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モーター スポーツ コラム 2024年7月19日

平良響、もう一度巡ってきた“人生最大のチャンス”

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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平良響(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)

今週末、富士スピードウェイで行われる2024全日本スーパーフォーミュラ選手権の第4戦。ここに自身のドライバーキャリアをかけた大一番に臨む者がいる。今季、SUPER GTのGT300クラスで活躍中の平良響だ。

沖縄県出身の平良は地元でカートの練習を重ね、2019年に4輪カテゴリーにステップアップ。2020年にはシリーズチャンピオンを獲得した。現在の国内トップカテゴリーへの登竜門的な位置付けとなっているFIA F4でチャンピオンを獲得したということで、一気に注目度が増していった。

2021年から全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権に参戦を開始。参戦1年目から表彰台に上がる活躍をみせていたが、3位が最高位でシリーズランキング5位という結果だった。決して満足できる年間順位ではなかったが、その年の12月に行われたスーパーフォーミュラのルーキードライバーテストに参加する機会を得て、初めて国内トップフォーミュラのマシンをドライブ。早速1分37秒台のタイムを記録。自身も目標とするトップフォーミュラのマシンに乗れたとあって、終始目を輝かせていたのが印象的だった。

SFライツ2年目になると、開幕大会の第3戦で念願の初優勝を記録。そこからの活躍が期待されたが、中盤戦は思うように結果の残せないレースが続いた。第14戦のもてぎで2勝目をマークするが、この年チャンピオンに輝いた小高一斗から52ポイント離され、ランキング5位となった。

そして迎えた2023年シーズンは、カーナンバー1をつけてチームのエースとして参戦。トヨタの若手育成プロジェクト「TGR-DC」のメンバーである平良にとっては、ここで結果を残さないと次がないという“勝負の3年目”でもあった。

オートポリスでの開幕大会はライバルの木村偉織の3連勝を許す形となったが、続くスポーツランドSUGO大会では2連勝をマーク。その後は各レースで優勝を分け合うような一進一退の攻防戦が繰り広げられた。

スーパーフォーミュラライツ2023SUGO大会では連勝を果たした。

その中で着実にポイントを積み重ねた平良は、10ポイントリードのランキング首位で最終大会のモビリティリゾートもてぎを迎えた。しかし、勝負どころの大一番で速さをみせたのは木村の方だった。最初の2レースでポール・トゥ・ウィンを記録。3レース目の第18戦も平良より前でチェッカーを受け、逆転でシリーズチャンピオンを獲得した。

最終戦の表彰式を終えた後にシリーズ年間の表彰式も行われたが、逆転でタイトルを掴んだ木村は思わず感極まっていた。一方、その隣に立っていた平良は溢れてくる悔しさを我慢しているかのように険しい表情をみせていた。

今思うと、この結果が2024年シーズンに向けた明暗を分けることとなり、木村はSan-Ei Gen with B-Maxからフル参戦のチャンスを掴んだ。それに対して平良は、シーズンオフのSFルーキードライバーテストに乗る機会も得られず、2024年のフォーミュラカテゴリーでシートがないという状況になった。

もし、2人の2023年シリーズ順位が逆だったら……もしかすると別の展開が待ち受けていたのかもしれない。それを誰よりもわかっている平良は、フォーミュラカーのレースに乗りたいという想いを胸に秘めながら、SUPER GTなどの自身が参戦するカテゴリーで結果を出すことに集中していた。

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そうして2024年シーズンが始まり、SUPER GTの第3戦鈴鹿大会中、平良のもとに思わぬオファーが飛び込んできた。スーパーフォーミュラ第3戦SUGOにスポット参戦という話だ。

今季、ITOCHU ENEX TEAM IMPULの19号車には昨年のFIA F2王者であるテオ・プルシェールがフル参戦する予定だったが、開幕戦を終えたところで本人側の事情により離脱。第2戦オートポリスにはIMSAで活躍中のベン・バー二コートを代役起用したが、彼もIMSAのスケジュールを優先するため、第3戦以降のドライバーを探さなければいけない状況だったなか、平良に声がかかった。

オファーをもらってから大会当日まで約3週間。SUPER GTのGT300クラスで上位を争っているとはいえ、フォーミュラカーには半年間乗っていなかったという状況で本人も不安があったそうだが、限られた時間で可能な限りの準備をし、サーキット入りを果たした。

ぶっつけ本番で臨んだ臨んだスーパーフォーミュラ第3戦。

「ここからどうなるかは自分次第…。最初で最後のチャンスを切り開けるよう全開魂で頑張ります」と参戦発表の時、自身のSNSでコメントした平良。サーキットで彼に会った時もシンプルに結果を残して次に繋げるという気迫が感じられた。

しかし、事前のテスト走行もなく、ぶっつけ本番で上位に食い込めるほど甘いカテゴリーではないことも事実。予選Q1で果敢に攻めていくも、Q2進出ラインに0.3秒届かず敗退。19番手と後方からのスタートとなった。

翌日の決勝は雨と霧によりアクシデントが続出。ほとんどがセーフティカー先導の状態から赤旗が出され、12周時点で途中終了。平良のデビュー戦は17位。不完全燃焼と言わざるを得ない内容となった。

それでも、予選日に見せた平良の走りと状況への対応力は少なからずチームも評価している様子。星野一樹監督は平良のデビュー戦をこう振り返る。

「フリープラクティスから、すごく落ち着いてレースウィークを進めているなと……本当にビックリしました。僕だったらめちゃくちゃ気負ってしまって、とんでもないプレッシャーを感じて、とんでもない表情で週末を迎えていたと思いますけど(苦笑) スーパーフォーミュラは強者揃いというなかで、半年以上フォーミュラに乗っていないなかで、周りと戦えるような速さを見せたのは凄かったと思います」

スーパーフォーミュラ2024第3戦SUGO大会

「もちろん、本人は悔しかったでしょうけど、すごく見どころある予選だったと思います。順位的には後ろになってしまいましたけど、タイム的には『こことあそこが良くなればと……」いう感じでした。それはタラレバになりますけど、可能性を感じられて『この先が楽しみだな』と思える予選でした」

第3戦の内容が不完全燃焼だったこともあり、ITOCHU ENEX TEAM IMPULは7月の公式テストと第4戦富士大会も継続起用を決定。再び“人生最大のチャンス”が巡ってきた。

「また、人生最大のチャンスが来たなという感じです。多分、今後ずっと毎戦が大事なレースになっていくと思いますが、今回は大会前にテストもできるので、色々な評価ができると思っています。第4戦の富士はさらに頑張っていきたいなと思います」と平良。

この平良の活躍により盛り上がっているのが、彼の地元である沖縄県だ。第3戦SUGOでのデビュー戦も地元テレビ局で報じられたほか、沖縄の各メディアでも取り上げられている。

「地域的なところもあってか新聞やテレビで取り上げてくださっています。沖縄のモータースポーツを盛り上げたいという一心で頑張っていますし、それがちょっとずつ叶えられているのかなというのを感じていて、すごくモチベーションになります」と、地元から届く声援が彼の力になっていることが間違いないようだ。

今回の第4戦に関しては、スーパーフォーミュラ公式アプリ『SFgo』で沖縄県無料視聴キャンペーンを実施することとなり、レースの模様や彼のオンボード映像が沖縄県限定で無料視聴できるのだ。

「今回はSFgo沖縄県無料視聴キャンペーンということでJRPさんにも協力してもらって感謝ですし、これを機に沖縄県のモータースポーツがどんどん盛り上がればなと思います」と平良も気合いが入っている様子だ。

第4戦前に行われた公式テストでは、途中トラブルで走れない時間帯もあったが、決勝を想定したロングランのテストもこなすなどさまざまなメニューをこなしていた。2日間で155周を走破し、総合結果ではトップから0.458秒差の13番手。新品タイヤでのタイムアタックシミュレーションではトラフィックの影響で満足な走りができない場面もあったようだが、Q2進出ラインに到達できそうなパフォーマンスは確認できているとのことだ。あとは本番でしっかりと結果が出せるかどうかだ。

地元沖縄の声援を力に変えて、どんな走りを見せてくれるのか……平良響が挑むレース人生最大の勝負がいよいよ始まる。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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