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チーフスを大いに苦しめてくれるだろうプレーメイカーの復帰と、パス、キックなどあらゆるスキルに長けた「微笑み」のSOに注目 ウィークエンドピックアッププレイヤー
村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一サンウルブズの今季5試合目の相手は、過去2度の優勝を誇るニュージーランドのチーフスだ。今季よりサンウルブズに加入したリーチ マイケルが昨年まで3シーズン所属したチームでもあり、東芝ほか日本のトップリーグチームとも深いつながりがあり、日本のファンにとっても楽しみなチームの来日である。
南アフリカ遠征から帰国したサンウルブズは、チーフス戦に向けて3月22日午後にメンバーを発表した。多くのファンの目に飛び込んできたのは、SO田村優の名前だろう。左膝半月板損傷から調整を続けていたプレーメイカーの復帰は、なにより期待感を抱かせてくれる。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチも「シーズンが始動して専任の10番と呼べる選手が不在でしたが、 田村優のような本来のポジションである10番をつとめる選手が戻ってきてくれたことは嬉しい」とコメント。ディフェンスの穴を見極め、創造的なプレーで攻め落とすことができる田村の復帰がサンウルブズの攻撃力をさらに押し上げることになれば、チーフスを大いに苦しめてくれるだろう。
田村は2015年のラグビーワールドカップの日本代表のメンバーだが、正SOは小野晃征で、田村はSO、インサイドCTBのバックアップという位置づけだった。しかし、当時のエディー・ジョーンズヘッドコーチは「田村は自分の才能に気付いていない」と再三語っていた。世界トップレベルで戦えるオリジナルの才能を持っているのに生かしていないという意味だ。その後の日本代表戦での活躍は、その言葉を証明したが、さらにスーパーラグビーの舞台でも独特の間合いでディフェンスを崩すプレーを披露してもらいたい。今回は、キャプテンの流大がリザーブ(控え)にまわり、SHではベテランの田中史朗が先発する。経験豊富な2人がサンウルブズの攻撃を司る。
このほか、LOヘル ウヴェも負傷からの復帰で、今季初登場。大腿部を痛めていたHO堀江翔太、レベルズ戦(第3節)での脳震とうで戦列を離れていたCTBラファエレ ティモシーが戻ってくる。そして、リーチ マイケルも先発。「自分たちはアタックに自信を持っているので、それをチーフスにぶつけるだけ」と古巣との対戦に腕を撫している。
ここまで2勝1敗のチーフスも強力なメンバーだ。スーパーラグビーの公式サイトで前節(第5節)のプレーヤー・オブ・ザ・ウィーク(最優秀選手)に選ばれたLOブロディー・レタリック(204cm、121kg)は、12回のボールキャリーで59m前進し、3度、クリーンにディフェンスを突破し、トライもあげている。大型LOながらその運動量は脅威。チーフスはレタリックほか、CTBアントン・レイナートブラウン、FBダミアン・マッケンジーがチーム・オブ・ザ・ウィーク(週間ベスト15)に選出された。なかでもサンウルブズ戦ではSOに入るダミアン・マッケンジー(22歳)は一番の注目選手だろう。
175cm、81kgという小さなサイズながら、2016年の代表デビュー以来、オールブラックスですでに12キャップ。抜群のスピードで次々にタックラーを置き去りにする。本来はSOの選手だが、そのスピードゆえにU20ニュージーランド代表ではFBでプレー。2014年にはニュージーランドのエイジグループの年間最優秀選手に選ばれている。チーフスでも主にFBで才能を披露してきたが、パス、キックなどあらゆるスキルに長けた彼の今後を考えれば、SOで経験を積んでいきたいところ。前節は、南アフリカのブルズ相手にFBでプレーし、13回ボールキャリーして8人のディフェンダーを突破し、3回のオフロード(タックルされながらのパス)、キッカーとしても11得点。サンウルブズ戦はSOで登場。田村優との駆け引き、仕掛け合いは楽しみだ。
日本の若い選手たちには、なぜ彼が小さな体でオールブラックスになれるのか、じっくり見てもらいたい。そして、何度も書いているが、プレースキックの狙いを定めたあとの「微笑み」もお見逃しなく。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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