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今シーズン2度目となる鈴鹿決戦。
全8戦で争われるSUPER GTも、鈴鹿サーキットで第5戦を迎え、いよいよ後半戦に突入する。今年は例年になく一筋縄ではいかない展開が続き、どうにも予想困難ではある。天候変化や赤旗によるレースの終了。もし、何事もなくスムーズにレースが進んでいれば、また違った結果になっていただろう。8月最後の週末となるが、まだ猛烈な暑さに見舞われること必至。終始ドライコンディションでスムーズな展開、それぞれ積んだサクセスウェイトなりの走りを見てみたいところだが…。
なお、今回も450kmレースとして競われ、給油を伴う2回のピットストップが義務づけ。また、スタートから5周目までピットストップは禁じられる。前回の富士では序盤のうちにタイヤを交換せざるを得ず、驚くような戦術は採り得なかったが、終始ドライコンディションであったら、どうなっていくのか。興味深いところではある。
ミシュランのウェットタイヤがすごい、誰にも植えつけられた印象
レインコンディションで圧倒的な速さを見せたNiterra MOTUL Z。
タラレバが許されるなら…。第4戦の富士でポールポジションを獲得したのは、リアライズコーポレーションADVAN Zの佐々木大樹/平手晃平組。スタート直前に雨でコースが濡らされなかったら、果たして。逆に言えば、雨が一滴も降らなかったら、Niterra MOTUL Zの千代勝正/高星明誠組は勝てていたかどうか。
まさに「運も実力のうち」だったが、それ以上に圧巻だったのが、Niterra MOTUL Zの履く、ミシュランのウェットタイヤのパフォーマンスだった。スタート時に路面が濡れていたから、全車ウェットタイヤを装着。セーフティカー(SC)スタートでレースが開始され、3周目からバトル解禁となると、千代のペースが凄まじく、予選4番手からたった1周でトップに立ったのである。しかし、雨がやんで路面が渇き始めると、3番手に退いていた佐々木は、いち早くドライタイヤに交換。この判断はどうやら吉と出ず、完全にドライアップしていない状態においては、ウォームアップに遅れたことが最後まで響いてしまう。
これに対して、Niterra MOTUL Zは最も遅いタイヤ交換となったが、4番手に留めたのだから、悪い判断だったとは言えないだろう。ひとつ違った視点から見ると、GT500クラスでも10周強を走った後、100周目までの残り周回を、もう1回の給油だけで走れるのも明らかになった。今までのほぼ3分割でないと無理、というセオリーは覆されたことになる。まぁ、そのために全体が、燃費走行を強いられたかもしれないが。
スタートしてから5周でピットストップというのは、GT500クラスでは現実的ではなかろうが、10周を超えたら“あり”というか、富士の450kmレースでは、いわゆるアンダーカットを狙ってくるチームも現れそうだ。その上で周回遅れにならないことを条件に、SCやFCY(フルコースイエロー)が長かったり、頻繁に出たりすれば、よりレースを有利に戦えるだろう。話を戻そう。終盤になってGT300クラスの車両に火災が発生。火の勢いが強く、消化に時間を要したことからSCが出され、やがて赤旗に改められてレースは中断される。その間にゲリラ豪雨に見舞われたため、再開は延長されることに。ストレート上に止められた車両は、中断中にウェットタイヤへの交換が許される。
これで再びNiterra MOTUL Zに追い風が吹く。再開後のペースが、もう明らかに違うのだ。あっという間にトップに返り咲き、そのまま逃げ続けていった。途中で雨はやみ、後述するGT300クラスではドライタイヤに交換した車両が優勝を果たすも、GT500クラスではウェットタイヤでのステイが正解。それはマシンの重量や、タイヤの剛性の違いによるのだろう。実際、ドライタイヤに交換して勝負に出たチームは、ただただ順位を落としただけ。高星が逃げ切り果たし、千代とともにランキングのトップに浮上。ミシュランのウェットタイヤがすごい、という強い印象を残しながら…。
NSXと立川の鈴鹿ラストランにも注目したい
NSX勢は鈴鹿のラストランを勝利で飾りたい。
さて、今回のレースである。Niterra MOTUL Zに関しては、サクセスウェイトが98kg(実際には50kg+燃料流量リストリクターの装着)とあっては、まったく勝負になるまい。それこそ雨でも降れば、話は別だが、それでも入賞するのがやっとだろう。とにかく重い車は、今回と次のSUGOまでひたすら我慢。88kgに達している、au TOM’S GR Supraの坪井翔/宮田莉朋組も同様だ。前回、72kg積んで4位は見事だが、さすがにここからの2戦は…。
そこでまた、強調したいのが軽さである。その点で言うと、前回の予想はNiterra MOTUL Z以外は、まずまず当たった格好だ。しかし、リアライズコーポレーションADVAN Zだけが!まだサクセスウェイトは10kgとあって、引き続きかなり有利だとしておこう。
続いて推したいのが、Deloitte TOM’S GR Supraの笹原右京/ジュリアーノ・アレジ組、そしてDENSO KOBELCO SARD GR Supraの関口雄飛/中山雄一組だ。この2台はともに16kgしか積んでいないからだが、赤旗前の順位はDENSO KOBELCO SARD GR Supraが2番手で、Deloitte TOM’S GR Supraが3番手。最終的に8位、9位に甘んじはしたが、雨が終盤に降らなかったら、間違いなく順位はこれ以上だったはずだ。コンディションに恵まれさえすれば!
一方、ホンダのお膝元である鈴鹿で、NSXはこれがラストランになる。一説には、勝ちが至上命令とも。となれば、22kgであるARTA NSX-GTの8号車、野尻智紀/大湯都史樹組しかないだろう。開幕戦でいきなり3位も、その後の展開に恵まれず。爆発力に富むドライバーのコンビとあって、予選から大暴れ確実なのではないか?
今シーズン限りの引退を表明している立川祐路、そして石浦宏明がドライブするZENT CERUMO GR Supraも見逃せないところだ。前回は14kgで5位、むしろ中断前より順位を上げていた。今回もまだ26kgとあって、勝負権は十分残されているはず。だが、このふたりは、なんとなく最終戦で勝って、有終の美を飾るような気がしている。
富士の無念は、鈴鹿で晴らす!
前戦の悔しさを晴らしたいグッドスマイル初音ミクAMG。
前回のGT300クラスを長らくリードしたのは、グッドスマイル初音ミクAMGで、序盤は片岡龍也が逃げ続けた。このレースは2回の車両火災があり、その詳細には触れないこととするが、最初のSCでリードを失うも、また何事もなかったように逃げ、代わった谷口信輝もまた、安定の走りを見せていた。そこに来て、終盤の赤旗である。前述のとおり、再びウェットタイヤを履くシチュエーションにおいて、いったんはトップを奪われた谷口ながら、路面の渇きとともに差を詰め返して、やがて逆転を果たす。
上位ではドライタイヤの交換が2番目に早く、それでこそ谷口と思われたものの、なんとアウトラップでまさかのスピンが!すぐに復帰するも挽回ならず、非常に悔しい思いをしたはずだ。まだサクセスウェイトは9kgということも含め、あの時見せた速さは保たれているに違いない。よって今回はグッドスマイル初音ミクAMGを大本命としたい。今回勝たずして、いつ勝つのかと。
その一方で、終盤に見せ場があったレースだった。赤旗からの再開直後にトップに立ったのは、PONOS GAINER GT-Rの安田裕信/大草りき組。それまでも2番手につけていたが、安田が力走を見せ、リスタートから間もなくトップに浮上。しかし、これを逃してくれなかったのが、GAINER TANAX GT-Rの富田竜一郎/石川京侍/塩津佑介組だった。チームメイトであっても、富田が安田に容赦なく襲いかかり、やがて逆転を果たす。
それでも路面の渇きとともに、谷口のトップ再浮上を許したことから、富田は谷口より3周早くピットイン。これが最大の勝因となった。GAINER TANAX GT-Rがピットに戻る間に、トップに立ったのはSUBARU BRZ R&D SPORTの井口卓人/山内英輝組で、追いかけるのはSYNTIUM LMcorsa GR Supra GTの吉本大樹/河野瞬佑組だった。その2台に迫ってきたのが、誰あろう富田。ドライタイヤに交換するロスを嫌って、コースに留まり続けた山内英輝と吉本大樹ながら、ラップタイムが秒単位の差となってはたまらない。
ラスト2周で富田がトップに立ち、それでも表彰台には上がれるかと思われたが、なんと最終ラップの最終コーナーで2台は接触。SUBARU BRZ R&D SPORTがスピンで6位に後退、4位でチェッカーを受けたSYNTIUM LMcorsa GR Supraはペナルティで10位に降格。ちなみに、ここまで上げた車両はグッドスマイル初音ミクAMG以外、タイヤはダンロップを装着。
しかし、2位だったとはいえ、それ以上のパフォーマンスを見せたのが、Studie BMW M4の荒聖治/柳田真孝組、そしてミシュランのウェットタイヤだった。赤旗前の10番手から、一気に順位を上げてきたからだ。これにより、荒はランキングのトップに浮上した。
一方、ランキングは2位に下がったとはいえ、リアライズ日産メカニックチャレンジGT-RのJP.デ・オリベイラ/名取鉄平組は、サクセスウェイトを90kgも積んでなお4位!相変わらずのしぶとさを見せたが、この2チームはついに上限の100kgに達したこともあり、さすがに苦戦は免れそうもないが、あと2戦はもう増えない状況で、どんなレースを見せてくれるのか注目だ。
さて、今回注目すべき一台は、小暮卓史と元嶋佑弥がドライブするJLOCランボルギーニGT3だ。前回よりマシンをウラカンEVO2に改めての参戦で、一時は2位を走行した。空力的に、さらに洗練された印象があり、走りにリズムを要する鈴鹿にはマッチしそうだ。ドライコンディションが保たれたら、そろそろ結果を残してくれるはず!
そして、冒頭でも触れたとおり、最初のピットストップは5周目以降というのは、前回と一緒ながら、鈴鹿の5周は富士の7~8周に相当。前回でFIA-GT3も10周前後で入って、残りのピットストップを1回で済ませられるのが明らかになったことから、どうやら戦略にも幅が広がりそう。その上で、スカッとするレース展開を望みたい。
文:秦 直之
秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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