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モーター スポーツ コラム 2023年7月12日

【SUPER GT あの瞬間】国本雄資選手(No.19 WedsSport ADVAN GR Supra)「周りの人たちが喜んでいるのが、すごくうれしかった」 | 2023 SUPER GT 第3戦 鈴鹿

モータースポーツコラム by 島村 元子
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国本雄資(No.19 WedsSport ADVAN GR Supra)

国本雄資(No.19 WedsSport ADVAN GR Supra)

レースウィークの出来事をドライバーに振り返ってもらう「SUPER GT あの瞬間」。2023年シーズンも引き続き、どんなドラマがあったのか、その心境などをコラムにしてお届けします!

レース終盤に発生した大クラッシュで赤旗終了という形で結末を迎えた第3戦鈴鹿。レース当日中に正式結果が出ず、暫定的にNo.19 WedsSport ADVAN GR Supraが勝者となっていた。その後、6月12日に正式結果が確定し、晴れて19号車の今シーズン初優勝が決まった。チーム加入後、60戦目にして7年ぶりの勝利をもたらした国本雄資選手が、あらためて鈴鹿の戦いを振り返る。

──6月12日、正式に優勝が決まりました。 チームとして自身7年ぶり優勝ですが、どのように受け止めていますか。

国本雄資(以下、国本):現場(鈴鹿サーキット)では優勝っていうのは味わえなかったですが、正式に(優勝が)決まってやっぱりすごくうれしかったですし、ホッとしているっていう感じですかね。いろんな感情が渦巻いています。

──“某モータースポーツウェブサイト”には、坂東正敬監督から電話で暫定優勝の報告を受けて『国本選手は泣いたそうです』と紹介されていましたが、果たして真相は?

国本:まあ、その……事実ですね。はい(笑)。

──実際はどういう気持ちになったのでしょうか?

国本:自分の中ではすごくやり切ったレースで、ヨコハマタイヤとチームとっていうのが本当に完璧な仕事をして、自分たちドライバーもいい仕事ができて満足いく結果でしたが、ああいう形(※1)で終わってしまったので、2位(という結果)は受け入れて……っていう感じでした。その後、抗議することになって……。自分のなかでは、抗議をして(結果が)覆ることが経験上あまりなかったので、今回も多分難しいんだろうなっていうのが正直ありましたが、それが覆ってすごくびっくりしました。あとは、どのドライバーもみんな苦しい思いをたくさんしてると思うんですが、(チーム移籍後)7年間勝てなかったっこともあったし、(その間に)チームメイトだったりエンジニアが変わり、一緒に勝つことができなかったメンバーがやっぱり多かったのですが、そういう人たちを勝たせてあげられた。チームメイトの(阪口)晴南君もそうだし、チーフエンジニアの中山(将)さんだったり、あとは、ヨコハマタイヤのエンジニアとかたくさんの方と一緒に勝てたことがすごくうれしくて。自分の優勝のうれしさというよりも、そういう周りの人たちが喜んだりしているっていうのがすごくうれしかったです。

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【ダイジェスト】SUPER GT(スーパーGT) 第3戦 鈴鹿サーキット

──7年間勝てなかったなか、仕事としてヨコハマタイヤの開発に携わり、たくさんスタッフとぶつかったりしたでしょうし、“産みの苦しみ”も味わったからこそ、本当に良かったと思える勝利でしたね。

国本:本当に苦しいときでも、みんな優勝を目指して諦めず戦っていたので……まぁ一歩一歩ですけど優勝に近づいていって、やっとそういう形になったので、みんなの努力が報われたのかなと思います。

──予選は阪口晴南選手がQ1をトップ通過し、国本選手にとっては今シーズン初のQ2担当となりました。今回Q2を担当することになった理由と、そのアタックを振り返っていただけますか?

国本:予選に関しては、去年から(阪口と)交互にQ2を走っていて。で、なぜか開幕戦と2戦目は僕がQ1に行くことになりました。鈴鹿は自分が得意だしテストでもいいタイムで走れていたので、マサさん(坂東監督)が考えてQ2に僕を選んでくれて、っていう感じです。朝の公式練習はあんまりいい状態ではなくて、正直すごく不安な部分があって、“Q1、通るのかな?”って。本当にギリギリの戦いになるんじゃないかと思っていたのですが、公式練習から予選に向けてのセット変更などが良くなって、(コンディションに)マッチして、予選Q1は(阪口)晴南君がトップタイム出してくれました。なので、“またポール狙うぞ!”とすごく気合が入った予選だったのですが、ちょっと自分のミスもあって、少しまとめきれない部分があったので、そこはすごく悔しかったんです。でもなんとか予選2番手で……そのときは3番手だったんですけど(※2)、2番手で予選を終えることができて、まずまずの位置からスタートっていうことで、さらにまた気合が入ったって感じですね。

※2:予選Q2では、No.24 リアライズコーポレーション ADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平)がトップタイムをマークするも、再車検で車両違反(ガスバック容量違反)となり、予選タイム削除に。結果、19号車は2位へ繰り上がった。

──昨シーズンの5月の鈴鹿戦ではポールポジションからのスタートで、決勝5位の結果でした。今回の鈴鹿大会では、どのような戦略で臨もうという話になりましたか?

国本:去年も鈴鹿のレースペースは他のサーキットに比べて結構良かったので、(優勝が)狙えるんじゃないかなって。あとは、自分たちの問題であったアウトラップだったり、スタートして1周目(のペース)っていうのが他車に比べて劣っていたんですけども、そこがシーズンオフやシーズン中の(タイヤ)開発で、どんどん良くなって改善していったので、スタートしたときから36号車(au TOM’S GR Supra)よりも自分がペースが良くて、“これ、1周目からいけるんじゃないかな”っていうような感じがあって。そのあと、36号車もちょっと速かったんですが、自分たちもペースダウンせずに同じようなペースでコンスタントに走れたので、最初の自分のピット(イン)までは計画どおり……いや計画以上でした。順位も落とさなかったし、コンスタントに走れたし、作戦どおりいけたと思います。

──進化中のヨコハマタイヤには、どんな特性、強みがあるのでしょうか?

国本:去年は予選が良い反面、(レース中の)アウトラップだったりスタート1周目にすごく手こずっている部分があったので、そこにフォーカスしてタイヤを開発したし、タイヤ選択もそういうところを重視したんですけど、結果的に今までの弱点が(開発によって改善されて)鈴鹿では強みになった。それでレースを支配することができたので、すごく開発が進んでいることを実感できるレースでしたね。

──19号車そして同じヨコハマタイヤを履く24号車(リアライズコーポレーション ADVAN Z)の活躍を見ればわかるように、今年は予選の一発だけじゃない!、という開発陣の熱い思いが伝わるようなタイヤになってきました。

国本:そうです。24号車は(第1戦)岡山も(第2戦)富士もすごくレースが好調だったので、タイヤだけではなくて、自分たちもクルマをもっと良くしていかなきゃいけないなっていうふうにいい意味でとらえることができました。“鈴鹿ではクルマももっと良くしよう”とチームでしっかり話し合い、レースに強いクルマを準備し、タイヤ選択もうまくいったのかなと思います。

──レース戦略ですが、国本選手は26周終わりでピットイン、阪口選手へと交代する“フルサービス”をGT500勢で最初に実施しました。ほぼ、周回数を三等分する“均等割”でしたが、これには理由があるのでしょうか?

国本:タイヤライフを考えると、やっぱり均等に走ったほうが一番速く走れるってことで……タイヤ次第では早く(ピットに)入るっていう作戦もあったのですが、順調にペースダウンせずに走ることができたので26周まで引っ張り、そのあと後半のタイヤは、アウトラップ重視なタイヤを選択しました。それを着けたことによって(36号車を)逆転できたし、レース中でもつねにチームとラジオでやり取りしながら次のタイヤ選択を考えたので、それが本当にうまくいったのかなと思います。

──35周目、トップに立つと後方の1号車(MARELLI IMPUL Z)や23号車(MOTUL AUTECH Z)との攻防戦になりました。そのなかで46周終わりに2回目のピットインを実施。23号車と同じ周に入ったのはなぜですか?

国本:確かあのときは、もう1周長く行く予定だったんですが、もう1周行くとGT300車両のトラフィックに引っかかってしまうっていうこともあって、1周早く(ピットに)入りました。そこは、晴南君がパッと考えて(ピットに)入ってきてくれたので、その読みも良かったし、そのあとのアウトラップでも他車に対して(スピードで)勝っていたし、それで(49周目に)36号車を抜くこともできたし……。ほんとにすべて完璧に行ったかなと思います。

──最後のピット作業を終えたあと、チェッカーに向けてどんな思いでレースを見守っていましたか?

国本:結構緊張しました。自分が乗ってるときよりもなんかすごくそわそわしてしまって……。結構(後続車と)ギャップがあって。『これ、結構ぶっちぎりで勝てるのかな』と思ったんですけど、意外と36号車が近くにいて、10秒ないぐらい? 7秒とか8秒ぐらい(うしろ)にいたのかな。あっち(36号車)はやっぱり少しタイヤがフレッシュなぶん……タイヤ交換したあとのペースが少し速くて徐々に追いつかれてしまっていたので、ラスト10周あたりの勝負になるかもっていう感じで、すごくそわそわしていたのを覚えてます。

No.19 WedsSport ADVAN GR Supra

No.19 WedsSport ADVAN GR Supra

──もう優勝が目に見えてきてる、けれどうしろから迫ってきている……いろんなことが頭をよぎったかもしれません。

国本:ただ、鈴鹿ってすごくうしろにつくとダウンフォースが抜けてしまって、なかなかオーバーテイクするのが難しいサーキットなので、うしろにつかれたとしても自分たちはいいペースで走っていたし、晴南君も本当にいい走りしてくれたので、(ポジションを)守ってくれるんだろうなというふうに思ってました。

──そんななか、59周目のシケイン手前で大きなクラッシュが発生、レースが中断しました。再開したらどうなるだろうという不安はありましたか?

国本:いや、そのときはもう不安はなくて……。その間もチームのエンジニア、タイヤのエンジニアとミーティングをしていて、自分たちはこういう戦い方をしようっていうのがありました。あとは(タイヤの)ウォームアップがいいということで、(再)スタートしたところで逃げられるんじゃないかとか、そういう話をしながら再開の時間を待っていましたね。

──結果、レースはそのまま終了。暫定2位で表彰台に上がりました。久々の表彰台ですが、気持ちとしては複雑でしたか?

国本:最後までやりたかったっていうのはあります。2位で終わってしまうっていうより、最後までレースがしたかったという気持ちとしては、結果を受け入れるしかなかったので悔しかったですね。ただ、2位でも自分たちは本当完璧な仕事ができたし、去年ずっと苦労していて、今年も開幕戦、2戦目とレースに苦戦していた部分があったので、そこを払拭できたことはすごくうれしかったんです。みんなの頑張りが結果に現われて、みんなのことを誇りに思っていました。そういった部分ではうれしかったかな。2位という結果に対しての悔しさはあまりなかったですね。

──次の富士の戦いについて。去年は2戦ともポールポジションを獲り、今年も第2戦で阪口選手が1位と0.076秒差という僅差の2位でしたが、サクセスウェイトの兼ね合いがあるので、今回はどうでしょう?

国本:僕、レース序盤で重たい(サクセス)ウェイトっていうのはあんまり味わってないんです。テストではウェイトを積んで走ったりとかはしているんですけど、ちょっと読めない部分があるんでなんとも言えないですね。ただ、予選のパフォーマンスは絶対高いと思うので、そこをしっかりと発揮したい。富士でも前回の鈴鹿で良かったセットアップで走ると思うんですが、正直、それで走るのがすごく楽しみだなっていうのがありますね。違うサーキットに行ってもポテンシャルがあるのかを見てみたいなって思います。

──7年ぶりの優勝を達成した今、 去年は4回獲ったポールポジションを今年もまたやってください、というファンの思いが膨らんでいると思います。44キロを積んでどこまでその声に応えられるかが次の見どころになりそうですね

国本:19号車にとって未知のウェイト……“未知のウェイト”って言ったらヘンですけど、序盤でここまで重いのはあまりなかったので、どれだけやれるか、あとは次のレースまでに富士と鈴鹿でテストがあるので、そこでしっかりと調整してうまく戦えるようにしたいなと思ってます。

──2016年のチーム初優勝のときは、坂東監督がコース上でみんなと男泣きしたシーンを覚えています。今回は感動のシーンをファンの皆さんにお見せできなかったので、チームとして、国本選手として、ぜひ皆さんにお見せしたいという気持ちは大きいのではないですか?

国本:そうですね。今度はしっかりとチェッカーを受けて、優勝して……もう現場で、サーキットで、チームとあとはファンの皆さんとスポンサーさんと一緒に喜びを分かち合いたい。なので、2勝目をちょっと待っててほしいなと思います。

──では、最後にこの企画恒例の「24時間以内のちょっとした幸せ」を教えてください!

国本:今日、晴南君と(監督の)マサさんと会えたのがうれしかったです(笑)。一緒に戦ってる仲間なんで、会えるのはうれしいです。

──レースウィークになったら、監督とドライバーさんは別個に行動する形も多いと聞きますが、たしか19号車はは違いますよね!?

国本:朝から晩まで一緒ですね。ホテルの部屋出てから帰るまで、もうずっと一緒って感じですね。

文:島村元子

島村元子

島村 元子

日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。

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