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【スーパースポーツ世界選手権 最終戦 マンダリカ:プレビュー】エガーターの王座決定!来季に向けた豊富な要素
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシドミニク・エガーター
排気量600ccのスポーツバイクで争う「FIMスーパースポーツ世界選手権」の最終戦が2021年11月19日(金)〜21日(日)にインドネシアのマンダリカサーキットで開催されます。南米アルゼンチンから東南アジアへと移動しての戦い。来年、MotoGPも開催する新設サーキットだけにどんなレースになるのか、注目が集まります。
さて、「FIMスーパースポーツ世界選手権」の2021年シーズンは前戦アルゼンチンでドミニク・エガーター(ヤマハ)がチャンピオンを獲得しました。今季MotoEにも参戦していたエガーターはシーズン途中に欠場したレースもありながら、10勝を飾る大活躍でチャンピオンを獲得しました。
シーズン開幕前から名門チーム「テンケイト」とエガーターの組み合わせは、非常に高いポテンシャルを示すだろうと予想されていましたが、シーズン序盤は市販車ベースで改造範囲が非常に少ない中量級バイクを乗りこなすのに苦労しました。しかし、一度スイッチが入るとそこはMoto2を長い間戦ってきたベテランライダーです。やはり圧倒的な強さでしたね。
しかし、エガーターは年間チャンピオンの獲得経験が実は一度もなかったということで、流石にシーズン後半戦は着実に上位フィニッシュを狙う走りに徹していた印象でした。念願のチャンピオン獲得で、エガーターは上位カテゴリーのスーパーバイク世界選手権にステップアップなのかと思いきや、実はシートに空きがない状態になっており、エガーターは来季も「FIMスーパースポーツ世界選手権」にテンケイトから参戦するようです。
一方で、来季、輝かしいステップアップを果たすことになるのが、ランキング3位につけ、今季2勝をマークし、ランキング3位につけているマニュエル・ゴンザレス(ヤマハ)です。マドリード出身の20歳のスペイン人ライダーは今年、スーパースポーツ世界選手権で最も光ったライダーの一人でしょう。そんな選手をヤマハは見逃しませんでした。
バレンティーノ・ロッシがチームオーナーを務めるヤマハのMoto2チーム「ヤマハVR46 マスターキャンプ」のライダーにマニュエル・ゴンザレス(ヤマハ)が起用されることになったのです。同チームはMoto2で未来のMotoGPライダーを育成するプロジェクトであり、言い方を変えれば、MotoGPで活躍できそうな良いライダーを囲っておく、という最近の各メーカーのトレンドに則したチームですね。ゴンザレスはヤマハから相当大きな期待をかけられていると言っていいでしょう。
プロダクションバイク(市販車)のレースは、レーサーマシン(レース専用バイク)のグランプリ(ロードレース世界選手権)を経験してから参戦するパターンが多く、
なんと前回のポルトガル、アルガルヴェではなんと両レースともに優勝を逃してしまいました。しかも、ランキング2位のスティーブン・オデンダール(ヤマハ)がレース2で10レースぶりに優勝したことにより、その差は少し縮まったのです。
エガーターにとってポルトガル、アルガルヴェは初レースのコースでしたが、ここからアルゼンチン、インドネシアとまたも初レースのコースが続くことになります。ただ、スティーブン・オデンダール(ヤマハ)にとっても初レースという意味では条件は同じ。2人のガチンコ勝負ということになりそうですね。
残り2戦になって首位のドミニク・エガーター(ヤマハ)=354点、ランキング2位のスティーブン・オデンダール(ヤマハ)=300点と2人の間には54点の差があります。アルゼンチンの2レースを終えてその差が50点以上あれば、エガーターがチャンピオンを決めることができます。今回は両レースともにエガーターはオデンダールより前でゴールすれば、最終戦インドネシアを待たずしてチャンピオン決定となるでしょう。
ドミニク・エガーターはもし王座を獲得すれば、キャリア初のワールドチャンピオン獲得ということになります。しかし、バルセロナ戦を欠場してまで参戦したMotoEではチャンピオン獲得ならず。MotoEはワールドカップタイトルという括りですが、2年連続でそのタイトルを逃しているだけに、ちょっとプレッシャーに弱いエガーターのメンタルが心配です。
エガーターはスイス出身の31歳。2007年に世界選手権125ccクラスにデビューし、2010年からはMoto2に参戦。キャリア前半は目立つことが少なかったライダーでしたが、Moto2の経験値を高めると成績は向上。2014年の鈴鹿8耐でTeam KAGAYAMAのライダーに起用され、3位表彰台を獲得すると日本でも注目の存在になりました。
2014年はドイツGPでMoto2初優勝。結局、グランプリでの優勝はこの1回だけになってしまいましたが、後にF.C.C. TSR Hondaのライダーとして鈴鹿8耐に参戦し、爆発的な速さを見せるなど、やはりエガーターの速さは光るものがあります。
中量級レーサークラスであるMoto2を10シーズンも戦ったライダーであり、600ccの市販車ベースクラスのスーパースポーツ世界選手権での活躍はある意味で想定内。キャリアとしては今季のメンバーではダントツの実績を誇ります。エガーターはタイトルを決めて、次なるステップへと羽ばたく事ができるか注目です。
そして、前回のアルガルヴェではなんと怪我から復帰したジュール・クルーゼル(ヤマハ)が急に息を吹き返し、なんと2シーズンぶりに優勝を飾りました。実は今回のサーキット、サーキット・サンファン・ヴィクリムで過去2年開催された2018年、2019年ともに優勝しているのがジュール・クルーゼル(ヤマハ)なのです。
これはチャンピオン争いを展開しているエガーターとオデンダールにとっては厄介な話であり、経験もあり自信もあるクルーゼルにチャンピオンを争う2人がどこまで肉薄できるか、ここも今回のレースで注目したいポイントと言え流でしょう。
初コースでもエガーターが独走か、はたまた波乱の展開になり、チャンピオン争いは最終戦に持ち越しか?日本にもファンが多いエガーターの走りから目が離せません。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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