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モーター スポーツ コラム 2023年9月15日

真夏の鈴鹿で今季1勝目を飾ったホンダNSX-GT、有終の美を飾るべく後半戦で巻き返しなるか

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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第5戦で待望の勝利を飾ったNo.16 ARTA MUGEN NSX-GT。

毎回熱戦が繰り広げられている2023AUTOBACS SUPER GTシリーズ。GT500クラスは前半4戦を振り返ると日産ZとトヨタGRスープラが勝利を分け合う展開となっていたが、第5戦鈴鹿ではついにホンダ勢が本領を発揮。No.16 ARTA MUGEN NSX-GTが待望の今季初勝利を挙げた。

今シーズンも5台のNSX-GTがエントリーしているが、このうちARTAはTEAM MUGENとタッグを組んで参戦。8号車に野尻智紀/大湯都史樹、16号車に福住仁嶺/大津弘樹という強力メンバーでチャンピオン獲得を必達目標に挑んでいる。

しかし、いざシーズンが始まってみると速さを見せながらも結果が残らない日々が続いた。どちらの車両も各レースで表彰台を狙える位置を走行していながら、ピット作業違反やガス欠など何かのハプニングが発生していた。

特に16号車は開幕戦岡山、第2戦富士、第4戦富士と3度にわたってペナルティを受けており、それがなければ早い段階で好結果を残すことができていたと言っても過言ではないほどのパフォーマンスをみせていた。

うまくいかないレースが続けば続くほど「そろそろ何とかしないといけない……」と両ドライバーやチームにのしかかる負担は大きくなっていった。

予選でポールポジションを奪うも、記者会見で福住も「レースで鍵になるのは、ペナルティを喰らわないこと」とコメントするほど。ミスをしなければ絶対に良い結果が出ると、自分たちの心に言い聞かせて450kmの決勝レースに臨んだ。

福住仁嶺(No.16 ARTA MUGEN NSX-GT)。

序盤から2番手以下に対して差をつけ始めていた16号車は、11周目にコース上でストップ車両が発生したのをみると、真っ先にピットに呼び込んだ。FCYが導入される直前にピットロードに進入し、変則ではあるものの1回目のルーティーンを完了。これでアドバンテージをさらに大きくした。

燃料が想定していた分給油できておらず、途中に燃費走行を強いられるもノーミスの走りで大津から福住にドライバー交代。ここ最近はミスが続いていたピット作業も問題はなかった。最後は福住が10秒以上のリードを守り切り待望のトップチェッカー。ホンダ勢に今季1勝目をもたらした。

「今年の前半から歯車の合わないレースが続きましたけど、やっと合い始めたのかなと思います。ただ、さすがに今回のレースを落としてしまうと次に繋がらないと思っていました。何としても獲りたいと思って、スタッフみんながここにきました。そこで2人のドライバーがちゃんと結果を出してくれたのが、嬉しいです」と鈴木亜久里監督。

実はNSX-GTが鈴鹿を制するのは2018年以来、5年ぶりとなる。もちろん、今年でNSX-GTはGR500参戦車両としての役目を終えるため、NSX-GT鈴鹿ラストランという重要な1戦だった。そこでついに名門チームが本領を発揮して勝利。「心に残るレースができたのかなと思います」と鈴木監督も安堵の表情を見せていた。

待望の1勝を挙げたNo.16 ARTA MUGEN NSX-GT。

ちなみに余談ではあるが……“ゼッケン16番”をつけた車両がGT500クラスで勝利を飾るのは20年ぶりのこと。前述の通り今年からチーム名としてはARTAになっているが、16号車に関しては昨年までのTEAM MUGEN体制が色濃く残っている車両でもある。ここ数年、速さを見せながらも結果につながらなかった16号車。それだけに、TEAM MUGENのスタッフたちにとっても待望の1勝だったことは間違いなく、普段からお世話になっているTEAM MUGENの広報の方も珍しく涙を流していた。そのほかのTEAM MUGENメンバーもいつになく喜んでいたのが印象的だった。

これで、前半戦の悪い流れを振り払えた16号車。サクセスウェイトは重くなるが、両ドライバーとも「チャンスはある」と前向きに捉えている。昨シーズンのTEAM IMPULもそうだったが、チャンピオン争いの注目が集まり始める第5戦や第6戦で優勝したチームが、終盤戦でチャンピオン争いに加わってくる可能性は非常に高い。

現時点でNo.3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)が49ポイント、No.36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋)が45ポイントと、全体の中でも頭ひとつ抜け出ているが、両車とも燃料リストリクター制限が最大3段階目に入っており、今回のSUGOでも上位に食い込むのは難しそうだ。その隙に16号車がポイント差を縮められれば、今季のチャンピオン争いはさらに面白い展開になっていきそうだ。

もちろん、この第6戦はサクセスウェイトの差が一番大きくなるため、ここまで結果が残せなかったチームにとっては軽いサクセスウェイトを活かせられれば、優勝するチャンスが大きくなる。特にホンダ勢では8号車が第2戦以降でノーポイントが続いているだけに、SUGOで躍進する姿に期待したいところだ。

今年も最終決戦の時が近づき始めているSUPER GTのGT500クラス。今週末もアツい戦いが繰り広げられることだろう。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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