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No.25 Team Etoile
今年で45回目の大会を迎える「鈴鹿8時間耐久ロードレース」(通称、鈴鹿8耐)は2024年7月21日(日)に決勝レースを開催。年間でFIM世界耐久選手権を放送する「J SPORTS」はもちろん鈴鹿8耐も生中継。見どころが満載の鈴鹿8耐をいくつかの話題に絞ってプレビューしていきましょう。第4弾は「Team Etoileを筆頭にSSTクラスの争いに注目」です。
FIM世界耐久選手権には総合優勝を争う「EWC」(いーダブリュシー)、今年8耐に参戦する「Team SUZUKI CN Challenge」など実験車が参加する「EXP」(エクスペリメンタル)、そして「SST」(スーパーストック)の3つのクラスがあります。
今年は「SST」クラスも面白い闘いになりそうですよ。市販車ベースのマシンで争われるFIM世界耐久選手権において「SST」はより市販車(ストック)状態に近いバイクで争う改造範囲が狭いクラスです。多くのパーツが街乗りバイクと変わらない状態(ノーマル)でなくてはならず、低コストでマシンが製作できるのが特徴でもあります。
FIM世界耐久選手権では世界選手権のタイトルは「EWC」クラスにかけられており、「SST」クラスはワールドカップというタイトルの下でチャンピオンを争います。例年「SST」のワールドカップ対象レースは全4戦の内、ヨーロッパ開催の3戦となることが多く、フライアウェイ戦の鈴鹿は対象外でした。そのため、昨年も鈴鹿8耐では独自の規定のストッククラス「NST」としての開催だったのです。
しかしながら、今年は鈴鹿を含む全4戦が対象レースとなり、そのうち3戦の有効ポイント制で年間タイトルを争うことになりました。ということで、今年は海外チームの参戦も例年よりも多いのが特徴です。これまでの2戦でポイントの取りこぼしが多いチームにとっては鈴鹿は参戦しておくべきレースなのです。
そんな「SST」クラスに今年は日本国籍のチームが年間参戦しました。市川貴志監督が率いる「Team Etoile」(チームエトワール)です。このチームは全くの新規参戦チームで全日本ロードレース等の実績もなく、いきなりFIM世界耐久選手権に参戦するという野心的な挑戦を行なっています。マシンはBMW M1000RRを選択し、10年という長期計画で参戦しています。
「Team Etoile」は日本人ライダーを中心に起用し、スタッフもほとんどが日本人で形成されるザ・チームジャパン的なスタイルであることも特徴です。開幕戦ル・マン24時間には亀井雄大、榎戸育寛、奥田教介の3人、スパ8時間には亀井雄大、大久保光、渡辺一樹の3人で参戦とライダーラインナップは非常に強力です。スパではなんと2戦目にして「SST」クラスのポールポジションを獲得しました。
そんな「Team Etoile」が迎える母国開催レースが鈴鹿8耐。ライダーラインナップは第3戦・鈴鹿8耐も変更され、亀井雄大、大久保光、そしてベテランの元グランプリライダーであり耐久レースの経験も豊富なロベルト・ロルフォを起用することになりました。ロルフォの起用はまさに生まれたばかりの新チームのベースアップを図るのが目的だということで、経験豊富な3人が走る鈴鹿8耐は結果も期待がかかります。
年間参戦チ―ムとしてはフランスのホンダディーラーチーム「National Motos」が参戦。このチームはル・マンで勝ち、スパで2位でしたから、ポイントでは他を圧倒していますが、最終戦・ボルドールで何かが起こってチャンピオン獲得のチャンスを失わないよう保険をかける的な鈴鹿8耐参戦かと思います。
「Team Etoile」が鈴鹿8耐で争うのは日本国内のチームと言えるでしょう。その国内ライバルたちは昨年と違いFIM世界耐久選手権の「SST」クラスとしての開催ですから、その規定に則ったマシンで参戦しなくてはいけません、去年のNSTと大きく違うのがダンロップのワンメイクタイヤの使用です。去年まではブリヂストンvsダンロップのタイヤウォーズというのもありましたが、今年は完全にダンロップのワンメイク。鈴鹿8耐では日本の住友ゴム工業がダンロップタイヤを供給しますから、そのデータを持っているチームは強いかもしれません。
そのチームは去年4位の「TERAMOTO@J−TRIP Racing」(=スズキ/寺本幸司/村瀬 健琉/石塚健)、そしてボルドール24時間にも挑戦した「TONE RT SYNCEDGE4413 BMW」(=BMW/星野知也/吉田愛之助/ハンス・スーマー)。このあたりはデータが豊富にあります。
一方で去年までブリヂストンを装着していたチームの中で強豪は2年連続でクラス表彰台を獲得している「Kawasaki Plaza Racing Team」(=カワサキ/岩戸亮介/彌榮 郡/ミカ・ペレス)、そして昨年の優勝チーム「NCXX RACING with RIDERS CLUB」(=ヤマハ/井手翔太/伊達悠太/中山耀介)。どちらも新体制でレースに挑むことになり、去年までの優位性は無いかもしれません。しかし、普段の全日本ではダンロップタイヤを使うST1000のノウハウがあったりしますし、なんだかんだで合わせ込んでくるのではないでしょうか。
「SST」クラスが今年は正式なFIM世界耐久選手権のクラスとして開催されることになりましたから、去年まで以上に国際映像でもピックアップされることになるでしょう。タイヤのワンメイク化によって勢力図が接近し、しかも異なるメーカーのバイクが入り乱れあってクラス順位を争うというのも興味深いところです。
そして、「SST」クラスはリアサスペンションのスイングアームもノーマルでないといけませんから、タイヤ交換に時間がかかります。そのため、レース中は2回に1回のタイヤ交換にとどめ、ハードタイヤで2スティントを走るというまさに耐えるレースを強いられるのもこのクラスの特徴。そんなロングランのタイミングで雨なんて降ってこようものなら大変。ピット作業の時間で大きく順位が入れ替わる可能性があるのもこのクラスの面白さです。
年間参戦組の「Team Etoile」が初のクラス優勝でボルドール24時間レースに繋げることになるのか、それとも鈴鹿8耐に慣れた経験豊富なチームが夏の闘いを制するのか、「SST」クラスのドラマにも目を向けると鈴鹿8耐はより楽しめると思いますよ。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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