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2021インタープロト&KYOJO CUP|第1大会レポート 今年も豪華メンバーが集結!全てのレースが最後まで目が離せない!
モータースポーツコラム by 吉田 知弘いよいよ開幕したインタープロトシリーズ。今シーズンで創設9年目となる
6月に開幕を迎えた2021年のインタープロトシリーズPowered by KeePerとKYOJO CUP supported by MUSSE PLATINUM。両レースとも、シリーズ開幕戦から手に汗を握るバトルが展開された。
【インタープロトシリーズ】 プロクラスはレース中にコンディションが大きく変わり“戦略勝負”の展開に!
インタープロトシリーズには、今年も多くのトップドライバーが参戦。その顔ぶれに大きな変更はないのだが、長年このシリーズで活躍してきた山下健太が#44 NAVULから復帰。さらに昨年のSUPER GTでGT300王者となった藤波清斗が#19 GARDEN CLINIC RTからインタープロト初参戦を果たした。
また今年から本格的にGR SUPRA GT4を使用した「SUPRAクラス」が新設され、開幕大会には3台が参加するなど、話題の多い1戦となった。
今シーズン新設されたSUPRAクラス。
そんな中、プロクラスは復帰を果たした山下が予選でライバルを圧倒する走りを披露。なかなか差がつきにくいことで知られるインタープロトの車両で、2番手以下に0.5秒もの大差をつけて、ポールポジションを獲得した。
さらに、ジェントルマンレースで同じマシンでシェアする山口達雄も予選PPを獲得したほか第1戦も優勝。第2戦は不運もあって連勝こそ叶わなかったが、マシンの仕上がりを見る限りでは44号車が優勢のような印象。山下にかかる期待も徐々に大きくなっていった。
山下健太が復帰。開幕大会の予選では挨拶代わりの激走をみせた。
しかし、迎えたプロクラスの開幕大会決勝、インタープロト史上初と言っても過言ではないくらいの、予想だにしない展開となった。レース直前に雨が降った影響で路面はウエットコンディションとなったのだが、各車がスターティンググリッドに向かう頃には雨は止み、空が明るくなり始めたのだ。
これを見て、グリッド上ではウエットタイヤのままスタートするか、スリックタイヤに履き替えるか、直前まで悩んでいるチームがほとんどだった。結局、路面が十分に乾ききっていないということで、インタープロト車両でスリックタイヤに交換したのは大滝拓也(#8 J-Gear KI プロモート)のみ。上位陣はウエットタイヤでスタートを切った。
ただ、そこから路面コンディションが急速に変化していき、第1戦の中盤になるとレコードラインは完全に乾いているという状態になった。これをみて、1周目から各マシンが続々とピットイン。インタープロトでは滅多に見られないレース中のタイヤ交換が行われることとなった。
それでも、トップ集団は第1戦の優勝がかかっているため、ウエットタイヤのままバトルを続行。特に坪井翔(#32 NETZ NOVEL MIE)、ロニー・クインタレッリ(#16 ララパルーザ)、さらにインタープロト初戦となった藤波もバトルに加わり、最終ラップまで目が離せない2番手争いが展開されたが、その間に着々とリードを広げた山下が、見事2021年の第1戦を制した。
第1戦を制した山下健太(#44 NAVUL)
本来なら、第1戦の結果順ですぐグリッドへ再整列し第2戦のスタート進行が始まるのだが、山下はクールダウンラップを終えると、そのままスリックタイヤを求めてピットへ向かった。残る坪井、クインタレッリ、藤波はウエットタイヤのまま第2戦のスタートを迎えたが、この時点では完全にスリックタイヤ装着車の方が有利な状況で、あっという間に後方集団に飲み込まれた。
ここでトップに立ったのが、昨年のシリーズチャンピオンである福住仁嶺(#37 キーパー号)。彼も第1戦の途中にピットストップを行い、早めにスリックタイヤを装着していた。第1戦では表彰台を逃す結果となったが、逆に第2戦では功を奏し、序盤から後続を引き離す快走を披露。最終的に、6.6秒もの大差をつけて今季初勝利を飾った。2位には関口雄飛(#55 人馬一体ドライビングアカデミー)、終盤まで白熱した佐々木大樹(#88 Pastel Motorsport)とのバトルを制した野尻智紀(#7 CARGUY IPS)が3位を獲得した。実は野尻が昨年までタッグを組んでいたジェントルマンドライバーの“とおる君”こと澤田透氏(株式会社ジェー・ポイント 代表取締役社長)が今年3月に逝去。さらに開幕大会の前に担当していたメカニックも1人他界しており、彼らに捧げる表彰台フィニッシュとなった。
第2戦は、昨シーズン王者の福住仁嶺(#37 キーパー号)が優勝。
終わってみれば、第1戦と第2戦の表彰台の顔ぶれが全く異なる結果となった。過去を振り返ってもあまり例のないこと。純粋な速さで競い合うレースではあるのだが、今回は戦略面も試される1戦だった。
【KYOJO CUP】昨年の悔しさを乗り越え……辻本始温が念願の初優勝!
早くも創設5年目を迎えたKYOJO CUP
女性ドライバーのみのレースとして新設され、今年で早くも5年目を迎えたKYOJO CUP。ここのレースで活躍して、他のカテゴリーに巣立っていった選手も多く、最近ではこのレースに参戦したいと志願する女性ドライバーが増えて、この開幕戦には15台がエントリーした。
その中で注目を集めたのは、昨年TCRジャパンシリーズで大活躍を見せた下野璃央(#34 YGF VITA01)が今年はKYOJO CUPに参戦を果たすこととなった。直前の練習走行では、ウエットコンディションで速さをみせており、雨模様となった今回の予選では、滑りやすい路面にライバルが四苦八苦しているのを横目に、次々とタイムを更新していく走りを披露。最終的に2番手以下に0.5秒の差をつけてポールポジションを獲得した。
初参戦のシーズン開幕戦でいきなりPPを獲得と実力を見せつけた下野璃央(#34 YGF VITA01)
どちらかというと、ウエットコンディションの方が相性が良いという下野。決勝もウエット路面になることを望んでいたが、それに反して天候が回復し、ドライコンディションでのレーススタートとなった。1コーナーではなんとかトップを死守した下野だったが、ここで速さをみせたのが2番手スタートの辻本始温(#18 ORC ARUGOS VITA)だった。
2周目に下野を抜いてトップに浮上した辻本は、そのまま後続を引き離しにかかった。しかし、このまま簡単に逃げられないのが今のKYOJO CUP。彼女のライバルとして名乗りを上げたのが、山本龍(#87 おさきにどうぞ☆VITA)だ。3周目にファステストラップをマークすると、ほぼ毎周にわたってトップ攻略に挑んでいったのだが、そこは辻本も冷静に抑えるポイントを見定めて対応。それでも、いつ接触してもおかしくないほどの接近戦が展開され、2人の意地と意地がぶつかり合うトップ争いとなった。
辻本と山本による熾烈なトップ争いが繰り広げられた。
最終ラップまで目が離せない展開となったが、集中力を切らさずにトップを守り切った辻本が、残り半周でリード。一方の山本は、下野と荻原友美(#36 KNC VITA)の3番手集団に飲み込まれ、最終ラップのダンロップコーナーでは濡れた路面に足元をすくわれコースオフ。結局4番手でフィニッシュした。
最後までライバルの追撃をしのぎ切った辻本が悲願の初優勝。2番手に下野、3番手に荻原が続いたが、レース後の再車検で下野の車両が規定の最低重量に満たず失格に。これにより荻原と山本がそれぞれ繰り上がる結果となった。
普段は大学生として勉学に励む日々を送りながらレース活動をしている辻本。KYOJO CUPは、これで2年目となるのだが、1年目となった昨シーズンの最終戦では表彰台争いをしていたのだが、チェッカーまであと1周というところで追い抜かれ、表彰台を逃した。そこで味わった悔しい思いが、今季開幕戦での躍進の原動力となったのだ。
「あの時、最終ラップに抜かれたのがすごく悔しくて……それからトレーニングもそうですし、レースのことをいつも考えるようになっていて、それこそ通学で10分くらい歩いている時もレースのことを考えてしまうし、セッティングのこととかも考えて、イメージトレーニングをしていました。ドライコンディションでは絶対にいかなきゃいけないと思っていましたし、早い段階で前に出て、自分がレースのペースを作っていこうと考えていましたが、それでもゴールまで気が休まらず……でも、勝つことができて本当に良かったです」
開幕戦を制した辻本始温(#18 ORC ARUGOS VITA)
昨シーズンの最終戦は暗い表情でサーキットを後にした辻本。しかし、今回はレースを終えて、メディアの取材を受けながらも笑顔が絶えない彼女の姿が、非常に印象的だった。
チャンピオン獲得に向けて幸先の良いスタートを切った辻本だが、もちろんライバルたちだって、このまま彼女の独走を許すはずがない。2021年の女王の座をかけ、またアツい戦いが始まった。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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