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モーター スポーツ コラム 2021年8月7日

SUPER GT 第4戦:国本雄資(No. 19 WedsSport ADVAN GR Supra) 「悔しさはあったが、ちょっと自信に繋がったようなレースだった」

SUPER GT あの瞬間 by 島村 元子
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19号車 WedsSport ADVAN GR Supra

19号車 WedsSport ADVAN GR Supra

「SUPER GT あの瞬間」と題して、レース内容をドライバー自身に振り返ってもらう本企画。一部映像化し本コラムの最終ページで視聴可能である一方、本コラムでは余すことなく全文を紹介する。

灼熱の戦いとなった第4戦もてぎ。予選2位のフロントロウから今シーズン初めての2位表彰台を獲得したNo. 19 WedsSport ADVAN GR Supra。毎戦ライバルに対して速さと強さを見せつける一方、6年ぶりの優勝を虎視眈々と狙っている。もてぎでレース序盤から攻めの走りを披露した国本選手に「あの瞬間」を語ってもらった。

──もてぎ戦は、チームとしてどのような戦いができると思っていましたか?
国本:もてぎは毎年すごく調子が良くて、去年のレースもリタイヤしてしまったんですけども(※1)そこまではすごく力強いレースができていたんで、今年も間違いなくシーズンでは一番いいレースができるんじゃないかなと思ってサーキットに入りました。チームとしても、『もてぎは優勝を狙っていくぞ!』というような形で準備をして戦っていました。

※1:2020年第4戦のもてぎは、予選8番手から国本雄資選手がスタートを担当。次々と前方車両をオーバーテイク、早々に4番手までポジションアップを果たした。表彰台を視野に入れて力走する中、10周目のV字コーナーでGT500とGT300による接触が発生。これでGT300の車両がスピン、コースをショートカットするような形で19号車の目前に「出没」して激突。為す術もなく、19号車はリタイヤに終わった。

──準備といえば、タイヤテストもそのひとつだったと伺っています。
国本:もてぎのレースの前に、テストすることができて。本来だったら(スポーツランド)SUGOでテストするはずだった(※2)んですが、そこをもてぎに変更して(第4戦)もてぎの準備をしようということでテストすることができて。その中で新しい(タイヤ)の構造だったり、コンパウンドだったりっていうのを試すことができたし、あとはコンディション的にもテストの日がレースと同じように暑くなったので、ほんとにレースを想定しながら(もてぎ大会に持ち込む)タイヤ選択をすることができて。その中でいいタイヤもいくつか見つかって。『このタイヤだったらレースをコンスタントに走れるね』っていうのが見つかったので、すごく自信をもってもてぎに入ることができました。

※2:6月にタイヤメーカーテストを実施。

自信を持って第4戦 もてぎ に臨んだ国本選手

自信を持って第4戦 もてぎ に臨んだ国本選手

──もてぎでは朝の公式練習で4番手、予選ではQ1を3番手、Q2では2番手を獲得。とはいえ、第2戦富士からの連続ポールポジションも狙っていたのでは?
国本:そうですね。ポール(ポジション)も獲れるくらいのタイムも出ていたし、予選やった中ではもう少しやれたことがあるのかなという部分もあるんですけども、その中で宮田(莉朋)選手がすごくベスト尽くして走ってくれたと思うので、2番手からだったらすごく(優勝を狙える)チャンスあるんじゃないかなと思ってました。

──予選2番手から決勝ではどのような戦略を立てていたのですか?
国本:戦略としては、レース(の)ペースが安定して走れるっていうのがわかっていたので、とにかく(前のクルマに)付いて行って、チャンスがあったら抜かそうとか、あとは毎戦僕たちのチームはピット(作業)がすごく早いので(トップに)着いていけば(ピット作業で抜ける)チャンスもあるよという話をしていたので、とにかくミスなく走ろうと思っていました。僕個人としては『絶対抜かしたい』というのがあったので、チャンスとするなら1周目がすごいチャンスになるのかなと思ってましたし、普通もてぎって抜きづらいんですけども、トラフィックがあると結構オーバーテイクのチャンスが増えるサーキットでもあるので、(GT)300が来たときがチャンスかなとは僕は思ってました。

──「チャンスが来たとき」、つまり7周目の勝負ですよね!?
国本:はい。6周目、7周目あたりから1回目の(GT)300のトラフィックが来て。あのときはまず1-2コーナーで、1号車(STANLEY NSX−GT/牧野任祐)が300に引っかかってくれて、少しそこで差が縮まって。で、また3-4コーナーでまた300に引っかかったので、『これは絶対にここしかチャンスはないな』っていう部分でもあったし、あとは後ろにクルマがいて、4コーナーで300に引っかかるっていうのが一番イヤな状況ですし、4コーナーで引っかかったことで5コーナーまでのスピードが落ちて……。あのとき1号車がイン側をブロックしたので、僕はアウト側から飛び込むしかないなという状況で。かなりブレーキングを遅らせていつもより30メーターくらい奥まで行って、なんとか止まり切って…っていう感じでアウトから並ぶことができたし、あとはブレーキングで前に出ないと外に追い出されちゃうっていうのがあったんで、ブレーキングで抜き切るくらいの気持ちで飛び込まなきゃいけないなと思って、かなりブレーキングを遅らせて。それがすごくうまくいったし、S字までもイン側をキープできたので、すごくうまく抜かすことができました。うまく決まりました。

序盤から果敢なアタックで1号車をオーバーテイクした

序盤から果敢なアタックで1号車をオーバーテイクした

──トップ奪取後のラップタイムも速さがありました。
国本:そうですね。抜いたあとの次の周っていうのが僕にとって多分大事かなと思ったので、そこは結構リスクを背負って(周回遅れの)300をオーバーテイクしていったって感じです。普通に走ってても、(後続車と)コンマ1秒とか2秒くらいの差しかないんで、なかなか離すことができないんですけど、トラフィックになると簡単に1秒とか差がつくことがあるので、そこはかなりリスクを負っていきました。まぁ運もよくて、僕のトラフィックのタイミングがうまくストレートとかだったので。1号車は逆にイヤなところでトラフィックに引っかかりとかしてたんで。前に出たあとに、3秒、4秒と結構大きなギャップを作ることができました。あとは、タイヤのタレがすごく少なくてコンスタントに走ることができたので。普通にひとりで走っていてもいいペースで走れましたし、あとは(タイヤ)グリップの落ちが少ない分、トラフィックの処理もすごくラクなレースでした。

──2番手になった1号車が24周終わりでピットイン。一方、19号車は28周を終えてルーティンのピットインを行いました。そのときの状況は?
国本:(レースが)始まる前はもう少し早くピットに入る予定だったんですけども、タイヤのグリップダウンも少なかったし、いいペースで走れてるっていうことがあって少しピットのタイミングを遅らせていきました。ちょっとピットでミスがあって逆転されてしまったんですけども(※3)、まぁ作戦どおりというか、うまくそこまでは戦うことができたかなと思っています。(1号車に逆転されたが、交代した宮田莉朋に無線で何か言うことも)特になかったです。2番手からでもレースの途中ぐらいから僕たちのペース__(国本が担当した)前半スティントのペースが後半から良かったので、最初ウォームアップは少し悪かったですけれど、中盤後半で追いつくことができると思ったし、同じように300のトラフィックとかでチャンスが生まれるのかなと思っていたので、特にアドバイスすることはなかったですけども、(宮田は)うまく戦っていたと思います。

※3:ピットインタイムが40秒1だった1号車に対し、19号車は45.0秒。作業を終えて宮田莉朋選手がコースインする直前に1号車の山本尚貴選手は1コーナーへ。これで逆転を許した。

──前大会富士からの流れを見ても、チームとしての総合力が向上していると感じます。チーム6年目の国本選手にはどう感じますか?
国本:チームはいつも完璧な仕事をしてくれてます。前回のレース(もてぎ)は少し失敗をしてしまったんですけども、ただそのメカニックさんひとりの責任ではなくて、チームがひとつになって戦わなきゃいけないレースがSUPER GTだと思うので、そういった意味ではみんなが助け合っていい結果を出したいなという気持ちはみんなひとつだと思うので。このチームで長くレースをさせていただいて、ほんとにみんなの頑張りがすごくわかるし、その人達のためにも結果を残したいってドライバーも全員が思っているので、早く(チームに)恩返ししたいなっていう気持ちで走ってます。

強固な信頼関係で結ばれる国本選手と宮田選手

強固な信頼関係で結ばれる国本選手と宮田選手

──バトンを受け取った宮田選手も1号車を猛追。トップが見える中、2度のFCY(※4)が悔やまれます。
国本:FCY(フルコースイエロー)がなかったらとは思うんですけども、ただ、1号車の山本選手はすごくいいブロックをしてたんで、なかなか(逆転の)チャンスが生まれなくて……。一枚山本選手がやっぱり上手だったかなと感じました。追いつくと、ダウンフォースが減ってそこで一気にタイヤが摩耗してしまうんで……。そのあとチャンスっていうのが生まれづらくなってしまうし。そういったところでトップを走っていた1号車はレース全体をコントロールしていたのかなという……。気持ちにも余裕があったのかなという感じがしますね。(宮田には)もうちょっと無線を入れてあげれば良かったなと正直あるんですけども、そのときは特に指示はなく、とにかく(1号車に)着いて行こうという感じでした。

※4:セカンドスティントでは、1号車の山本尚貴選手を19号車の宮田莉朋選手が猛追。テール・トゥ・ノーズを繰り広げる中、41周目と45周目にFCYが導入され、ペースダウンを強いられる。結果、1号車の逃げ切りを許すことに。

──結果は2位。悔しい思いだけですか?
国本:うーん。やっぱりトップに立って(後続との)ギャップも広げて、『これはいける(勝てる)んじゃないかな』っていう自分のスティントだったので、2位で終わって、直後は悔しかったんですけども、ただこうやって(結果を)狙っていたもてぎで自分たちが望んでいたような結果を残すことができたので、充実感はありました。あとは、レースをコンスタントに戦えたということとタイヤ開発がうまくいってるなという実感はあったので、悔しさはありましたけどもちょっと自信に繋がったようなレースでした。

──「自信に繋がった」のであれば、続く鈴鹿でもまだまだイケると?
国本:あっ、鈴鹿はちょっと苦手なサーキットなので(苦笑)。僕たちにとって。もてぎが良かったから鈴鹿はイケるぞ、っていう風にはいかないとは思うんですけども、ただ鈴鹿に向けてまた準備も始めてますし、ヨコハマタイヤとTCD(トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)とチームと、いい準備ができていると思います。鈴鹿もしっかりとポイントを獲りたいなというのがあります。あと(第5戦)SUGO、(第7戦)もてぎと得意なサーキット(でのレース)があるのでそこに向けていい準備をして、また大きなポイントを獲りたいなと思っています。

──国本選手もSUPER GT参戦13年目。コンビ2年目の宮田選手は”イマドキの若手選手”だと感じるようになってますか? 一方でチームは結束力が強いように見受けられます。
国本:なってます(笑)!話している内容とかが、若いなっていう感じがしますし、僕とかが知らないようなことだったり、あまり興味がなかったようなことにすごく若い選手は興味があったりとかするんで……。ちょっと世代が代わってきたな、っていう感じはします(苦笑)。マサさん(坂東正敬監督)がほんとにいい環境でレースをさせてくれて、ふたりのドライバーがストレスなく戦えるように色んなことを考えてくれているので、僕たちはほんとにレースのことに集中できてるし、あとは僕自身も若い選手と最近組むようになって、レースもしやすいように、意見もしやすいようにやってるつもりです。やっぱりSUPER GTってふたりのドライバーが1台のクルマを走らせて、速く走らなきゃいけないレースなので、ひとりが気持ちよく走ってもひとりがダメだと結果が出なかったりというのがあるので、お互い引かなきゃいけないところは引いて、意見するところは意見してっていう感じで、いい環境でレースをさせてもらっているなと思います。

──チームが最後に勝ったのが2006年第7戦タイ。国本選手がチームに加入したシーズンのことでした。今シーズン、久々に勝利して”マサ監督”に大泣きさせないといけないのでは?
国本:そうですね。まぁ近いと思います!(笑)どんどんクルマもタイヤも良くなってきているので、あとは少しの運とミスをしないメンタリティが重要かなと思っています。(厳しい暑さの中でのレースが続くが)スーパーフォーミュラで戦っているので、GTだと体力的には余裕があるので。そういった部分ではラクといったら変ですけどもレース中は全然集中力が切れることもなく、最後までプッシュして走れます。あとはテストの回数も19号車は多いので、そういうところでたくさん走らせてもらえているので、いい準備ができたままレースに挑むことができています。それはタイヤとかクルマのセットアップも含め、あとはドライビングだったり集中力とか、そういった部分でもすごく役立ってます。

──メンタルのコントロールってドライバーにとってとても重要なポイントだと思いますが、一般の人でもやれることってありますか?「国本流メンタルコントロール術」を教えてください。
国本:僕、結構”緊張しい”なんで色々やるんですけども、一番簡単なのは、「深呼吸」。深呼吸するとやっぱり心拍数が落ちて、平常心に近いような状態になってくるので。緊張とリラックスの間が一番メンタルとしてすごくいい状態なので、そこに持っていけくように緊張したら深呼吸をする。逆に下にさがってぼーっとしているようなときは、音楽を聞いて(モチベーションを)上げていったりとかすることがいいかなと思います。あとは人間は絶対に緊張するし、しない人はいないと思うし。緊張して『これ、緊張だ』『不安だ』と思うよりは、『緊張してる。あ、集中できてるんだ』って自分に言い聞かせる。言い聞かせることで、緊張が「不安な緊張」じゃなくて「集中の緊張」になるので。一般の人でも簡単にできるんじゃないかなと思います。

ガジュマルを育てている国本選手

ガジュマルを育てている国本選手

──もうひとつ。最近の「ちょこっとだけうれしかったこと」を聞かせてください。
国本:(観葉植物の)ガジュマルを育てているんですけど、ちょっとねぇ……。2週間前くらいから葉っぱがすごく落ちちゃって。『こりゃヤバいな』って思ったんですけど、復活しました!(笑)。(レースで結果を出して”いい気”を持ち帰ったからでは?)そうですかね!? 新しい葉っぱがたくさん生えてきたんで、『あぁ良かったなぁ』って。よくわかんないんですが、急に葉っぱがボトボトボトと落ちだして……。こりゃマズいぞと思ったら、そっから2、3日したら新しい芽がポッ、ポッ、ポッと出だして……。あぁ良かった~。可愛いです。なんか調べたら、水を上げすぎてもいけないって書いてあったんで、ちょっとほったらかしながらやってます(笑)。

──オリンピック、開催中ですが?
国本:スポーツは好きです。今、オリンピックで毎日盛り上がってます! 全競技、やってみたいなって(笑)思ってるんですよね。50種目あるんで。全部体験してみたいなって。中でもサーフィンはやっぱりやりたいな。小さいときにスケボーをやってたんでなんとなくわかるんですけど、サーフィンとあとはフェンシングもちょっとやってみたいな、っていう。全然イメージ湧かないんで……。でもちょっと練習しておきまーす(笑)。

【SUPER GT あの瞬間】

第4戦:国本 雄資選手(No.19 WedsSport ADVAN GR Supra)

文:島村元子

島村元子

島村 元子

日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。

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