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モーター スポーツ コラム 2021年5月26日

2021 SUPER GT第2戦レビュー|“勝つ”と“負ける”は紙一重

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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SUPER GT第2戦で逆転優勝を果たしたNo.17 Astemo NSX-GT

2021年のSUPER GTは、早くも第2戦までが終了。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、今月末に予定されてしまった第3戦鈴鹿は延期となってしまった。関係者から聞こえてくる情報によると、水面下で代替え開催の日程調整は進んでいる模様で、正式に決まってはいないが、その候補も絞られつつあるようだ。

思わぬ形でインターバルができることとなった2021シーズンのSUPER GTだが、ここまでの2戦を振り返ると、特にGT500クラスは昨年をしのぐ激戦となっている。これから本格化するチャンピオン争いも、“史上稀に見る”と言われた昨年を超える戦いになっている。

それを強く感じさせたのが、ゴールデンウィークに行われた第2戦富士だ。

終始レースを牽引したNo.36 au TOM’S GR Supra

今回は2年ぶりとなる500kmの長距離戦だったのだが、スタート直後からトップ争いは気の抜けない接近戦となり、今まで以上にスプリントレースとなったが、その主役はNo.36 au TOM’S GR Supra(関口雄飛/坪井翔)と、No.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)だった。

スタートで8号車(福住)が抜け出したかに思われたが、直後に導入されたセーフティカーからのレース再開で隙をついた36号車(坪井)がトップに浮上。それでも2台の差が大きく離れることなく、緊迫したトップ争いが続いた。

今回は、この2台によるトップ争いになるかと思われたが、1回目のピットストップを終えてトップに躍り出たのは、11番手スタートのNo.17 Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バケット)だった。

きっかけとなったのは、この第2戦から正式採用が決まったフルコースイエロー (FCY)。その最初の実戦導入となった31周目に、タイミングよく1回目のピットストップを行っており、これで大幅にタイムを稼いで一気にトップに浮上した。

中盤スティントは17号車の独走状態だったのだが、このままで終わらないのが今のSUPER GT。残り40周を切って最終スティントに入ると、8号車と36号車が再び差を詰め、残り20周を切って、三つ巴のバトルになった。

この中で抜け出したのは、序盤からペースが良かった8号車と36号車だったのだが、8号車は黄旗提示区間でGT300車両を追い抜いてしまいドライブスルーペナルティ。36号車も残り15周を切ったところで駆動系のトラブルに見舞われ、まさかの戦線離脱となった。

残り10周、これで17号車が有利になったのだが、これでも決着がつかないのが、今のSUPER GTである。

17号車の背後には、第1戦岡山で勝利したNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)に加え、No.37 KeePer TOM’S GR Supra(平川亮/阪口晴南)、No.1 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/武藤英紀/牧野任祐)もトップ集団に追いつき、4台が数珠つなぎになって最終ラップに突入した。

わずかな隙を見せれば、すぐに順位が入れ替わるという緊迫した状況だったが、17号車が最後までポジションを死守しトップチェッカー。ホンダ勢に今季初優勝をもたらした。

500kmレースにも関わらず、トップ4台の差は僅か。現在のSUPER GTがいかに接戦であるかを如実に表すゴールシーンとなった。

振り返ってみると、およそ3時間にわたる長丁場のレースでゴールをして見ると、トップ4台がわずか1.5秒以内にひしめくという“超僅差”の戦いだった。2020シーズンも拮抗した戦いが繰り広げられたが、マシンの熟成度が増している今年は、それを上回る接戦具合となっている。

そして、興味深いことに、序盤戦の展開が昨年とほぼ同じなのだ。2020年は開幕戦でトヨタGRスープラがトップ5を独占したのだが、第2戦ではホンダNSX-GTがリベンジを果たす勝利を獲得。それでも2位、3位には開幕戦で上位入賞したトヨタ勢の車両が入り、彼らの力強さを痛感させられた序盤戦だった。

実は2021年も同じような展開となっているのだ。開幕戦はトヨタが上位を独占し、第2戦で17号車のNSX-GTが優勝を飾ったが、2位の14号車、3位の37号車ともに開幕戦で表彰台を獲得している。

これは、ただの偶然と言えるのだろうか……。

この流れで行くと、昨年は第3戦鈴鹿でNo.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)が優勝したのだが、実は今年も日産陣営は鈴鹿を得意としており、第3戦で一気にポイントを稼ごうという狙いでいた。これに関しては、記事冒頭でお伝えした通り、鈴鹿大会の延期が決まったため、シナリオが少し変わることになりそうなのだが、もし開催されていれば、昨年と同じような流れとなる。

加えて、この第2戦の結果を見ても分かる通り、昨年以上に各大会での差が縮まっている。そう考えると、昨年よりも熾烈なトップ争いが、毎戦のように繰り広げられることは間違いなさそうだ。

2020年も、各大会で多くの嬉し涙、悔し涙が流れたGT500クラス。今年もあと一歩の歯車が噛み合わず、悔しい思いをしているチーム・ドライバーは少なくない。

今回の第2戦でみると、レース終盤で勝利が目前に迫っていながら戦線離脱を余儀なくされた8号車の福住仁嶺と、36号車の坪井翔だ。2人ともレース中に他を圧倒する速さを見せていながらも、勝利に手が届かずにトップ争いから脱落。“不運だった”、“仕方がない”という声もあるが、理由や状況がどうだったであれ“優勝できなかった”ということは紛れもない事実。2人ともマシンを降りて、悔し涙を流していたのが印象的だった。

開幕戦から悔しい展開が続く坪井翔。その速さは間違いないだけに第3戦での奮起に期待したい。

それに対して、千載一遇のチャンスをものにし、大逆転勝利を飾った17号車のNSX-GT。「運・不運」という言葉で片付けるのは簡単なのだが……改めて勝負の世界の残酷さを感じたとともに、「“勝つ”と“負ける”は紙一重」なのだということを思い知らされる1戦。細かない展開は異なるのだが、レース後に取材していたパドックには、昨年の最終戦に少し似た空気が漂っていた。

これから本格化するであろう2021年のSUPER GT王者争い。果たして、どんなドラマに発展していくのだろうか……。その行方は、1戦たりとも見逃すことはできない。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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