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来季WSBK昇格決定のブレガが王座へ突き進む! | FIM スーパースポーツ世界選手権2023 第10戦 アラゴン(スペイン) プレビュー
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)
スーパーバイク世界選手権に次ぐ世界選手権スプリントレース「FIMスーパースポーツ世界選手権(WSSP)」の第10戦がモーターランドアラゴン(スペイン)で9月22日(金)〜9月24日(日)に開催されます。昨年からスーパーバイク世界選手権への重要なステップアップレースとしての位置付けが色濃くなったWSSP。チャンピオン争いも佳境に入ってきました。
2週間前に行われたマニクール(フランス)でのレースでは、その直前に来季、ドゥカティワークスからのWSBK昇格が決まったイタリア人ライダー、ニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)が2連勝。今季11勝目をマークし、ランキング2位のステファノ・マンジー(ヤマハ)とのポイント差を60点に拡大しました。
今季も残すところアラゴン(スペイン)、ポルティマオ(ポルトガル)、ヘレス(スペイン)の3戦6レースのみ。ニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)は今季の目標であるワールドチャンピオン獲得に向けた好条件を揃えることになりました。
ランキング2位のステファノ・マンジー(ヤマハ)は地元イモラ(イタリア)で2連勝を飾りましたが、ブレガの勢いが止まらないという印象を受けるフランスでのレースでした。
ニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)の来季WSBK昇格は以前から噂されていましたが、ドゥカティワークスチーム「Aruba.it Racing Ducati」からのデビューというのは驚きのニュースでした。現状ドゥカティはMotoGPでもWSBKでも圧倒的な力を見せつけており、どのカテゴリーでもサテライトチームを含めて一大勢力になっています。現役MotoGPライダーを含めて、このイタリアンブランドでレースをしたいはずです。
そんな憧れとも言えるシート。王者アルバロ・バウティスタのチームメイトとなるわけですからニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)の評価がいかに高いかがよく分かります。
ブレガはイタリア出身の23歳。2015年にCEV Moto3でチャンピオンに輝くと、2016年からはバレンティーノ・ロッシ率いるSky Racing VR46から世界選手権Moto3にデビュー。その年の日本グランプリ(もてぎ)では3位表彰台に登り、頭角を表しました。
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岡谷雄太 出場レース!【ハイライト】FIM スーパースポーツ世界選手権2023_第9戦 マニクール(フランス)_ RACE1 & RACE2(600 & 300クラス)
しかし、2017年以降は苦戦。2020年からはMoto2に昇格を果たすものの、なかなか芽が出ない状態が続いていました。そんな苦悩する若手にチャンスが巡ってきたのが2022年。ドゥカティワークスからWSSPに参戦することになったのです。
折しも2022年はWSSPの大変革の時。600ccクラスとして知られたWSSPに多くのメーカーを呼び込もうと、中量級という枠組みをなくし、大排気量のマシンでも性能調整で出場できるようになったのです。
ニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)に与えられたマシンはドゥカティ・パニガーレV2。同社のフラッグシップモデルが4気筒のパニガーレV4Rになったことにより、伝統の2気筒マシンはパニガーレV2というニューモデルとなって登場しました。まさにその2気筒マシンの世界選手権デビューの場として選ばれたWSSPでワークスライダーとして走るチャンスを与えられたのです。
当然、彼はMotoGPを夢見てレースを戦っていましたから、市販車ベースのレースへの転向は決して本意では無かったでしょう。ただ、グランプリで育ってきた若手ライダーのブレガにとってはプロとして活躍し、キャリアの立て直しを図るビッグチャンスでもありました。
ドゥカティは600ccの中量級のスポーツモデルが無く、将来のWSBKを担う若手の育成はスーパーバイクのイタリア選手権などが舞台でした。ライダーもプロダクションバイクで長年の経験を持つライダーが起用されるケースが多々ありました。
しかしながら、スコット・レディングやアルバロ・バウティスタのような4ストロークのレーサーマシンで争うMotoGPで走ってきたライダーたちが並々ならぬ速さを示したことにより、若手育成もシフトチェンジをしたのでしょう。パニガーレV2は955ccというほぼ1000ccのマシンですから、このマシンで速さを示すことができればWSBKでも戦力になるだろうという予想ができます。まさにそのレールに乗って結果を残してきたからこそ、ブレガは驚きのステップアップが可能になったと言えます。
しかしながら、WSBKは上がってすぐにチャンピオンを争えるような簡単なレースではありません。経験豊富な名手たちの集まりです。WSBK昇格を決めても、やはりブレガのキャリアにとって必要なのはWSSPのワールドチャンピオンという称号。そしてチャンピオン争いに勝つという経験です。何がなんでもタイトルを手にするのだというブレガの走りはきっとWSBKにも活かされていくので、フルプッシュの走りに期待です。
一方で、追うステファノ・マンジー(ヤマハ)はフランスで2位と3位の連続表彰台を獲得。しかし、ブレガにポイント差を広げられてしまいました。ここまで9戦18レースで最もラップリードを稼いでいるのはニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)=203周。2位はステファノ・マンジー(ヤマハ)=40周ということで、今季のポイント以上に両者の差は歴然とついている状態です。
フランスでそんな2人の間に割って入ったのはバレンティン・デブイース(ヤマハ)です。地元フランスのチーム「GMT94」からの参戦で、彼自身もフランス人ライダー。これまではスポット参戦のライダーでしたが、今季はフル参戦。母国フランスでWSSPではキャリア初表彰台。しかも連続で取るという地元パワーを見せつけました。
そして、日本の岡谷雄太(カワサキ)は鈴鹿8耐で走り込んだ効果か、今季ベストの18位でレース1を終えました。初の600ccマシン、カワサキZ X−6Rでなかなかタフなレースが続いていた彼ですが、ポイント獲得まであと少しのところまで来たので、昨年もWSSP300でトップ争いを展開したモーターランドあアラゴンで更なる結果に期待したいですね。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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