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宮田莉朋選手(No.37 KeePer TOM’S GR Supra) 「富士で勝たないとシリーズチャンピオンも厳しいという思いで戦った」
SUPER GT あの瞬間 by 島村 元子サッシャと共に勝利を喜ぶ宮田(右)
レースでの出来事をドライバー自身に振り返ってもらう「SUPER GT あの瞬間」。レースでの秘話、ドライバーのホンネを”深掘り”し、映像とコラムでお届けします!
第4戦富士でコンビを組むサッシャ・フェネストラズ選手ともども待望のGT500初勝利を達成した宮田莉朋選手。数多くのドライバーが参戦するGTで最年少コンビとなるふたりが掴んだ初金星は、攻めの戦略と強い精神力、それを支えたチームによるものだったと言える。初タイトル奪取に挑む若きトップランカーが語る富士の戦いとは!?
──GT500クラスへのフル参戦3年目で待望の初優勝から1週間弱。気持ち的には落ち着きましたか。
宮田莉朋:落ち着いたというか、優勝したときもあまり実感がなくて。裏話的なことですが、僕100周レースだったという認識だったのであと2周あると思って(※1)。無線で「ファイナルラップだから」って言われたんですけど、「いや、あと2周だよね」ってずっと無線で言ってて。だからチェッカー受けたとき、「あ、ほんとにチェッカーだったな」っていう認識だったんで(笑)。で、チェッカー振られるのも、僕、(GT)300(クラス車両)をホームストレートで抜きながらだったんで、その300に対しても、多分マーシャルもチェッカー振ろうか悩んでて……。そういうのもあって、ちょっとドキドキしながらのチェッカーでした。
※1:第4戦は450km・100周レースだったが、決勝直前の降雨を受けてフォーメーションラップを1周追加に。このため、1周減算の99周レースになった。
──込み上げてくる感動っていうものとは、ちょっと違いましたね。
宮田:違いました(笑)。僕らペースも良くて、作戦面も良かったこともあって、500クラスの周回遅れも出てきて。2位と争っていたし、周回遅れもいたから、ここで変に抜かれたら…って思いながらチェッカーを受けて。ほんとにファイナルラップなのか半信半疑でずっと走ってました(苦笑)。
──ファイナルラップは「ようやく待望の!」と、(涙が)ウルウルみたいなこともあるかもしれないのに、今回はちょっと違って「これ、チェッカーか!?」みたいな感じでしたね。
宮田:優勝したら、ホームストレート、ピットの前を通過するとき結構喜んだりするんですけど、ちょっとドキドキしながら喜んでたっていうか、ほんとに大丈夫だよね!? って思いながらチェッカーフラッグを見たんで。大丈夫でしたけど、結構ドキドキしながら走ってました(苦笑)。
──そうだとすれば、チェッカーを受けた瞬間に無線で「勝ったんだよね!?」みたいな、確認のメッセージが先に口から出たのでは?
宮田:そうです、そうです。僕が「大丈夫だよね!? ほんとにチェッカーだよね!?」みたいな感じで話して。ただもう(大立健太)エンジニアが泣いてたんで、「ああ、優勝したんだ」と思って。
──パルクフェルメにクルマを止めて、コンビを組むサッシャ(フェネストラズ)選手とも抱き合って。ともに初優勝の喜びが爆発した姿が印象的でした。
宮田:僕は昨年まで19号車(WedsSport ADVAN GR Supra)でレースをしていて。サッシャに関してはデビューイヤーが一緒なんですけど、彼は36から37(※2)っていうのがありますけど、ずっとトムスで(GT500に参戦)。でも彼は去年ほぼほぼ1年レースができなかった(※3)。ただ、2020年は逆にずっとトップ3(のランキング)でレースを重ねて、安定した速さはあったものの優勝できなくて。だから、レースの結果を残し方という部分では(自分と)全然正反対だったんですけど、勝ちたくても勝てないのが続いたドライバー(フェネストラズ)と、勝とうと思ってもそこにたどり着けない自分がいたので。富士は結構僕ら得意なんで、今回この(今シーズン)ラストの富士で勝たないとシリーズチャンピオンに向けても厳しいっていう思いで戦ってました。今までもずっと勝ちたいっていう思いはありましたけど、より強い気持ちで戦いに来ました。
※2:サッシャ・フェネストラズは2020年にGT500へステップアップ。この年はNo.36 au TOM’S GR Supraで参戦し、21年からは37号車を担当。宮田とは今シーズンからコンビを組む。
※3:昨年はコロナ禍で来日が叶わず、復帰を果たしたのは10月。参戦は第6戦オートポリスから最終戦までの3戦に留まった。
──予選はヨコハマ勢がワン・ツー(No.19 WedsSport ADVAN GR Supra&No.24 リアライズコーポレーション ADVAN Z)。一方でブリヂストン勢として37号車は宮田選手がトップを獲りました。悔しい結果ながら、手応えを持って挑んだ決勝でしたか。
宮田:いや、全然手応えはなくて。タイヤ選択が結構難しくて、夏の割に寒かったし。実際、上位2台のヨコハマは鈴鹿大会からこの富士の間の2ヶ月の間にタイヤテストをしてたんで、この季節でも寒い可能性があるっていうことを多分見通すことはできてたと思うんです。テストができている、できてないというところで、僕らの準備する段階でのプロセスと結構大きな差に感じてて。予選でのあのタイム差は、まあ仕方ないっていうか。僕自身ももうちょっとアタックをまとめれば、前に来れたのかなっていう思いはあるんです。ただクルマとしても、ちょっと難しくて。あとはタイヤも予選にフォーカスするより決勝にフォーカスしてたんで、だいぶタイムを出すのに厳しいと思ってた中での予選でした。そういう部分では3番手というのはうれしかったですし、BS、ミシュランといったレースで激しい戦いをするタイヤメーカーで、ある程度サクセスウエイトを積んでたクルマの中でも一番前だったんで。そこは良かったのかなと思ってます。
──決勝スタートは前回の第2戦と同様、フェネストラズ選手が担当しました。前回は予選4番手からオープニングラップでトップに立ったシーンがまだ記憶に新しいのですが、今回も!という期待はありましたか。
宮田:そうですね。あとはスタート前かな、雨が降ってきて、ウェット(タイヤ)にするかどうするかって…エンジニアは悩んでたんですけど、僕とサッシャはもう絶対ドライ(スリックタイヤ)で行くって言って。まぁ僕はスタートじゃないから言えたんですけど(苦笑)、でもサッシャ自身も「絶対ドライで耐えた方が、レースで勝てる可能性がもっと広がる」って話してて。(降雨で)Aコーナーから100Rは川ができてたんですけど、1コーナーとセクター3はドライだったんで。僕らはグリッドウォーク中にドライバーとエンジニアとでコースサイドへ歩きに行って。間近でコース状況、路面状況を見に行って、「これはもう絶対ドライ」って。耐えた方が多分(優勝の)可能性があると思うし、もしかしたらフォーメーションラップも(もう1周)増えるかもしれないと。晴れてきたから、ここから考えるとドライでスタートしようっていう思いもあったんで。逆に追い上げてくれるだろうっていうよりも、そういったリスクを背負ってでも、多分サッシャは安心してレースを進めてくれるだろうっていう思いがありました。天気とかいろんな部分(の不確定要素が)あったけど、僕らはレースに向けて強い意志を持って戦いました。
No.37 KeePer TOM’S GR Supra
──フェネストラズ選手は2位で周回を重ねる中、一方で宮田選手は中盤、終盤に向けてどのようなシナリオを描いていたのでしょうか。
宮田:まぁもうレースが終わったら作戦を明かすしますが、作戦面としてはもともとサッシャでスタートして、 僕がダブルスティントという予定でした。仮に第1スティントのスタートでFCY(フルコースイエロー)が出て……例えばFCYのタイミングがちょうどピットに入るタイミングで良ければ、入ろうかという話はしてたんですけど、レギュレーション上、(レースの)3分の1を(ひとりの)ドライバーが走らなきゃいけないんで、そうなるとサッシャ、僕、サッシャの可能性が高くなる。そうすると第2スティントでFCYが出た時に、僕がピットに入れないっていう可能性が大きくなるっていうことを含め、第1スティントのサッシャはなるべく3分の1を超える作戦にしつつ、燃費を稼げるように考えてました。だからサッシャの最初のスティントでは、そういった部分でも24号車に追いついてほしいって部分と、燃費を稼いで少しでもピットのロスを最小限に収めることを意識して遂行してもらってました。
──レース中盤は24号車との差がおよそ23秒ぐらいでした。その後、途中に1分間ほどFCYが宣言されましたが、 これは37号車にとって追い風になりましたか。
宮田:実はFCYのときに、ちょっとこちらとしては不利なことが起きてしまって……。というのも、ちょうど最終コーナーを立ち上がってホームストレートあたりでFCYが始まったんです。僕の前の300がFCYボードが出る前にピットに入ろうとしてて。で、僕がそれに対しても全開で抜こうとしたときに、FCYボードが出ちゃって。彼らがピットの入り口から戻ってきて、ちょうどそのボードが出てる最中に僕が抜いたみたいな絵になってしまったように僕は感じたんです。それでなんかお互いに減速と加速をし始めちゃって。それで前の24号車と1秒差ぐらいだったのが、4秒ぐらいまで広がっちゃった。で、後ろのインパル(12号車)にも追いつかれてしまって。ちょっとそこがすごくイタくて。僕がFCYのボードが出る前に300を抜いたという認識で行ってればFCYによるギャップがなく、むしろ前の24号車とも近くなってたと思います。実際、FCYが出たとき、24号車の前に300がいたんで、そこで速度差で追いついてれば、もうちょっとFCYもいい方向にもっていけたんですけど。ちょっとそこらへんは不利に働いてしまいました。
──FCYは追い風ではなく、逆風だったわけですね。それでも70周を過ぎると、今度は24号車とのタイム差が1秒強ぐらいになって再び差を縮めました。その中で2回目のルーティンビットが近づいたわけですが、言ってみればここでの戦略が今回の勝負を決めたと思います。それが、ダブルスティントでした。コース復帰を果たすと、先にピット作業を終えていた24号車に対し、ほぼストレート1本分の差がついていました。
宮田:第3スティント前のピットのときにちょうど24号車がピットに入ったのを僕はうしろで見てて。チーム的にも次の周に絶対ピットへ入るからっていう風に無線で言ってて。ほんとに運よく……これはもうチームのサポートのおかげなんですけど、24号車がピットに入ったときって、300の集団に入ってる中でのピットインで。僕も300を抜きながら(24号車)コンドウ(レーシングの)ピット(の様子)を見てて。で、その翌周に僕がピット入る周はほんとにクリアラップで走れて。実際、燃費もそれまで稼いでたんで、もうここは予選同様のアタックするつもりでプッシュしようと思って。自分の中でベストタイムを出すっていう気持ちで走ってました。
それが実際インラップで結構タイムを稼げて、あとは燃費も少し稼ぎながらずっと蓄積した結果、ピットタイムがすごい短い時間で終えられて……。日産に対してはピットとか給油時間を含めて、対抗できたのもそうですし、僕がピットに入る周はクリアラップっていうのがすごく大きくて。アウトラップも僕のときは実際300の車両がいなかったんですごく恵まれてて、自分がほんとにフリーで走れる状況をチームが判断して、それがすごく追い風になってあのようになった印象です。あとはピットに入ったときも、サッシャがピットウォール(プラットフォーム)のエンジニアとか監督サイドにいて、「もうマジで頼む!」みたいな顔で見られたんで……。「あ、これ頑張んなきゃいけないな」と思って(笑)。無線でも山田(淳)監督と大立エンジニアからも、「アウトラップ、マジで頼む!」って言われました。僕はアウトラップに課題点がずっと残ってたんで、そういう部分でしっかり克服したところを見せれてよかったです。
──その中でプレッシャーは感じなかったですか。
宮田:プレッシャーというか、なんなんですかね。アドレナリンと、今までの自分のこう……僕は結構心配性なんで、毎回レースを迎える前は、過去のレースを振り返ったりとか逆に作戦を振り返ったりするのが好きというか、しないとソワソワしちゃうタイプなんです。それこそ、37号車の過去のレースはほとんど自分の中で……そのレース結果も含めて覚えてるんですけど、「このぐらいのギャップだったら、逆転できる」とか、「このぐらいの距離感であればアウトラップも抜ける」っていうのは、大体いつも頭の中でインプットされた状態でレースに臨んでいるんです。
実際、24号車がアウトラップから計測1周目に入るから、僕のアウトラップはプッシュしてと言われたんですけど、うしろを見るかぎり全然いなかったし、あとはインパルがどの位置にいるかっていうとこを考えたんですが、実際無線で「今、24号車ピット(作業が)終わってピットアウトするから」っていう無線のときも、もう僕はスタートラインを超えてたんで、「多分大丈夫だ」っていう思いしかなくて。あとは、多分そういった状況ってドライバー心理としても、ピットアウトの1コーナーは絶対勝負しに来るとわかってたし、24号車のタイヤの選択もある程度情報聞いてたんで、多分アウトラップは、僕より少し厳しい状況下で走るかもしれないっていう認識でした。だからこそ逆にアウトラップと計測1周目にこっちの力量で差を見つければなと思ってたんで。そういう部分でもヒヤヒヤしたっていうよりは、過去の自分の中で分析したことが全部頭の中に入ってたので、冷静に戦えました。
──一方で、終盤は同じくダブルスティントを選び、2番手に浮上した12号車(カルソニックIMPUL Z)が直近のライバルになりました。タイムギャップを考えると、もうこの先は”我が道を行く”のレースができるという気持ちでしたか。
宮田:1コーナーで逆転して(※4)トップに立ったんですが、トップに立つ前も、立ってからも、エンジニアはつねに冷静に落ち着いて状況を判断して、レースを進めましょうと言ってて。実際トップに立ってからも、エンジニアは見る側で感情的になりやすいんで。ストレートに言うと、要らない無線が多かったりしてタイヤの状況どうだ、ああだっていう話があったりしてて。「もうそんなのはいいから、うしろのギャップを的確に伝えてもらえば、こっちは遂行する」って言って。あとは、ラストスティントもピット時間を最小限にしたんで、最初は燃費を気にしなきゃいけないスティントでした。逆にうしろの12号車は僕が燃費をちょっと気にしてる最中にどんどんギャップを縮めてきたので、 最初の5周から10周ぐらいはちょっとギャップがどんどん縮まったんです。けどまぁ、自分の中で燃費を稼いでる最中って、タイヤもあんまり使ってないことを自分の中で理解してたんで、そこからタイヤをフルに活用すれば、ペースは逆転できるっていう自分の中での確信があったんで。だから後半は毎ラップ1秒ぐらい差を広げることできて、勝つことできました。
※4:37号車がピットインした翌周、74周終わりで12号車がピットへ。同じくダブルスティントを敢行して37号車の前でコースに復帰するも、直後の1コーナーで止まりきれずにオーバーラン。これで37号車が実質トップに立った。
──逆にエンジニアの方が優勝目前でドキドキしていたんでしょうね。
宮田:そうですね。実は、今年は僕らGTで最年少のペアって言われてるんですけど、エンジニアもGTでは最年少で。トラックエンジニアも初年度で、若いからこそ周りの人とは違うような考え方だったり、分析の仕方もあったりして、僕らとしてはすごくエンジニアが……(チーム)みんなが一生懸命やるんですけど、その中でのプロセスがやっぱり人それぞれ違うんで。ただ、最年少というかエンジニアも僕らと歳が近いんで、ほんとにヤル気というか士気がすごくみなぎっていて……。だからこそこういった場面になるとエンジニアとしては他の情報を聞きたくなるのもわかるし、今までデータエンジニアとして37号車に携わってたんで、勝ったレースの状況は(その場で知っていても)……トラックエンジニアになるとチームを指揮しなきゃいけないんで、感情的になるのもすごくわかるし。これは僕らドライバー含めて経験を積めば、多分トップに立ってもつねに平常心でいられるようになると思うんで。そういう部分でもいい思い出になったかなと思います。
クルマから降りた直後、サッシャに抱き抱えられる宮田
──今年はチームを移籍し、 新コンビを結成。さらにレース後には誕生日(8月10日)を迎えるなど、今回の勝利はほんとに思い出深いレースになったのではないですか。
宮田:こんなレースになるとはまったく思ってなかったですし、実際レースウィークに入る前にチームミーティングをして、そのあとサッシャとご飯行こうってなって、ふたりでご飯行ったときも僕の誕生日
が近かったし、サッシャも誕生日(7月28日)を迎えたし、レースが終わったら……お祝いをしようっていうよりも、やっぱり勝ってから誕生日パーティーをしようみたいな……。勝たなければ誕生日パーティーはしない、みたいな感じでした。 レースに負けて誕生日祝いはなんかおかしいなみたいな感じがしたんで、約束したのを果たすことができたというか。普段の生活で約束事って大体は簡単に果たすことできるんですけど、レースで勝ってその約束を果たすっていうのはなかなか簡単にはできないんで、約束を果たしたのもすごくうれしいです。レースが終わってから、温泉にふたりで入りに行ってきました。サッシャとふたりで未来というか将来に向けて約束したんです。次はチャンピオンを獲ったときに、僕とサッシャがそのとき約束したことを将来果たせたらいいなっていう風に思ってます。
──では最後に、「SUPER GT あの瞬間」恒例の質問。ここ24時間以内で感じた”ちょっと幸せなこと”を教えてください!
宮田:幸せなことですよね。あることはあるんですけど……。僕は誕生日を迎えることもできて、いろいろとうれしいこともたくさんあるんですけど、これといって正直あんまりないんですよね。というのも、GTで優勝できたこともすごく幸せなことですし、それができたことにはほんとに関係者の皆さんに感謝してて。ただ、自分の中でドライバーは勝つことがもう絶対だと思ってて。だから、自分はそれができてたからこそ、こうやって若い歳で500クラスに早くデビューできたし、GTとスーパーフォーミュラをトムスで乗れてる。絶対勝つのが自分の中で最低条件で、チャンピオンを獲るのが毎年絶対の目標っていう風にやってきてたので、さっき言ったように、サッシャと組んでて今年はほんとに一番ヤル気があるっていうか。 この一年で自分が成長しなければある意味その世界に行く道が途絶えてしまうっていう思いでやってるので、今回優勝できたのはすごくうれしいことですし、ようやく勝ったっていう幸せな気持ちで溢れてるんですけど。ただ僕は勝つのがマストというか、その思いでしかやってなかったんで……。それがすごい幸せかって言うと、すごくなんか微妙ですね。
ただ、その環境下でやれてることはほんとに幸せですし、ライバルから始まったサッシャとGTで組むことになって。ほんとにライバルだからこそ心の底から尊敬してる部分もあるし、相手もやっぱり速くなろうっていう思いがあるから僕に聞いてくるし。僕はやっぱり世界に行きたいので、トヨタであればWEC(世界耐久選手権)もやってるし、最終的にはF1に行きたいっていう思いはすごく強いので。そういう分では、サッシャはその世界を知ってるひとりなので、やっぱり世界に行くためにはつねにどうアプローチしたらいいのかとか。彼は今、フォーミュラEのテストドライバーもやってるのでその情報を聞いたり、ほんとに彼からいろんな世界を僕は勉強できてて。そういう環境にいられることが一番の幸せかなっていう風に思っています。今年はほんとにヤル気もあるし、家庭的には去年結婚して、家族にも支えられて幸せ者なんですけど、それ以上にずっとサッシャと仲良くなりたいっていう思いから始まって、ライバルから友達、今度はチームメイトになって、ほんとに他の人じゃ経験できないことを僕は経験できている。そういうところを振り返れば、今が一番幸せかなって思ってるんで。この直近の24時間っていうよりも、そのことの方がずっと幸せに感じてますね。
──徐々に進化できる環境にいられることが幸せなわけですね。
宮田:そうですね。サッシャは日本のレースが今まで経験した中でベストだって言ってるんですけど、彼の中でもいろんな目指すべき場所がやっぱあるし、僕も彼には目指すべき場所に行ってほしい。僕もそこについて行きたいですし。僕はカートの頃から世界で戦ったことがあるんですけど、ほんとに同世代って一度そこで出会うと、ずっとそこから同じ場所で戦うっていう風に教わったので。そのひとりが彼だし、もっと言うとF1で乗ってる選手も僕はカートの頃、世界で戦った時に知ってるドライバーもいっぱいいます。目指すべき場所に行くには努力が必要ですけど、そういう人と出会えた人とはこれからもずっと友情関係じゃないですけど、関係を続けてくためにも、彼が日本にいるうちに僕が強く速くなって、僕が世界に行けるようになりたいなって思いが強いので。今年はプライベートでも彼とよく会うし、語学的な部分でも勉強できるのもそうですが、レースに対しての熱い思いだったりとか、自分の中で将来はこうなりたいっていうプライベートの……彼はすばらしいホテル経営者の息子なんで、ビジネスの部分でも勉強できるし(笑)。ほんとに普通の人じゃ出会えないことを自分はできてるんで。ま、そういう部分で彼について行くっていうよりは、彼を越すっていう思いもありつつ、この1年で成長していきたいなと思ってます。
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【SUPER GT あの瞬間】SUPER GT 2022 第4戦:宮田莉朋選手(No.37 KeePer TOM’S GR Supra)
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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