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東京開催も決定!注目のフォーミュラE、10年目のシーズン始まる | FIA フォーミュラE世界選手権 2024 第1戦 メキシコシティ プレビュー
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ昨季シリーズチャンピオンを獲得したジェイク・デニス
2024年、最も注目すべきレースといえば、やはり「フォーミュラE」でしょう。2024年3月30日(土)にいよいよ東京お台場での「Tokyo E-Prix」の開催が決定し、国内初の本格的な市街地レースの開催ということで話題性は抜群です。
今年で10年目の記念シーズン(シーズン10)を迎えた「フォーミュラE」。これまで佐藤琢磨や小林可夢偉らの日本人ドライバーのスポット参戦がありましたが、当時はまだ電気自動車(EV)に対する偏見とEVレースに対する抵抗感があり、日本国内ではあまり話題になったとはいえませんでした。
しかしながら、時が経ち、今や電気自動車を街で見かけない日は無いですし、人々が新しい価値観でEVモータースポーツの可能性を捉えるようになりました。「フォーミュラE」も実直に努力を続け、良いレースを展開し、今やF1やWRCと並ぶ世界選手権シリーズへと格上げされました。日本での初開催は時代が追いついた、まさにドンピシャのタイミングで決定したと言えるでしょう。
今回は1月13日(土)の開幕戦・メキシコシティを前に今シーズンの見どころをご紹介していきましょう。
より高性能になった「Gen3」カーが昨年導入され、スリリングな接戦が大きな魅力となった「フォーミュラE」。そのシーズン10は全10ラウンド、16戦で開催予定となっています。当初は2月のインドでの開催が含まれていましたが、現地主催者の契約違反により開催中止が決定。東京でのレースは今シーズンの第5戦として設定されることに。
新たな開催地として東京での市街地コースが加わりますが、ケープタウン(南アフリカ)とローマ(イタリア)での市街地コース開催が消滅し、逆にミサノ(イタリア)や上海(中国)などの常設サーキットでのレース数が増えました。開幕戦のメキシコシティも常設サーキット。エルマノス・ロドリゲスサーキットのF1とは異なる専用レイアウト(2.46km)での開催です。
今季は「Gen3」カーの2年目で、各チーム共にデータを蓄積したマシンで結果を残すシーズンです。そのためか、ルーキードライバーはF2で4回優勝経験があるインド人のユアン・ダルバラ(マセラッティ)だけ。経験者が重宝される形で11チーム22名のシートに収まることになりました。
「ジャガー」のワークスチームへと移籍したニック・キャシディ
とはいえ、チーム間の移籍も多いシーズンになっています。注目の移籍は昨年ランキング2位のニック・キャシディ。ジャガー製パワートレインを使うチーム「エンヴィジョン」から「ジャガー」のワークスチームへと移籍。SUPER GT/スーパーフォーミュラでチャンピオン経験がある日本でもお馴染みのニュージーランダーがついにメーカーワークス体制でチャンピオンを狙います。今季も日本人レギュラードライバーは不在ですので、日本のモータースポーツファンはぜひニック・キャシディ(ジャガー)を推しとして定めてみてはいかがでしょうか?
応援対象という意味で忘れてはならないのが、唯一の日本国籍チームとして参戦する「ニッサン」です。ここにも日本のレースでお馴染みの人気ドライバー、サッシャ・フェネストラズ(ニッサン)が居ます。そのチームメイトにはかつて在籍したオリバー・ロウランド(ニッサン)が復帰。すっかりベテランとなり、ニッサンに最後の優勝をもたらしたロウランドの再加入はサッシャ・フェネストラズ(ニッサン)にとっても心強いでしょう。東京開催では間違いなく「ニッサン」が日本のファンからの推しになるでしょう。
一方でメーカー系のチームでは昨年チームランキング4位の「ポルシェ」はアントニオ・フェリックス・ダコスタ/パスカル・ウェーレインの2人。さらに同5位の「DSペンスキー」はストフェル・ヴァンドーン/ジャン・エリック・ヴェルニュの2人とドライバーラインナップに変更なし。昨年プライベートチームに敗れてしまったメーカーワークスチームが今季は正常進化で逆転を狙います。
昨年は「アンドレッティ」「エンヴィジョン」などフルワークスチームではない体制のチームが躍進したシーズンでした。車両が「GEN3」カーになったことで勢力図がシャッフルされたというのもありますが、チーム間の体制差というよりもドライバーの実力にスポットがより当たったシーズンになったと言えます。
シリーズチャンピオンを獲得したジェイク・デニス(アンドレッティ)は今季も同チームに残留しますが、安定した走りで毎戦優勝争いに絡んでくるでしょう。彼とチャンピオンを争ったニック・キャシディ(ジャガー)もチーム体制は最高の状態ですから当然です。ワークスチームを食う勢いを見せたこの2人に共通しているのはデニスがDTM、キャシディはSUPER GT/GT500でいわば重量級フォーミュラカーとも言えるハイスペックGTカーでの経験が豊富であるということです。
かつては話題性優先で元F1ドライバーが起用されるケースが多かった「フォーミュラE」ですが、時代は変わりつつあります。様々なカテゴリーのレーシングカーを乗りこなして結果を残してきた器用なドライバーたち、フルプッシュして最後にオーバーテイクする集中力、マネージメント力を兼ね備えたドライバーたちの実力が光るレースに変化してきました。
今後「フォーミュラE」ではガソリン車のレースの給油に当たるピットストップ給電ルール「アタックチャージ」の導入が検討されています(今季開幕には間に合わない模様)。シーズン途中からでも導入が決まれば、より戦略面でもバリエーションが期待でき、面白いレースになっていくことでしょう。1日完結のイベントも多く、練習時間が非常に限られる「フォーミュラE」において順応性が高く、シミュレーション通りのパフォーマンスが高いレベルで再現できるドライバーがシーズン10を制することになるでしょう。
果たして10年目のアニバーサリーシーズンの主導権を握るのはどのドライバーか、どのチームか?東京開催を楽しみに待ちながら、開幕からの4レースを楽しみましょう。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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