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モーター スポーツ コラム 2023年8月1日

SUPER GT第4戦プレビュー|真夏の暑さに打ち勝て!耐えれば、きっと結果もついてくる

SUPER GT by 秦 直之
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富士スピードウェイで開催されるSUPER GT第4戦。

SUPER GTは、第3戦から2か月のインターバルがあり、久しぶりという印象もある。第4戦は富士スピードウェイで開催され、レースは第2戦同様、450kmで競われる。では、同じような展開になるかといえば、それぞれ積まれているサクセスウェイトも違うし、何より気候的なコンディションが違う。ゴールデンウィークはさわやかなという印象だったが、今はもう真夏。それも連日のように猛暑が伝えられ、きっとこのレースウィークが例外にはならないはずだ。

近頃はクールスーツやエアコンによって、以前よりはドライバーに対する厳しさは軽減されているが、マシンやタイヤに対しては変わりなく……。あまりもの暑さに、ドライバーよりも先に音を上げてしまうかも。

今度はリアライズコーポレーションADVAN Zが来る!?

リアライズコーポレーションADVAN Z

第3戦の鈴鹿は、衝撃的なエンディングとなった。MOTUL AUTECH Zの松田次生が130Rの立ち上がりで、GT300車両と接触。姿勢を乱したマシンは宙を舞い、シケイン手前のフェンスに激突、原形を保たぬほどの大クラッシュとなったのだ。あれだけの衝撃を受けながら、松田が大事に至らなかったのは、いかに現在のGTが安全性を重視しているかを物語る。しばしリハビリに専念していた松田も、つい先ごろ退院したことを明らかに。元気な姿を見せてくれるだろう。

そのアクシデントの発生により、レースは赤旗終了。その時点でトップは、Niterra MOTUL Zの千代勝正/高星明誠組だったものの、規定で義務づけられた「給油を伴うピットイン」の2回のうち、1回を未消化だったことで物議を醸し、レース当日に正式結果は出ず。後日、改めて出された正式結果では、ピットインと給油時間相当の60秒がペナルティとして加算され、4位に降格となっていた。

ちなみに第4戦からは、義務づけられたピットストップを行う前に赤旗でレース終了となった時の対応が明文化。当初のレース距離の75%未満だった時はピットストップ履行が免除されるが、75%を超えていれば1周減算となる。

ともあれ、繰り上がって優勝を飾ったのは、WedsSport ADVAN GR Supraの国本雄資/阪口晴南組だった。TGR TEAM WedsSport BANDOHにとっては2016年のタイ以来、実に7年ぶりの優勝となった。その年からチームに加入している国本にとっても7年ぶりだ。昨年は3戦連続、もう1回を加えて4回もポールポジションを奪いながら、最上位は5位。ランキングでも11位に甘んじ、「土曜日までのチーム」と揶揄されもしたが、ついに決勝でも本領を発揮した格好だ。目下、ランキングでも4位につけている。

国本組を抑え、ランキングのトップを行くのは、第2戦を制し、第3戦でも2位になったau TOM’S GR Supraの坪井翔/宮田莉朋組で、2位は千代組。3位はMOTUL AUTECH Zの松田/ロニー・クインタレッリ組ながら、このあたりはサクセスウェイト50kg超とあって、さすがに苦戦は免れまい。特に第2戦の富士を勝った勢いを再びとは、坪井組は75kgにも達しているだけに……。とにかく1ポイントでも獲れれば、という展開になるだろう。

前回のプレビューで、「今年のGT500クラスは“リベンジ”がテーマ?」としたが、前回も実際にそうなって国本組が優勝を飾っている。ただ、この時、筆者が大本命として挙げたのは、リアライズコーポレーションADVAN Zの佐々木大樹/平手晃平だった。

予選では平手が最速タイムを記し、予想的中かと思われたものの、燃料を収めるガスバックの容量違反があってタイムが抹消に。最後尾からのレースで流れを取り戻すことなく、それでも8位でゴールしている。今回、リベンジを遂げるには、まさに打ってつけではあるまいか?

その上で軽さも重要になると触れたが、となれば現在2kgしか積んでいない、Modulo NSX-GTの伊沢拓也/太田格之進組もまた、有力方補として挙げたい。根拠もあって、今年からレースウィークに持ち込めるドライタイヤは1セット減となり、450kmレースの今回も6セットまでだ。コスト削減には効果大ながら、最初の選定次第では使いたいタイヤが足りない、という問題が予想以上に生じているようだ。

ただし、前年から前戦まで優勝できなかったタイヤメーカーは1セット追加できるため、唯一のダンロップユーザーである伊沢組に有利な側面も。第1戦では予選3番手につけ、底力はあるチームだけに、やはり“リベンジ”に期待したい。

なお、今回はARTA NSX-GTの8号車が野尻智紀と大湯都史樹に加え、第3ドライバーとして木村偉織を登録している。これは7月上旬に大湯がトレーニング中に鎖骨を骨折したことによる。大湯自身は、出る気満々のようだが、果たして本調子かどうか。この第3ドライバー登録、意外にビッグチャンス発生のケースが、過去には少なくない。出走の機会を与えられれば、木村の評価がグッと高まる可能性も……。その意味では、このチームにも注目したい。

GT300クラスは1周目ピットが必勝法? えっ、それが禁じられた!

SUBARU BRZ R&D SPORT

2回の給油を伴うピットストップが義務づけとなる450kmレースにおいて、GT300クラスでは早めのピットストップが必勝手段になってしまうのか? 理想は1周目に給油だけ行ってしまうこと。これで見た目の順位は大きく落としてしまうものの、ピットでのロスを最小限にできるばかりか、ライバルに行く手を阻まれることなく、自分たちのペースで走り続けられるメリットは極めて大きく、気がつけば、いつの間にか順位を上げているという…。

リアライズ日産メカニックチャレンジGT-RのJP.デ・オリベイラ/名取鉄平組に、終盤逆転を許したとはいえ、これをやって第2戦で2位になったのが、muta Racing GR86 GTの平良響/堤優威組だ。このレースで3位だった、埼玉トヨペットGB GR Supra GTの吉田広樹/川合孝汰組も3周目に給油だけ行っている。

ただ、この作戦、どのチームでもできるわけではない。好燃費でタイヤのライフに余裕がある、GTA-GT3だけが可能だとされてきた。逆に言えば、FIA-GT3には採れない作戦だと思われてもいた。ところが、やってのけたのである、Studie BMW M4の荒聖治/柳田真孝組が、前回の鈴鹿で。その結果、やはり1周目に入ってきた吉田組、2周目に入ってきた平良組と、揃って終盤にトップを争い合った。

冒頭でも触れたとおり、前回はアクシデントの発生により、赤旗が出されてレースは終了。最後まで続いていたら、果たしてどうなっていたか。実際、“1周目ピット・キラー”のJP組が3チームの背後に迫ってきており、ひょっとすると逆転されていた可能性もある。

しかし、運も味方につけて荒組が、昨年の第3戦以来の勝利を同じ鈴鹿で飾ったのは、紛れもない事実。相当な我慢を強いられていただろうが、衝撃的ではあった。「やればできる」と知らしめたからには、他のFIA-GT3もトライしてくるかもしれない。

ただし、である。今回発行されたブルテンにより、最初のピットストップは5周目以降と限定された。つまりスタートしてすぐ、ピットに入る作戦は封じ込められたのだ。これには鈴鹿で表彰台に立った3チームは、頭を抱えているかもしれない。だが、間違いなく今回も“あの手、この手”を駆使してくるだろう。実際にきっちり5周目に入ってくるかもしれない。そのあたりはお手並み拝見だ!

まぁ、そこまで極端でなくても、3スティントのうちの1回を、超ショートにしてくる可能性もあるだろう。それこそ給油だけで、ドライバーは2スティント連続。GT300クラスは、そういう作戦に幅が取れるのも醍醐味と言えるだろう。

こういった作戦を得意とするのは、黒澤治樹監督が指揮を執るLEON PYRAMID AMGの蒲生尚弥/篠原拓朗組。何かあっと驚くような秘策に討って出るのではないだろうか?

さて、現時点でGT300クラスのランキングトップを行くのは、やはりJP組。先に“1周目・ピット・キラー”と称したように、このチームはあくまで成功を貫き、結果を残し続けている。サクセスウェイトが積み重なっても、しっかりポイントを稼ぐ術に長けており、今回もそういうレースとするはずだ。

一方、昨年もタイトルを争い合ったSUBARU BRZ R&D SPORTの井口卓人/山内英輝組はといえば、開幕から2戦連続でノーポイント、そして第3戦でポールポジションは奪ったものの、決勝は6位とまだ本領を発揮できずにいる。ただ、昨年の第4戦富士を制しているように、もともと相性は良いコースである。サクセスウェイトが18kgでしかない現在は、必勝体制で臨む一戦となるだろう。

まだ重くないという点において、引き続き注目したいのが、apr LC500h GTの嵯峨宏紀/小高一斗/根本悠生組だ。第2戦では予選2番手を獲得。決勝ではタイヤ選定のミスもあり、第1スティントをショートにして、かつタイヤ交換しなくてはならなかったため8位に甘んじたが、やはりロングホイールベースと、重量の前後バランスの良さから高速コーナーを得意とすることが明らかになっており、富士ならセクター1とセクター2で稼げそう。サクセスウェイトもまだ9kgでしかないだけに、今度こそ!の期待がかかる。

文:秦 直之

秦 直之

秦 直之

大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。

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