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モーター スポーツ コラム 2022年4月30日

藤波清斗選手(No.56 リアライズ 日産メカニックチャレンジ GT−R)「自分のスティントでパーフェクトな仕事ができた」

SUPER GT あの瞬間 by 島村 元子
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56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R

56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R

レースでの出来事をドライバー自身に振り返ってもらう「SUPER GT あの瞬間」。2022年シーズンも引き続き、映像とコラムでお届けします!

終わってみれば、GT300、GT500両クラスにおいて昨シーズンと同じチームが優勝を遂げたSUPER GT第1戦岡山。巧みな戦略、強いレース展開を味方につけて初戦を制したが、そこには昨シーズンのタイトルを獲り逃したという無念があったからこそ、引き寄せた勝利でもあったはず。独走で優勝を果たしたNo.56 リアライズ 日産メカニックチャレンジ GT−Rの藤波清斗選手は、今シーズンこそチャンピオン奪還!と意気込む。

──開幕戦は独走での優勝。勝因はどこにありますか?
藤波:練習走行からタイヤのピックアップやタイヤのセットアップだったり、すごいデータを取ってたくさんの確認ができました。またチームも(藤波が加入して)3年目ですが、 熟成されたチームだと思います。チームメイトもJP(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)選手なので不安要素もなく、開幕戦を迎えることができました。

──予選は僅差ながら5位。決勝を見越したタイヤ選択があったからでしょうか?
藤波:(ノックアウト予選)Q1は僕でしたが、とにかくQ1を通過して。Q2ではライバルも速かったんですけど、正直、ポール(ポジション)を狙っていました。 ただ、(予選で装着した)タイヤはそんなにソフトではなかったし、決勝を見越して…と言う部分もあったので、5位で終わってしまいました。でも、5位は上出来かな。決勝は好位置からできるし、5番手くらいからだと決勝ペースも悪くない(うまくコントロールできる)ので、 その辺しっかりと調整しながらできたのかなというところです。

──経験豊富なオリベイラ選手とのコンビも3年目。どんなパートナーですか?
藤波:14年ほどGT500を、フォーミュラ・ニッポンでも(2010年に)チャンピオンを獲って……強いし、速い。頼れるチームメイトだと思っています。(コンビを組んで)3年目ですが、いまだに吸収できる部分があってパートナーとしてすごく勉強させてもらっています。日本食が大好きだし、(レースでは)一緒に移動するんですが音楽をガンガンかけて、にぎやかです。ヘルメットを被っているJPさんは猛獣のように突っ走るタイプですが、ヘルメット脱いだらほんとラフでいろんな話をして笑って……。良いパートナーですね。すごく楽しいです。(ふたりのコミュニケーションは)ほとんど日本語です(笑)。JPさん、ちょこちょこと(日本語が)わかるんで、基本日本語ベースで。たまに英語に使いますけど、日本語はわかってると思いますよ。

56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R

56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R

──チーム監督はマッチこと近藤真彦さん。チーム加入が決まったときの周りの反響は?
藤波:やっぱりすごい反響がありました。僕もオファーをいただきビックリしました。(チームがGT300クラスに参戦を始めた)2019年の(シーズン)1年目からポイントを獲ったり、トップ5につねにいるチームと思っていたので、そのチームで戦わせてもらえるなんて、すごくうれしいお話でしたし、光栄なことです。これ以上のことはないというくらいうれしくて。で、2020年(にチームに加入して)戦ったら、1年目でチャンピオンを獲れたので……。(チームには)環境を整えてもらっているので感謝しています。それに、監督はレースに対して愛がありますし、レースが本当に好きだと思います。『どんどんいけよ』と後押してくれますし。ドライバーとしてもうれしいですね。

──決勝では、オープニングラップで3位浮上。さらに18周目に2位へと浮上。2位のNo.10 TANAX GAINER GT−Rを一発で仕留めるつもりでしたか?
藤波:10号車はダブルヘアピンでインを差しました。サクッと一発で決めたいと思っていました。ただGT-R同士なので強みも同じ。相手もミスしないとなかなかチャンスがなかったのですがが、前半ちょっと(ペースを)押さえていたこともあって……。逆に2番手の10号車は、スバル(No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT)を追いかけていたので、(その様子を)10号車のタイヤがタレてきたこともあり、ダブルヘアピンの1つ目で仕留めることができました。

──2番手になり、もう頭の中は61号車のことしかなかったはずです。23周目の攻防戦の状況を教えてください。
藤波:61号車はやっぱりペースが速かったのでどうなるか(逆転できるかどうか)わかりませんでした。とはいえ、意外と(ペースの)落ち幅が大きかったので、(56号車が)2番手に上がった時点で(61号車のタイヤは)もうキツいだろうなということはわかっていました。バックストレートからのヘアピンでは、ブレーキングで外から並びかけてそのままアウト側で粘り……1個目でイン側をとりました。ブレーキングもこっちのほうがいける(優位)ことがわかっていましたし、タイヤもこっちのほうが摩耗していないとわかっていたので。(抜くのは)あそこ(ヘアピン)で……と、こだわっていたわけではなかったんですが、あそこでいくのが見せどころかなとも思いました。やっぱりインパクトがある走りというか、見ている人に楽しんでもらうほうが……(いいかと)。僕たちは速いだけでなく、(レースを)盛り上げる部分でも意識していますし、そういう部分ではあそこで勝負しにいったという感じです。

56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R

56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R

──この逆転劇を優勝会見でオリベイラ選手が絶賛していました。
藤波:いつもは前半で順位を上げてもそんなに(TVに)映してもらえなくて……、ほんとです(笑)。後半にJPさんがすごい怒涛の追い上げをするので。JPさんがトップに上がって、いいところばっかり持っていかれちゃうんで……。なので、今回は(コンビ)3年目にしてやっとちょっと見せ場を作れたというか、しっかり自分のスティントでパーフェクトな仕事ができたかなと思っています。

──その後、61号車のトラブルで、終盤のライバルは18号車(UPGARAGE NSX GT3)に。そんな中、2回にわたりFCY導入となりましたが、ピットでその状況をどう見守っていましたか?
藤波:タイヤは保つ(問題ない)と思っていましたし、JPさんが守り切ってくれると思って安心してピットでワクワクしながら(チェッカーを)待ち構えていました。JPさんなら心配ないと思って(コースへと)送り出したし、あとは待つのみ!と、どしっと構えてピットでみんなと待ってました。

──終わってみれば、2位に15秒近い差。パーフェクトウィンでした。
藤波:パーフェクトでしたね。ほんとに今回、クルマもタイヤも作戦も良かった。JPさんのピットストップも速かったですし、自分としてもちゃんと仕事ができたとすごく思っています。それが結果として優勝に結びついたと。きちんと抜いて帰り、力強いパフォーマンスができた、それが勝因ですね。でもまさかトップで戻ってこれるとは正直思っていませんでした。でもこれは行けるなと思って、行けるなら行くしかないと思って……。”イケイケドンドン”でした。(今回の優勝で)自分をほめるというか……まだまだ課題もありますが、とりあえず第一関門として、しっかり自分の仕事はできたかなと思います。欲を言えば、(2位と)10秒離したかったです。7秒しか離せなかったので。

──開幕戦も終わり、ライバルの戦闘力も知ることになった中で迎える第2戦富士の目標は?
とりあえずポイント獲得を目指します。長いレース(450km)なので、作戦だったりFCY、ハプニングもたくさんあると思うので、そういうところで取りこぼしがないようにしたいですね。ペースとしては60kg(サクセスウェイト)を積まされちゃうので良くないとは思うんですけど、しっかりと細かな積み重ねをして、シングルでゴールして着実にポイントを獲れるよう、意識して臨みたいと思います。去年は途中で接触などでノーポイントで終わったりとか、色んなことがあって、結局最終戦までランキング争いには持ち込めたもののランキング2位となり、連覇できなかったので。必ず今年は奪還したいと思っています。そのために今年、チームも近藤監督もJPさんもみんなそういう気持ちで臨んでいるので、必ずチャンピオンを奪還して次のステージに行けるようにがんばります。

──では最後に、「SUPER GT あの瞬間」恒例の“ちょっとした幸せ”を聞かせてください!
藤波:最近、誕生日(4月13日)でした!(笑)(4月17日決勝の岡山戦は)バーステーウィンだったんですよ!なかなかバーステーウィンってしたことなかったので、そこはうれしいですね。特別な一勝です。たぶん一生に忘れない一勝ですね。自身へのご褒美ですか? 帰ってちょっと大好きなお肉いっぱい食べましたね。めっちゃ肉が大好きなんです。レース前は体調管理してたので、勝った息抜きとしてお肉食べさせてもらいました!

文:島村元子

島村元子

島村 元子

日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。

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