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世界の猛者たちが集う「FIMスーパーバイク世界選手権」は大西洋を渡り、アメリカ大陸へ。第9戦、アメリカラウンドは急降下のコークスクリューを持つ名コース、ラグナセカでの戦いです。「J SPORTS」では7月12日(金)〜14日(日)に開催される第9戦の模様を7月15日(月)にオンエアします。
カワサキの逆襲が止まりません!前戦のイギリス・ドニントンパークでのレースは、このコースをそれほど得意とはしていなかったジョナサン・レイ(カワサキ)がなんと3連勝。レース1、スプリント、レース2の3つ共にレイが制し、さらにレオン・ハスラム(カワサキ)、トプラック・ラズガットリオーグル(カワサキ)のどちらかが表彰台に上がるというカワサキの大活躍ぶり。カワサキファンは2レース続けて大興奮の状況となりました。
今シーズンはMotoGPから転向してきたアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)の独走でシーズンの行方は決まったかに思えましたが、新車ということで優遇されていた印象のドゥカティ・パニガーレV4R。しかしながら、ついにドニントンパークのレースで土がつき、1勝もできないまま、レースウィークを終えることになりました。性能調整が見事にカワサキに風を吹かせたとも言えますが、ここにきて、ようやくコンディションはイコールになったと言えるのかもしれません。
やはりスーパーバイク世界選手権はライダーの勝負。市販車ベースのマシンのポテンシャルを目一杯使い切りながらも、タイヤマネージメントも含めた大人な走りができるライダーが求められるわけですが、ここはある意味、経験も含めた色んな要素が絡んでくる部分でしょう。いくらMotoGPライダーとはいえ、バウティスタのようにルーキーが勝ち続けるというケースはあまりなく、しかも4年連続王者のジョナサン・レイ(カワサキ)が全く歯が立たないというのもおかしな状況でした。
性能調整でポテンシャルが均衡化された今、ようやくジョナサン・レイ(カワサキ)の本領が発揮され、本来の勢力図が見えてきました。ドニントンパークでの3連勝でレイは7勝をマークし、なんとランキング首位に浮上。アルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)の15勝の半分以下ですが、レイのワーストリザルトは5位で、リタイアは一度も無し。一方でバウティスタは2度のノーポイントレースを記録しており、この取りこぼしがジワジワどころか一気にレイの逆転を許す要因となりました。
昨シーズンもリタイアしたレースは1回だけというジョナサン・レイ(カワサキ)。チャンピオンを4年連続で獲得した過去4シーズンのトータルリタイア回数も僅か6回だけという堅実さで、5位より下の順位でフィニッシュしたレースはリタイアを除いてゼロなのです。2レース制で開催されてきたスーパーバイク世界選手権で勝てるレースは独走し、転倒のリスクの高い展開なら着実に表彰台フィニッシュをするという戦い方を続けてきました。
やはりこの戦い方がレース数が多いスーパーバイク世界選手権を制するための正攻法なのでしょう。3レース制になり、日曜日朝のスプリントレースにも約半分のポイントが付くので、今季はフィニッシュすることの重要性が増しています。それを熟知しているジョナサン・レイ(カワサキ)はバウティスタに対して全く手が出せないレースでも、確実に2位を取り続けてきたことでランキング首位に浮上できたのです。
さて、そんな二人の一騎打ちとなりそうな後半戦ですが、ターニングポイントとなるのが今回のラグナセカ。昨年もジョナサン・レイ(カワサキ)は2連勝を飾っていますし、今の勢いでいけば彼のパーフェクトウィークも可能性が高いでしょう。ここで3連勝すれば、現在24点も開いている差を少なくとも37点に広げることができます。
一方でアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)はラグナセカは2012年以来7年ぶりの走行となり、MotoGPクラスで彼が最も成績が良かったランキング5位を記録した2012年でさえ8位フィニッシュ止まり。2010年、11年に関してはリタイアに終わっている、あまり相性が良いとは言えないサーキットなのです。ここでリタイアをしてしまうとバウティスタはレイに大きな差をつけられてしまいますから、着実に上位フィニッシュすることがサマーブレイク明けに形勢逆転するための必須条件となります。まさにチャンピオン争いの行方を左右する1戦と言ってよいでしょう。
ランキング3位にはミサノのフリー走行中に転倒し、ミサノのレースを欠場したマイケル・ファンデルマーク(ヤマハ)がレイから170点差で続いています。逆転はかなり現実的ではない条件にいますが、ファンデルマークは鈴鹿8耐への出場を目指すために即座に負傷した手首の手術を実行し、なんとドニントンパークのレースに出場。全てのレースを8位でフィニッシュし、最低限取っておくべきポイントを加算しました。
ファンデルマークは鈴鹿8耐への出場も問題なさそうな雲行きで、ラグナセカでも怪我を悪化させないように配慮しながら、きっちりとポイントを取りに来ることになるでしょう。ただ、ランキング4位のチームメイト、アレックス・ローズ(ヤマハ)が14点差に迫っています。
文:辻野ヒロシ
月末に鈴鹿8耐を控えるジョナサン・レイ(カワサキ)、レオン・ハスラム(カワサキ)、トプラック・ラズガットリオーグル(カワサキ)、マイケル・ファンデルマーク(ヤマハ)、アレックス・ローズ(ヤマハ)、清成龍一(ホンダ)は8耐テストをスキップし、スーパーバイク世界選手権に集中するという形になりましたが、彼らの8耐に向けたコンディションを見るという意味でも今回のラグナセカは興味深い戦いになりそうです。
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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