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モーター スポーツ コラム 2021年2月10日

2021 SUPER GTシーズンオフ情報|タイトル連覇か、それとも王座奪還か……。早くもGT500ドライバー体制が出揃う

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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SUPER GTの新シーズン開幕は4/10-11に岡山国際サーキットで予定されている

新型コロナウイルスの影響により、例年より遅い昨年11月末に閉幕したSUPER GTの2020シーズン。あれから2ヶ月半が経とうとしているが、早くも2021シーズンに向けた動きが始まっている。

毎年この時期になると「誰が、どのチームでドライブするのか?」というのが気になってくるが、今年は例年と比べても動きが早く、GT500クラスはホンダ、トヨタ、日産ともに1月のうちにドライバーズラインナップを発表した。全15チーム30名のドライバー体制が明らかとなったが、3メーカーとも思惑が分かれるような体制となった。

~ホンダ陣営~

まずは、昨年シリーズチャンピオンを獲得したホンダ勢は、ドライバー変更がほとんどなかった。最終戦のゴール500mで奇跡の逆転劇を果たした、2年ぶりにゼッケン1番をつけるTEAM KUNIMITSUは山本尚貴と牧野任祐のコンビを継続。その他も17号車 REAL RACINGは塚越広大/ベルトラン・バケット、8号車 ARTAは野尻智紀/福住仁嶺、64号車 NAKAJIMA RACINGは伊沢拓也/大津弘樹で2021シーズンに臨む。

唯一の変更となるのが、16号車 TEAM RedBull MUGEN。笹原右京は継続してチームに残り、スーパーフォーミュラで活躍を見せている大湯都史樹がGT300からステップアップすることとなった。今、国内でも勢いに乗っている2人だけに、GT500クラスをかき回す台風の目となる可能性が大きそうだ。さらにチーム監督も変更となり、新たに田中洋克氏が就任。まだ詳細は公表されていないが、その他にも細かな部分で変更があるという噂もある。

GT500クラスにステップアップする大湯都史樹。笹原右京との若きコンビの活躍に期待したい

結局、5チームのうち4チームが昨年と同じ体制と、ここまで変更がないというのは珍しいのだが、それだけ各チームとも昨年の体制がうまく機能していたということなのだろう。

しかし、各チームとも今季に臨む想いは様々だ。特に昨シーズンは勝利を飾りながらも、チャンピオン獲得に手が届かなかった17号車、8号車のメンバーは最終戦を終えて悔しさを滲ませていた。もちろん、リベンジを果たすべく、開幕戦から攻め込んでくることは間違いないだろう。それに対し、王者である山本と牧野はどういう戦いぶりを披露するのか。ホンダ陣営内の争いからも目が離せない。

~トヨタ陣営~

昨年は開幕戦でトップ5を独占する快挙をみせ、華々しいデビューを飾ったトヨタGRスープラ勢。しかし、あと一歩のところで王座を獲得できなかったということもあり、王座奪還の想いは他のメーカーに負けないほど強いものがあるだろう。

2021シーズンの体制の中で大きなトピックとなったのが、山下健太のGT500本格復帰だ。昨年はWECのプログラムに専念するため、SUPER GTのレギュラー参戦は予定していなかったが、代役参戦などで3レースに出走することになった。だが、今年は本格的に復帰ということで、シリーズチャンピオンをかけて、再び国内最高峰のツーリングカーレースに挑む。

加入するのは14号車 TGR TEAM ENEOS ROOKIEで、パートナーは大嶋和也。2019年のチャンピオンコンビが復活するということで、ライバルを脅かす存在になることは確実だ。

大嶋和也と再びコンビを組む“世界のヤマケン”こと山下健太

その他にも注目なのが、37号車のTGR TEAM KeePer TOM’Sだ。これまで平川亮/ニック・キャシディのコンビで定着していたが、キャシディは2021年からフォーミュラEに参戦することとなりSUPER GTを離れることとなった。その後任として抜擢されたのが、サッシャ・フェネストラズだ。2019年の全日本F3選手権を制し、昨年はSUPER GT(GT500)で安定した速さを披露し、開幕戦からトップ争いを演じる活躍を見せた。日本でレースを始めて3年目となる今シーズンは、ここ数年GT500でチャンピオン争いに絡む活躍を見せている平川とコンビを組んで37号車から参戦。さらなる飛躍に期待がかかる。

ニック同様アグレッシブな走りが魅力のサッシャ・フェネストラズ。飛躍の年となるか!?

そして、フェネストラズが抜けた36号車のTGR TEAM au TOM’Sには、坪井翔が加入することになった。彼は全日本F3選手権時代にTOM’Sで参戦していたこともあり、ある意味で古巣復帰となる。関口雄飛とのコンビがどのようにプラスに働いていくのか、目が離せない。

残りの3チームはドライバー変更なく、19号車 TGR TEAM WedsSport BANDOHは国本雄資/宮田莉朋、38号車 TGR TEAM ZENT CERUMOは立川祐路/石浦宏明、39号車 TGR TEAM SARDは、ヘイキ・コバライネン/中山雄一で2021シーズンに臨む。

昨年、タイトル獲得はならなかったものの、パドックの間でも車両パフォーマンスはライバルをしのいでいるという意見が圧倒的に多く、2021シーズンは他陣営にとって手強い存在になりそうだ。

~ニッサン陣営~

日産勢も王座奪還を目指して体制を変更してきた。まず注目なのは松下信治の日産移籍だ。これまではホンダ系のドライバーとして活躍し、2020年はFIA F2に挑戦した松下。シーズン後半は日本に戻ってSUPER GT(GT300)やスーパーフォーミュラに参戦していたが、2021シーズンはGT500クラスに本格挑戦することになる。これまでの流れを考えるとホンダ陣営でGT500のシートを得るのではないかという噂がもっぱらだったが、最終的には日産勢でシートを獲得。チームインパルに加入し、平峰一貴とペアを組むこととなった。普段からアグレッシブな走りを見せる松下が“元祖日本一速い男”が率いるチームで、どんな活躍を見せるのか。開幕戦が待ち遠しいところだ。

ファン驚愕の移籍となった松下信治の日産移籍。新天地でのGT500クラス本格挑戦に注目したい

近藤真彦監督率いる24号車 KONDO RACINGも体制を変更し、佐々木大樹がチームに復帰することとなり、高星明誠と組むこととなった。ここ数年は勝利から遠ざかっているKONDO RACINGに佐々木が復帰することで、風向きを変えられることができるか。こちらも目が離せない存在である。

陣営のエースチームである23号車 NISMOは、松田次生/ロニー・クインタレッリのコンビを継続。この体制では8年目のシーズンを迎えることとなった。昨年は鈴鹿ラウンドで2勝を飾る活躍を見せたが、今年も開幕戦から速さを見せてくることだろう。23号車と同じくミシュランタイヤを履く3号車 NDDP RACING with B-Maxも平手晃平と千代勝正のコンビで体制に変更はない。

昨年は、コロナ禍で変則的なスケジュールとなり、富士スピードウェイでの開催が4回に増えたことが裏目となってしまった日産勢。今年に向けては、それらを踏まえて確実に修正してくるだろう。2021年はどんな反撃をみせてくれるのか、楽しみだ。

~注目したいマシンカラーリングの変更~

こうして、3メーカーの体制が出揃ったGT500クラスだが、ドライバーの移籍以上に注目が集まっているのが「マシンカラーリングの変更」だ。

今季は1号車となるTEAM KUNIMITSUは、長年チームのトレードマークとなっていたRAYBRIGのブランドが終了することに伴い今季はカラーリングが変更となる。スポンサーはRAYBRIGブランドを展開していたスタンレー電気で変わらず、2021年は「STANLEY NSX-GT」として参戦。これまでとは打って変わり銀色のカラーリングとなる。また17号車のメインスポンサーだったケーヒンも経営統合に伴い、日立Astemoがサポートすることとなった。これにより車両名も「Astemo NSX-GT」となり、カラーリングも青から赤に一新される。

さらにROOKIE RACINGのメインスポンサーが変更となり、ENEOSがサポートすることに。SUPER GTではレクサス時代にENEOSカラーのマシンが活躍していたが、それが久しぶりに復活することとなった。そういう意味でも、今年は開幕戦から“要注目”のシーズンとなりそうだ。

昨年も劇的な形で決着がついたGT500クラス。今年はそれを上回るドラマが生まれるのか……4月の開幕戦が待ちきれない。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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