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中山雄一選手(No.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra)「何回か危ないシチュエーションがあって、そのたびに心拍数が上がった」 | SUPER GT 2024 第1戦 岡山【SUPER GT あの瞬間】
SUPER GT あの瞬間 by 島村 元子No39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra
「あのとき、何があったの?」__ レースウィークの出来事、ドライバーに話してもらいたいと思いませんか? タフなレースを終えたドライバーに改めて話を聞く「SUPER GT あの瞬間」。2024年シーズンもレースの舞台裏に着目し、ドライバーの気持ちをコラムでお伝えします!
初夏のような好天気に恵まれた開幕戦岡山大会。一方、今シーズンからレギュレーションが改定されたことを受け、各チーム、ドライバーは不確定要素の多い戦いに臨むことにもなった。そのなかで、チームの強みを最大限活かした戦いが出来たチーム……それが、No.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supraだ。後半スティントで長きにわたって攻防戦を制して2位表彰台に上がった中山雄一選手が初戦を振り返る。
── 予選2位からスタート、決勝では攻防戦を凌いで2位表彰台を獲得を果たしました。
中山雄一(以下、中山):テストの時間が十分だったとは言えないですが、スープラが今シーズンに向けてアップデートされて、新しくなったスープラにはどういったセットが一番合うのかをチームみんなで考えて(レースに)臨みました。予選で2位を獲れたのですが、僕は2年前(の岡山大会)で予選2位から順位をどんどん落として……(決勝8位)というレースをしてしまったので、その悔しかった思いもあって、「同じ2位からリベンジできるぞ」と思っていました。決勝では、ファーストスティントの関口(雄飛)選手もちょっと苦しそうな状況があったんですけど、バトンを2番で受け継いで、僕も新しいシビックの100号車(STANLEY CIVIC TYPE R−GT)の山本(尚貴)選手の猛追を受けながら走るという51周でした。でも、クルマのフィーリングがすごく良くて、最後の最後まで僕の思うような走りに応えてくれるクルマになっていたので、順位をキープすることができました。開幕戦から2位表彰台と、すごくいい形で終われることができました。
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中山雄一選手(No.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra)「何回か危ないシチュエーションがあった」
── 今年から予選方式が改定され、ワンセットのタイヤでQ1、Q2両予選を走ることになりました。どのように担当を決めたのですか?
中山:この予選方式になって、1セットのタイヤをふたりで使わなきゃいけないことになり、シーズンオフにどっちがQ1、どっちがQ2をやるのかという話になりました。中古(タイヤ)でアタックすることがほとんどみんなないし、公式にそういうことをやることがないので、どっちがいいのかわからなかったんです。でも、関口選手が「今まで、オーディションとかチームに起用してもらうために、少ないテストでタイムを出すことをやってきたからすごく自信がある。ニュータイヤで練習しなくても、予選でいいパフォーマンスが出せる」っていうことを強く言ってくれたんです。「GTでは、先輩ドライバーがアタックした後の中古タイヤでそのままアタックして、先輩ドライバーより(タイムが)速かったことが今までもあったから、中古は得意なんです」って。それで、僕がQ1でニュータイヤを使わせてもらえることになりました。
アタックするなかで、タイヤの“限界ギリッギリ”をちょっと残してアタックするドライバーもいると思うんですが、僕はほんの少し手前でアタックするのが得意かなって思ってて、それはそれでQ2に向けてタイヤを残せるので、僕がQ1に行ってそこそこのタイム出して、あとは関口選手がバン! って(アタックに)行ってくれる、みたいな感じですかね。信頼できる感じの強い言葉が関口選手からあったので、僕も自信持ってQ1でいいアタックができる……そんないいコンビネーションになってるんじゃないかって思います。
── 今シーズン、チームとしての“強み”になりますね。
中山:そうですね。今までの予選方式とは違った技術が求められるようになったのかなと思います。まだテストを含めて3回目ですが、この方式での初めての本番で予選2番手を獲れたから、とりあえずうまくやれてるんじゃないかなと思います。
── スープラのアップデートによって、ポテンシャルを引き出せた、向上したということでしたが、 昨シーズンと比べてどんな違いがあるのでしょうか。
中山:ホンダは(シビックを新投入して)クルマが変わりましたけど、それと比べれば(スープラ勢は)ほとんど変わってないように見えるのかなとは思いますが、エアロパーツが変わったり、セットアップの方向性が違っています。TCD(トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)でどういった方向性で進めるのかっていうところが去年と大きく変わっています。まだ岡山しか実践でやってないんですが、低速コーナーのグリップが上がったなとすごくTGR TEAM SARDとしては感じていて、そこを優位に使ってレースを進めていけたらと思います。予選も2位といういい結果でしたが、ポテンシャルの向上は特に決勝で感じることとなりました。
── 決勝は、30周終わりでピットインしましたが、事前にチームはどのような戦略を立てていましたか。
中山:2番からのスタートで邪魔されることなく走れるので、割とオーソドックスな作戦を予定してました。(基本的に)ピットに入れるようになる30周目から35周のあいだに、どんどんクルマがピットに入るんですが、ウチとしてはオーソドックスな……早めに入って順位を確定させてしまう方法を採りました。レースでは(ポールポジションスタートの)36号車(au TOM’S GR Supra)はもう10秒ぐらい前に行っていたので、ピットのタイミングとしては、実質戦ってる相手が100号車と38号車(KeePer CERUMO GR Supra)になったんです。なので、100号車と38号車が(ピットに)入ったあとに動こうか(ピットインしようか)というようなことを話していましたね。で、実際(レース展開が)その通りになりました。(28周終わりで)早めに100号車と38号車が入ったので、それに合わせてちょっとあとにピットに入りました。結構マージンを持って2番手で復帰できたので、冷えたタイヤでアウトラップを走っても余裕が結構あって、落ち着いて走ることができました。
── 交代後、50周を過ぎたあたりから100号車の山本選手とのバトルが始まりました。どんな攻防戦になったか振り返ってください。
中山:ピット出たときは(100号車が)5秒ぐらい後方にいたと思うんですが、じりじり近寄ってきて……(苦笑)。(前半スティントと同じく)“またか……”という感じになりました。SARDは、作戦でピット入るタイミングやピットワークがすごくうまいので、ピットに入る前の順位よりもいい順位で(コースに)戻ることが結構多いんです。そうすると、自分より速い人たちと戦わなきゃいけなことが多くて、後方(車両)をブロックするみたいな戦いが今までもすごく多かったんです。今回も、またそういう風になっちゃったなという感じですね。あと、特にピットアウトしてからガソリンが重いときのフィーリングがちょっと良くなくてあまり攻められなかったので、すごい差を詰められました。岡山はすごい狭いし、今回はGT300車両がすごい大バトルを繰り広げてて、マッハ車検(No.5 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号)を先頭にした集団バトルがあったんです。すごくGT300車両との巡り合わせが悪くて、ちょっと100号車を離したなって思うけれど、その集団のなかに入るとものすごい減速しなきゃいけなくなったりして、また100号車に真後ろに付かれてしまうみたいなことがずっとありましたね。それがほとんど40周ぐらい続いたって思います。
今回、初めてシビックと戦うことになって、しかも(100号車は)ホンダのエース車両ですよね!? 山本選手ですし、「うわ、手強い相手だな」って率直に思いました。ただ、何周か走るうちにどこでスープラが強くてどこでシビックが強いのかがだんだん分かってきて。で、1コーナー、2コーナー、アトウッドカーブあたりのグリップと、あと直線の中間からそのあとの伸びが結構良かったので、アトウッドからヘアピンで僕はブロックしなきゃいけないシチュエーションが本当に多かったです。で、ヘアピンさえ乗り切ってしまえば、そのあとの低速区間はスープラに分があって、最終コーナーを立ち上がるころには何車身か離しているっていう風になるんです。でも1コーナー、2コーナー、アトウッドでGT300車両に捕まってしまうと、またヘアピン内側に行かなきゃいけないなっていう感じで、テレビに映ってた以外にも何回か危ないシチュエーションがあって、そのたびに心拍数が上がってましたね。
── 岡山の観客席はコースとの距離が近いので、ものすごく喜んでいたはず。見応えあるバトルでした。
中山:Cパドックあたりの観客席ですよね!? リボルバーやパイパーとか、(レッドマンとホッブスのコーナーが連続する通称)“ダブルヘアピン”の真ん中辺りはすごくコースと近い。僕らの(移動車両用の)駐車場もそこだったので、そこからサーキットを見ると、「こんなに近いんだね、ここで見てたら楽しいね」って脇阪(寿一)監督とも話してたんです。岡山はすごくコースと観客席の距離が本当に近いんで、迫力がすごいですよね。それに、1コーナーや最終(コーナー)ひとつ前のマイクナイトとかはクルマの下面が結構擦るんです。スキッドブロックが擦るので、その“カカッ”ていう音とかスポイラーの横に金属がついてるんですが、そこから飛ぶ火花とかよく見えると思います。岡山では迫力があるんで、結構楽しいと思いますね。
── そういう見せどころでバトルができたのは、ドライバーとして自身も嬉しいのでは?
中山:できれば、僕が追い上げる方でテレビに映りたかったんですけどね(笑)。36号車をうしろからずっと追い続けるみたいな画が良かったんですけど、“防戦一方”みたいな感じの画になってしまって。でも、今回はしっかり順位をキープできたし、最初から最後までの50周をほとんどプッシュしてたんで、タイヤがいつ垂れるかっていうことも結構そわそわしながら走ってたんです。でも、最後の最後まで本当に持ってくれて。タイヤもクルマもほんとにいい状態だったので、そのなか僕もいいパフォーマンスをすることができました。
── タイヤの話が出ましたが、タイヤ選び含め、気温が上がった決勝でのマネージメントは大変でしたか?
中山:あのぉ、(サーキットに持ち込む)タイヤを決めるのって、(レース開催)1ヶ月ぐらい前にどんなタイヤを持ち込むか、ハードなのかミディアムなのかソフトなのか、もっともっと選択肢は細かいんですけど、そのなかでどういうのを持っていこうかっていうことを話し合うんです。でも1か月後の天気がどうなるかなんて全然わかんない、っていう感じですね。SARDとしては気温は20度ぐらいで、路面温度は30度から40度ぐらいを予測してタイヤを選んだのですが、いざ(蓋を)開けてみたら日曜日は(気温が)25度か26度ぐらい上がって、路面温度は48度かな? もう想定より10度ぐらい路面温度が高くなってしまったんで、持ってきたタイヤがもう柔らかくなっちゃったんですね。なので、レース後半、タイヤのグリップがより落ちやすい状況になっちゃって。しかも前半スティントの関口選手が走っているときって一番温度が高いのですが、そこでのパフォーマンスも「タイヤがぐにゅぐにゅして走りづらい」っていう声が出てました。(ユーズドタイヤで走行した)関口選手は30周でピットインして、僕は50周走らなきゃいけないから、さらにもう20周あるわけです。そこでどれぐらいグリップが落ちるのか、ヒヤヒヤしながら走ってました。
── いろんなミッションに挑みながら、見事防戦をやり遂げたと思います。チームとしていいスタートを切れただけに、やはり意識するのは、2020年以来となる優勝ではないでしょうか。今シーズン、どういう戦いをしていきたいですか?
中山:決勝の50周があっという間ではなかったんですけど、ずーっとうしろを見ながら、押さえながらっていうことをやっていたら、気づくと残り2周だったんですよ。(ラップタイムで)自分よりちょっと速いときがある相手をずっと押さえ切ったという感じだったので、なんか自分が速かったという気持ちはなかったんです。だから、2位ではあったんですけど、心境としてはもっともっと下の順位を走っていたような気持ちで終わったんですよね。36号車が優勝したのを目の前で見ているし、嬉しいというよりどちらかといえば悔しいという気持ちだったんです。でも、いざピットに帰ってみると、「よく押さえ切った!」って、メカニックも監督もチーム代表も、あとはスポンサーさんもみんな大喜びしてて。本当に多くのスポンサーさんが開幕戦から足を運んでくださって、スポンサーさんたちがレース後に本当に笑顔でみんなでハイタッチして……すごく一体感が生まれたんですね。結果を出すってことは、チームを取り巻くみんなの気持ちが本当にポジティブになるし、そういった意味では今年戦っていく上でいいレースになったと思います。「ここで勝ってしまうと、これ以上伸びるのに糧となるものがないな」、なんていう風にプラスに考えてました。
36号車が強い戦いをしたのはみんな知ってるし、そこに迫るレースができたことを、チーム、スポンサーのみんながわかってくれたと思います。あとは、ここからあと7戦かけて36号車をどうやって攻略していくのか。まだまだ岡山が終わったばっかりですが、鈴鹿とかオートポリスとか、もっとテクニカルなコースがあるし、そこで(ニッサンの)Zとかシビックがどんな戦いしてくるのかもわからない。なので、もっともっと上を目指していかなきゃいけないし、そういう意味でも2位っていうのは、“勝って兜の緒を締めよ”っていう……勝ってるわけじゃないんですけど(笑)、緒を締めなきゃいけない感じがすごく強いと思うので、この悔しい思いを残り7戦にぶつけていきます。初戦を勝ったチームは、チャンピオンを獲る確率が低いっていうのがSUPER GTにはあるので、そのジンクスにあやかれるような、一番いい順位で終われたんじゃないかな。そんなポジティブな気持ちで、シリーズを戦っていきたいなと思います。
── 第2戦富士は、初の3時間レースになります。どんな戦いになると思いますか?
中山:タイムを出すだけではなく、レースで安定したタイヤを選択するためのレースになると思います。結果的に昨年より距離が伸びるので、作戦に余裕がないんです。(決勝は)3スティントになると思いますけど、全スティントで、ほぼほぼ満タンから(のスタート)を繰り返さなきゃいけないレースになるので、あまりピット戦略での差が生まれないと思います。なので、タイヤを持たせる走りとか持つタイヤで速く走るとか、そういうところが重視されるかな。決勝では(3時間で)120周ぐらい……それぐらい(周回)すると思うんですけど、それだけする(走る)とあんまり予選順位は関係なくなるとも思うんです。だから、とにかく決勝で強いクルマを作ることが、次回までの間に取り組まなきゃいけないと思います。
── では、最後に「あの瞬間」恒例の質問を。今シーズンからは「今、一番興味や関心のあること」を教えてください!
中山:今すごく興味があること……。レーシングドライバーもアスリートなので、体調とか自分のパフォーマンスを高めるために日々考えてるんですが、僕、身長が178cmあって、体重が今まで70kgあったんですね。でも見渡すと小さいドライバーばっかりで(笑)体重が軽いんです。仲のいい野尻(智紀)選手とか、多分53、54kgぐらいしかないんじゃないかな。なので、体重だけで15kgとか16kg違うんです。(レースで)サクセスウェイトが5kgとか10kgとか言ってんのに、乗ってるドライバーだけで15kgあるんですよ。もうそこがもったいないなと思って。今年は減量を頑張ろうって思いました。
今までも糖質制限とかやってきてたんですけど、やり始めるとすぐに体重はちょっと落ちるものの、お肉とかタンパク質を取る量が増えるのであんまり(体重が)減らなくなってくるんですよね。もっと減らすにはどうしようかなと思い、カロリーをちゃんと毎日(記録に)つけて食べるようにしたんです。でもやっぱり痩せなきゃいけないので、基礎代謝よりも少ないカロリーを摂取しなきゃいけなかったんです。2月ぐらいからこの開幕戦まで、ほとんどの時間お腹が空いてたんですよ(笑)。ただその甲斐あって、健康的に3kg落とすことができました。どういう食生活をしたかっていうと、古来の日本人みたいな食生活をしたんです。ご飯、お味噌汁、鮭とお野菜…そんな感じの食生活を続けたんです。何週間かすると慣れてきて、満足感がだんだん出てきて、満足感ある上に体重もいいペースで減ってくるっていうような感じになって。なので、最近すごく心がけてるのは、“この食べ物にはどれぐらいカロリーがあるのか”ですね。
一方で、“チートデイ”を設けなきゃいけないんです。ずっと摂取カロリーを減らしてるだけだと、体がそれに慣れてしまって基礎代謝を落としちゃうので、たまに、今は飢餓状態じゃないんだ、食べ物が目の前にないわけじゃないんだ、って身体に教えてあげなきゃいけない。なので、たくさんカロリーを摂取する日を設けるんですが、その日に何を食べてやろうかと思ったりしますね。あと、今、スタバで期間限定でメロンの飲み物あるお店があるんですよね。あれがすごい飲みたいなと思って(笑)。でもクリームが上にドカってのってるし、「すっげえカロリー高いんじゃないか?」って思って調べたら、300ちょい(kcal)だったんですよ。そうすると、普通にカフェオレとか飲んでも150kcalぐらいあるから、2杯我慢すると1杯飲めるなって考えて。レースの帰り、岡山駅で絶対買うぞって思ってたんですが、2位になると意外と取材が多くてすぐ帰れなくて、新幹線の時間もギリギリで、しかもお店もめっちゃ人が並んでたんで、結局買えずにまだ飲めてません(笑)。
やっぱり3kg体重を落とすと、体力がどうなっちゃうのかなって結構不安要素はありました。今回はまだ26度ぐらいのレースだったのでだすごい暑いってわけじゃなかったですが、夏の鈴鹿は本当にきついんで、そこに向けてどれぐらいの体重設定をするのか、ですね。とりあえず3kg落としたところで今回やってみて、割と最初から最後までしんどいレースをしたなかでは、最後まで集中力が持ったと思いました。バランスの良い食事をとると、体重が落ちてもなんか頭の中がよりクリアになった感じがしててすごくいいですね。体調が良くなりました。
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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