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国内最高峰のフォーミュラカーレースである全日本スーパーフォーミュラ選手権。今年は例年より1ヶ月早い3月9日・10日に鈴鹿サーキットで開幕戦を迎える。
振り返ると、2023年シーズンは同シリーズ史上稀に見るハイレベルなシーズンだったと言えるかもしれない。衝撃のデビューウィンからルーキーイヤー王者を狙ったリアム・ローソン、国内トップフォーミュラで史上2人目となる3連覇をかけて争った野尻智紀との三つ巴王座争いを制し、世界への挑戦を公言していた宮田莉朋が初のシリーズチャンピオンに輝いた。
その他にも平川亮が第6戦富士で見せた圧巻のオーバーテイクショーや、最終戦鈴鹿でルーキーの太田格之進が初優勝。前半戦で3戦連続2位に入った坪井翔の躍進。第6戦富士で初優勝をかけて激走するもローソンに一歩及ばず悔し涙を流した牧野任祐や、第2戦富士で4年ぶりの表彰台に涙を見せた山下健太など……挙げれば切りがないほど、さまざまなドラマが生まれたシーズンだった。
そんな中で迎える2024年シーズンは、昨年をさらに上回るほどの激戦が繰り広げられそうな予感が漂っている。
昨年チャンピオンに輝いた宮田は今季FIA F2への参戦が決定。これにより、国内トップフォーミュラでは21年ぶりに前年チャンピオン不在の状態でシーズンを迎えることとなり、空席となったカーナンバー1の座を奪い合う戦いが展開されることとなる。
さらに、昨年3勝を挙げる活躍でランキング2位となったローソンも今季はF1レッドブル/レーシング・ブルズのリザーブドライバー業務に専念することなり、早くも2025年のレギュラー有力候補として名前が挙がっている。ランキング5位の平川も、WECの参戦に加えて今季はF1のマクラーレンチームリザーブドライバーに就任した。
こうして、2023年のスーパーフォーミュラでランキング上位5人のうち3人が今シーズン参戦しないという、ある意味で“異例の事態”となっている。
さらに、今年はドライバー移籍も多いのも特徴だ。なかでも大湯都史樹と福住仁嶺がホンダ勢からトヨタ勢に移籍したことが一番の話題となっているが、その他にも宮田が抜けたVANTELIN TEAM TOM’Sのシートには坪井が入り、2016年王者の国本雄資がITOCHU ENEX TEAM IMPULに加入するなど、このシーズンオフは注目の移籍が多かった。
そして、昨年大活躍を見せたローソンを“上回るかもしれない”逸材が今年やってくる。
1人は2023年のF2王者でキック・ザウバー(旧アルファロメオF1)のリザーブドライバーも務めるテオ・プルシェールだ。
開幕前から期待を集めているテオ・プルシェール
本来ならF2チャンピオンから翌年にはF1へステップアップという流れになるのだが、現状F1各チームでレギュラーシートに空きがないということもあり、今季は名門ITOCHU ENEX TEAM IMPULよりスーパーフォーミュラに参戦する。
昨年12月に行われた合同/ルーキーテストからスーパーフォーミュラをドライブしているプルシェール。初日こそ初めてのマシンとコースに苦戦しているというコメントも残したが、2日目にはトップに対して0.3秒差に迫るタイムを記録した。ちなみに、ローソンが初めてテストに臨んだ時はトップから0.8秒差だった。プルシェールは、この時点でロングランのテストも敢行し、ライバルたちと遜色ないペースで周回。これには星野一樹監督も「彼は並じゃないです! やっぱりF1に乗るようなドライバーはレベルが違うなと思いました」と驚きを見せていた。
「スーパーフォーミュラは限りなくF1に近い選手権だと思っている。ストレートスピードはもちろん、コーナーリングスピードが非常に速いというのも魅力的な部分だ。今後、僕がF1に行くか行かないかは関わらず、今シーズンはスーパーフォーミュラでベストを尽くすということに集中したい」(プルシェール)
先日、鈴鹿サーキットで行われた開幕前の合同テストではウエットコンディションに苦戦していた様子だったものの、ドライコンディションではきっちりと上位に食い込むタイムを記録していた。星野一樹監督も「特に決勝で強いドライバーだと思います」と期待を寄せているだけに、チャンピオン争いに絡んでくる可能性は高そうだ。
プルシェールと同じく昨年F2で活躍し、今季はスーパーフォーミュラに戦いの場を移すのが岩佐歩夢(TEAM MUGEN)だ。2019年に鈴鹿サーキットレーシングスクール(現ホンダレーシングスクール)を首席で卒業し、現在はレッドブルジュニアドライバーの一員としてF1を目指している。
岩佐歩夢
一見すると、ヨーロッパでの武者修行から日本へ帰ってきたという見方をしている人も少なくないだろうが、実際には昨年のローソンや2017年のピエール・ガスリーのように、スーパーフォーミュラで結果を残し、F1へステップアップするチャンスを広げるというのが、彼に課せられたミッションなのだ。
岩佐にとってもスーパーフォーミュラのマシンをドライブするのは初めてだが、鈴鹿サーキットは走行経験がいくらかあるということもあり、昨年末の合同/ルーキーテストから速さをみせていた。開幕前の合同テストでも、ウエットコンディションでのセッション2と、ドライコンディションとなったセッション3でトップ3圏内に入るタイムを記録。ベストタイムという点ではチームメイトの野尻をしのぐシーンもみせた。
「もちろんスーパーフォーミュラはレベルの高いカテゴリーだという認識をしています。逆に結果が出せなければF1にチャレンジすることは難しいっていうふうに思っています。もちろん開幕戦で優勝するという目標もありますし、シリーズチャンピオンも大きな目標です。それが獲得できた時にF1に近づけるかどうかという流れの話にもなってくると思います。そんなに甘いものではないということは分かっていますが、とにかく全力で臨みたいです」(岩佐)
シーズンオフのテストを見る限り、昨年のローソンと同様に岩佐とプルシェールがルーキーイヤーからチャンピオン争いに絡んできそうな雰囲気。スーパーフォーミュラに何年も参戦するベテラン勢にとっては、昨年以上に気の抜けないシーズンとなりそうだ。
この他にも、昨年のスーパーフォーミュラ・ライツでチャンピオンの木村偉織(San-Ei Gen with B-Max)や、ジノックスF2000フォーミュラ・トロフィーでタイトルを獲得したJuju(TGM GrandPrix)が日本のトップカテゴリーに初参戦を果たすなど、今年は注目したいルーキードライバーがたくさんいるシーズンとなっている。
激戦必至の2024シーズン、開幕前のテストではダンディライアン勢が一歩リードか?
公式テストで安定した速さをみせた牧野任祐
例年以上に注目が集まるなかで、2月21日・22日に鈴鹿サーキットで行われた開幕前の合同テストは、1日目がウエット、2日目がドライと異なるコンディションとなった。
その中で2日間とも安定した速さをみせていたのが、DOCOMO TEAM DANDELION RACING勢。特に牧野任祐はセッション1から3まで全てトップタイムを記録。最後のセッション4では上位3台のタイムがオーバーテイクシステム(OTS)を使って記録されたものだったのに対し、同セッション4番手につけた牧野はOTSを使わずに、トップから0.169秒差のタイムをマーク。現状では頭ひとつ抜け出ていそうな雰囲気がある。
実際に本人も「今まで一番手応えが感じられたテストだったかなと思います」と今回のテストはかなりポジティブな内容だった様子。車両がSF23に変わった昨年前半は苦戦を強いられていたが、シーズン途中のテストでキッカケを掴み、2024年に入っても好調を維持できている原動力となっているようだ。
チームメイトの太田格之進も、1日目午後にギアボックストラブルに見舞われて、貴重なウエットコンディションでの走行時間を失うことになったが、全く悲観している様子はなく「相対的に見れば僕たちのチームは調子が良い。昨年の最終戦とか冬のテストで(ドライコンディションで)調子が良かったので、全然焦ってはいないです」と落ち着いている様子だった。
そのダンディライアン勢に次ぐ速さを見せていたのが、今季チームタイトル3連覇を狙うTEAM MUGEN。ウエットの1日目は牧野に次ぐ2・3番手タイムを記録すると、2日目は上位に食い込むベストタイムではなかったものの、午後のセッションで決勝を見据えたロングランテストを淡々と行っていた。昨年12月のテスト内容も踏まえると、今季も手強い存在になることは間違いなさそうだ。
開幕前のテストを終えた現時点では、この2チームが少しだけ抜け出ているという印象ではあるが、スーパーフォーミュラは気温や路面温度、風向きなどの“わずかなコンディション変化”で勢力図がガラリと変わる。そのため、実際のところは開幕戦が始まってみないと分からないというのが実情だ。特に2日目の総合結果をみると、全21台中14台が1秒以内にひしめいており、おそらく今シーズンも0.001秒単位の違いで順位が大きく入れ替わることになりそうだ。
はたして、空席となったカーナンバー1を誰が奪うのか……1戦たりとも見逃せない2024スーパーフォーミュラ王座争いが、いよいよ始まる。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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