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大久保光
600ccのスポーツバイクで争う「スーパースポーツ世界選手権」。本来であればチャンピオンシップがいよいよ佳境に入ろうかという時期ですが、今季は新型コロナウィルス感染拡大で中断され、まだこれから中盤戦といったところです。「J SPORTS」では激しいバトルが魅力の「スーパースポーツ世界選手権」を全戦放送しています。
さて、今季は開幕戦・フィリップアイランドこそ予定通りの開催となりましたが、それ以降は全てのレースが一旦ペンディングとなり、再開に向けてヨーロッパ主体でスケジュールが組み直されました。イベント数自体を減らすことになりましたが、「スーパースポーツ世界選手権」は少し状況が異なり、第2戦以降が全て2レース制に。ライダーにとってはしっかり走り込め、リズムが掴みやすいフォーマットになっています。
ただ、ロックダウンによる中断があろうが、フォーマットが変わろうが、シーズンの流れは全く変わりませんでした。Moto2からスイッチして、ヤマハのチャンピオンチーム「Evan Bros. World SSP Team」に加入したアンドレア・ロカテッリ(ヤマハ)が開幕戦・フィリップアイランドで優勝。まる5ヶ月の休止を経てヘレスで再開してからもロカテッリの圧勝は続き、第3戦・ポルトガルまでの5レースでロカテッリは全戦全勝、全ポールトゥウインです。
いやいや、これは全く予想外の展開となっていますね。近年はMoto2から転向してくるライダーが増加傾向にはありましたが、ロカテッリがここまでの活躍を見せるとは驚きました。しかも、Moto2、Moto3時代に走ったことがないポルトガル・アルガルヴェのレースでも勢いが変わらなかったのですから、この速さは本物ですね。
さぁここからはルーキーで5連勝を飾ったアンドレア・ロカテッリ(ヤマハ)を誰が止めることになるのか、いつそれが止まるのか、というところが見どころとなってきますが、ここからはグランプリライダーたちは走り込んでいるアラゴン、アラゴン、カタロニアと続くスペイン3連戦です。ロカテッリの破竹の連勝街道は続くのでしょうか?
昨年は全12戦中10戦でヤマハが優勝。ヤマハYZF−R6と共に7勝をあげたチャンピオンチーム「Evan Bros. World SSP Team」のパッケージは最高のレベルにあり、今季は特にアンドレア・ロカテッリの1台に集中している状態ですから、その勢いは続いて当然と言えます。
ランキング2位で追いかけるのもこれまたヤマハ。フランスの人気チーム「GMT94」から参戦するジュール・クルーゼルが5戦中4戦で2位表彰台を獲得していますが、首位のロカテッリとは35点もの差が開き、これ以上差がつくと自力での逆転は厳しい状況になってきます。
ランキング3位はチャンピオン経験者のルーカス・マヒアス(カワサキ)で、第3戦ポルトガルでは2位表彰台も獲得しました。ヤマハ優位の中、カワサキZX−6Rで奮闘するマヒアスの走りはやはり感情移入して見てしまいますね。
そう、「スーパースポーツ世界選手権」は市販車ベースのレースであるがためにベースモデルの素性というのがレースでも性能差として表れてきます。
そんな中、昨年の王者ランディ・クルメナッハーが今季はイタリアの「MVアグスタ」に加入してヤマハに一矢報いるはずだったのですが、。開幕戦・フィリップアイランドではMVアグスタのチームがエンジン規定の違反を犯して失格に。なんとチャンピオンライダーが選んだ万全の体制から一転、クルメナッハーは7月にMVアグスタとの契約を解消しました。
MVアグスタF3 675はラファエル・デローサがポルトガルで3位表彰台を獲得するなどポテンシャルとしては悪くないので、クルメナッハーが走っていればとは思いますが、こういう状況もある意味アンドレア・ロカテッリ(ヤマハ)に風が吹いている要因です。
以前は600ccスポーツバイクに力を入れるメーカーも多かったのですが、近年はニューモデルがなかなか出てこない状況が続いていましたが、先日、なんとホンダがCBR600RRのニューモデル発売を発表。ホンダは600ccスポーツにはもう力を入れないだろうと誰もが思っていただけに驚きましたね。
なるほど、と思った人も多いはず。今季、ホンダに移籍したのが大久保光です。実際にはホンダに戻ってきたという感じですが、通常で考えれば超クラシックモデルになっていて戦闘力が厳しいホンダのチームに移籍するというのはなかなか考えにくいことなのですが、今後ニューモデルの投入があれば、それはヤマハユーザーに対するアドバンテージにもなりますから、これは納得です。
大久保は第2戦の転倒で第3戦ポルトガルを欠場。今回の第4戦・アラゴンからの復帰を目指して療養中です。2週連続で同じサーキットでの戦いとなるだけに、まずはアラゴンでポジティブな要素を掴んで、後半戦も力強い走りを見せて欲しいと思います。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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