴史的に 2連勝したことは素晴らしいことだと思います。チームが正しい方向に向かっているということだと思います」と胸を張った。

ゲームキャプテン、NO8ブリッツも「本当に素晴らしい選手のパフォーマンスで、素晴らしいゲーム。ファンのおかげで最高の雰囲気で、選手も奮起していい結果となった」。

そして「(DGを決めた)パーカーはまさにゴールデンブーツです。セカンドホームの香港で本当に素晴らしいパフォーマンスができた」と大きな笑顔を見せた。

サンウルブズはこの後、5月25日(金)にはレベルズ、6月3日(日)にブランビーズとアウェイでの連戦が待ち受ける。ただ、ジョセフHCとサンウルブズでの試合出場時間の多い日本代表選手は帰国し、6月のテストマッチ期間に備える予定だ。

NO8ブリッツはオーストラリアの連戦については「遠征はいつもチャレンジだが、とても楽しみにしている。才能のある選手がたくさんいて、強いチームと対戦するのは、サンウルブズにとっては良い経験となるし、我々も力があるので、何が起こるかわからない」と語気を強めた。

主力選手の一部が抜けることは、新しい選手にとっては大きなチャンスにもなろう。レベルズ戦はトニー・ブラウンコーチ、ブランビーズ戦はスコット・ハンセンコーチが指揮する予定だ。

サンウルブズが初の3連勝に向けて、オーストラリアで新たなチャレンジに挑む。

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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