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約2カ月ぶりに開催されるスーパーフォーミュラ。
2024年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は、開幕戦から2ヶ月のインターバルを経て、大分県のオートポリスでシリーズ第2戦を迎える。年に一度の国内トップフォーミュラ九州ラウンドは、今年も目が離せない1戦となりそうだ。
まずは第2戦開幕を前に、ひとつニュースが飛び込んできた。昨年のFIA F2でチャンピオンを獲得したテオ・プルシェールが、急きょシーズン途中から米インディカーシリーズに参戦することになった。これにより、スーパーフォーミュラから離れることになったが、その代役として注目のドライバーがやってくる。IMSAで活躍中のベン・バーニコートだ。昨年のIMSA GTD Proクラスでチャンピオンに輝き、シーズンオフにはWECとスーパーフォーミュラのルーキーテストに参加。特にスーパーフォーミュラでは1日のみの走行機会でレギュラードライバーと変わらないタイムを記録するなど、見どころある走りを披露してくれた。
もちろんオートポリスは初経験となるバーニコートだが、この千載一遇のチャンスをモノにできるのか。注目が集まるレースウィークとなる。
さて、全体の話に戻すと……今シーズンは例年より1ヶ月早い3月上旬にシーズンがスタートし、ある意味“極寒”のコンディションで行われた開幕戦とは異なり、今回のオートポリス戦は気温20度を超える暑さの中でのレースとなることが予想されている。
気温が2~3℃変わるだけでクルマの動きや感触が変わり、予選では0.001秒単位でポジション争いをしているほど、繊細かつ超接戦のなかでバトルが繰り広げられているスーパーフォーミュラにおいて、これだけコンディションが変わると、全体の勢力図に大きな影響を及ぼす可能性が非常に高い。
振り返ると、開幕戦の鈴鹿大会では野尻智紀(TEAM MUGEN)優勝を飾り、2位に山下健太(KONDO RACING)、3位に山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)と続いた。そのほかにもポイント圏内でフィニッシュした顔ぶれを見ると、例年の開幕前テストで速さを見せているチームが大半を占めていた。週末を通して順調な走りを見せていた一方で、VANTELIN TEAM TOM’SやITOCHU ENEX TEAM IMPULなど、昨シーズンも安定した強さを発揮したチームが開幕戦で苦しんでいる印象があった。
開幕戦で優勝を果たした野尻智紀(TEAM MUGEN)
その要因は複数あるとは思うが、コンディションの影響があったことも十分に考えられる。仮にそうだとしたら、開幕戦と比べて気温が上がる第2戦オートポリスでは、新たな顔ぶれによる上位争いが展開されそうだ。
なかでも注目なのが、開幕戦で9位入賞を果たしルーキー勢で最上位フィニッシュを果たした岩佐歩夢(TEAM MUGEN)。レビューレースでポイント獲得と決して悪くはない結果で終わったが、来季以降のF1参戦を狙っている彼にとっては、満足できる結果ではなかった。開幕戦のレースウィークで改善点は明確に分かっている様子で、初経験となるオートポリスでどのような走りをみせるのか、期待大だ。
今季VANTELIN TEAM TOM’Sに移籍した坪井翔も昨年のオートポリスで初ポールポジションを獲得し、優勝争いを演じたひとり。チャンピオンマシンで迎えた開幕戦では思わぬ苦戦を強いられてしまったが、本人にとっても相性の良いオートポリスで挽回の走りが見られるか。
他にも、開幕戦では表彰台を獲得できなかったが随所で速さをみせていたDOCOMO TEAM DANDELION RACINGの牧野任祐、太田格之進や、今季はトヨタ勢に移籍した福住仁嶺(Kids com Team KCMG)や大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)など、ここで挙げると切りがないほど注目ドライバーが揃っている今季のスーパーフォーミュラ。土曜日の予選Q1から目が離せないバトルが展開されていくだろう。
大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)
もうひとつ、今週末のオートポリス戦を占う上で鍵となってきそうなのが、今季から全車統一された新ダンパーだ。マシンの姿勢を制御し、安定した走りを実現するために欠かすことができないダンパーと呼ばれるパーツは、昨年まで使用メーカー等に指定はなく、激しい開発競争が行われていた。ただ、今季からコスト削減というところも意識し、全車がオーリンズ製のダンパーを装着することとなった。
すでに昨年末の合同テストから新ダンパーを装着して各チームとも走り込んでいるため、ある程度の合わせ込みはできていると思われるが、ここまで走行機会があったのは鈴鹿サーキットのみ。しかも、開幕戦を含めて、ダウンフォースが多く発生する寒いコンディション下で走行が行われてきた。
それも影響してか、これまでは「あまり大きな違和感は感じない」というドライバーからの感想が専らだったが、今回は開幕戦と比べて気温が10℃以上あがるためダウンフォース量も減る上に、舞台は高低差があり、大きく回り込むコーナーが点在するオートポリス。特に新ダンパーでは昨年仕様と比べて“サードエレメント”と呼ばれる箇所が大きく変わっている。これが、決勝レースでの安定感に影響を及ぼす可能性があるという声も、現場ではチラホラと聞こえてくる。
ただでさえタイヤに厳しいと言われるオートポリスで、この新要素が与える影響は少なくないだろう。そこを短いフリー走行で合わせ込めたチームとドライバーが最終的に上位に進出してきそうだ。
そして、ここ数年のオートポリス戦を振り返ると、2年続けてポールポジション以外のドライバーがピット戦略で逆転して優勝を飾っている。過去を振り返ると、セーフティカー導入のタイミングをうまく使って後方グリッドから逆転してトップチェッカーを受けたケースもある。
コース上でのオーバーテイクは比較的難しいと言われるオートポリスではあるものの、戦略面などを駆使すれば逆転のチャンスは十分にあると言えそうだ。
果たして、今年はどんな展開が待ち受けているのか。注目の第2戦がいよいよ始まる。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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