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【スーパーフォーミュラ第2戦・オートポリス / プレビュー】開幕に続く波乱に?AP未経験者の可能性にも注目
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ今季からニューマシンとなるSF19を導入した「全日本スーパーフォーミュラ選手権」は九州へ。第2戦は熱いレースファンが多い大分県・オートポリスでの開催です。J SPORTSでは5月18日(土)〜19日(日)に開催される予選、決勝の模様を生中継。昨年は天候の急変により決勝レースが中止となってしまったオートポリスだけに、今年はドライコンディションでお客さんが満足するレースが展開されることを期待したいですね。
それにしても、開幕戦・鈴鹿は近年稀に見る大荒れのレースになりました。新車導入の開幕戦というのは色々な事件が起こるのが常ですが、予想以上でした。まさか4回もセーフティカーが出される事態になるとは。こうなると裏を付く作戦を取ったチームも一瞬の判断、その時の運・不運でリザルトが左右されることになり、まさに明暗分かれたレースになりました。
しかし、そんな中で優勝を争ったのが、歴史に残る大激戦になった2018年・最終戦を盛り上げた山本尚貴(今季Docomo DANDELIONに移籍)、ニック・キャシディ(今季VANTELIN TEAM TOM’Sに移籍)、そして山下健太(KONDO RACINGに残留しエース格に)の3人でした。
優勝したニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S/トヨタ)は予選12番手からの大逆転優勝。2位の山本尚貴(Docomo DANDELION/ホンダ)は予選3位から優勝を争える位置を常にキープしながらの2位。そして山下健太(KONDO RACING)は予選6番手から3位表彰台を掴みました。フロントローを独占した「NAKAJIMA RACING/ホンダ」の牧野任祐、アレックス・パロウのルーキー2人が相次いでトラブルにより戦列を離れてしまうという波乱はあったにせよ。表彰台をもぎ取った3人の強さは今の「スーパーフォーミュラ」の本当の勢力図を表しているような気がします。
予選は非常にコンペティティブで、エンジニアリング面での差がスタート順位に大きく影響するという接戦ですし、スーパーフォーミュラはレース数が7戦しかないシリーズのため、優勝が狙えなくともしっかり着実に上位フィニッシュを続けてポイントを積算していくことがチャンピオンへの可能性を広げていきます。そういう意味では今季もシリーズの核となっていくであろう3人が上位に入ったことで、ライバル達はさらなる速さで圧倒していかないといけない状況に追い込まれたとも言えます。
そんな中でルーキーの中で印象的な走りを見せたのが坪井翔(JMS P.MU CERUMO INGING/トヨタ)です。予選ではQ1のアタック中に第1コーナーでクラッシュを喫し、予選不通過となりながらも18番手から怒涛の追い上げを披露し、最終的には5位フィニッシュを果たしました。坪井のチームメイトでチャンピオン経験者の石浦宏明(JMS P.MU CERUMO INGING/トヨタ)が新車SF19に予想外に苦しむ中、坪井は自らが犯してしまった大きなミスを挽回する走りを見せました。石浦はトラブルに泣く結果になってしまいましたが、チャンピオンチームである「CERUMO INGING」としてはポジティブな方向性が見え始めているとのことで、第2戦オートポリス以降は要注目でしょう。
そして、戦略面でピットインするタイミングを失った小林可夢偉(KCMG/トヨタ)もレースペースの速さでは非常に印象的でした。最終ラップのピットイン、タイヤ交換で9位にドロップし、ポイント獲得はなりませんでしたが、やはり今季も目が離せないドライバーと言えるでしょう。
開幕戦はデータ的にはある程度揃った中で相次ぐセーフティカーがその運命を分ける形になりましたが、今回のオートポリスは合同テストなしのブッツケ本番ですから、さらに荒れるレース展開になる可能性もあります。まず何と言ってもオートポリスはコーナリングスピードが高く、アップダウンも激しいハイスピードコースであること。ドライバーの身体にかかる負担が大きく、ミスが誘発されやすいとも言えます。
そんな中で今季はルーキーが多く、外国人ドライバーを中心にオートポリス未経験の選手が多いのも特徴です。昨年からスポットで参戦していた福住仁嶺(Docomo DANDELION/ホンダ)もオートポリス戦は阪口晴南が乗ったのでスーパーフォーミュラでの経験はなし。それだけでなく、福住は下位カテゴリーでも経験がないということで外国人ルーキー達と環境としては同じです。
ルーキーの中で経験があるのはSUPER GT(GT300)とF3、FIA−F4で経験がある坪井翔(JMS P.MU CERUMO INGING/トヨタ)と全日本F3に2017年に参戦したアレックス・パロウ(NAKAJIMA RACING/ホンダ)、2015年のFIA−F4に参戦した牧野任祐(NAKAJIMA RACING/ホンダ)の3人。その中では坪井の経験値が最も多いことになります。
経験のある無しに関わらず、オートポリスでのスーパーフォーミュラ・ルーキーたちの戦いぶりはレーシングドライバーとしての将来性を感じるという意味では一つの指標になると言えます。というのも、2017年にはオートポリスでピエール・ガスリーが優勝、2位にフェリックス・ローゼンクビストが入り、ルーキーの1−2が記録されています。ガスリーはF1へ、ローゼンクビストはインディカーへ(先日優勝しました)というルーキードライバーの活躍を見ても、今回のオートポリスは一気に名声を轟かせる選手が居るのか、居ないのかを知る重要な1戦になりそうです。
開幕戦で僅か1点獲得(8位入賞)に留まったダニエル・ティクトゥム(TEAM無限/ホンダ)はスーパーライセンス獲得に向けては大量得点ゲットのミッションに待った無しの状況に陥りかねませんから、どんなパフォーマンスを見せてくれるか非常に興味深いところですね。
SF14時代からのウイナーを見ると、14年はアンドレ・ロッテラー、15年は中嶋一貴、17年はピエール・ガスリー、18年は平川亮がポールポジションという状況。TOM’Sが2勝しているところを見ると、ランキング首位のニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S/トヨタ)はオートポリスで軸になってくる選手と言えるでしょう。キャシディがシーズンの流れを掌握することになるのでしょうか。
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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