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間もなく2019年のSUPER GTが幕を開ける。新元号が発表になり、平成最後のレースの舞台は毎年恒例の岡山国際サーキットだ。昨年はRAYBRIG NSX-GTの山本尚貴/ジェンソン・バトン組がチャンピオンに輝き、特にバトンは元F1チャンピオンではあるものの、SUPER GT特有のレーススタイルに戸惑って、苦戦を強いられるのではないかという予想を覆してみせた。それ以上のドラマが果たして起こるか否かはともかく、引き続き話題豊富なシーズンであることを望みたい。
大薙刀をふるったニッサン陣営、カルソニックIMPUL GT-Rがテスト最速
開幕戦を予想する前に、今年のドライバーラインアップについて触れることとしよう。まずはGT500。興味深いのは、昨年のランキング上位陣は5位まで体制不動ということ。RAYBRIG NSX-GTの山本/バトン組、KeePer TOM’S LC500の平川亮/ニック・キャシディ組、ARTA NSX-GTの野尻智紀/伊沢拓也組、ZENT CERUMO LC500の立川祐路/石浦宏明組、そしてau TOM’S LC500の中嶋一貴/関口雄飛組までがそれに当たるが、今のパッケージにチームが満足しているということを表してもいる。
しかし、それ以下は……。多くは語らなくてもいいだろう。ホンダ陣営で前出の2チームを除けば、不動のままなのはMOTUL MUGEN NSX-GTの武藤英紀/中嶋大祐組だけで、KEIHIN NSX-GTは塚越広大のパートナーがベルトラン・バゲットに改められている。Modulo Epson NSX-GTに関しては総入れ替え。インド出身のナレイン・カーティケヤンがスーパーフォーミュラから移行し、SUPER GTに初参戦。パートナーとして起用されるのは昨年までGP3を戦っていた牧野任祐だ。牧野もフル参戦は初めてながら、強烈な2016年の印象もまだ残っているだろうから、細かい説明は不要のはず。
一方、レクサス陣営では残る3チームすべてに入れ替えがある。まずDENSO KOBELCO SARD LC500のヘイキ・コバライネンのパートナーが、GT300から初昇格の中山雄一に。さらに昨年の全日本F3チャンピオンでもある坪井翔も、GT300からの昇格が許され、国本雄資とともにWedsSport ADVAN LC500をドライブすることとなった。そしてWAKO’S 4CR LC500には山下健太が移籍し、大嶋和也と新たなコンビを組む。
ニッサン陣営で体制不動なのは、MOTUL AUTECH GT-Rの松田次生/ロニー・クインタレッリ組だけで、残る3台には大改革という印象も……。まず本山哲が一線を退き、ニッサン陣営のエクゼクティブアドバイザーに就任。その本山が走らせていた、CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rをドライブするのは、平手晃平とフレデリック・マコヴィッキィのふたり。ワンクッション置く形とはなったが、元トヨタ陣営のドライバーと元ホンダ陣営のドライバーである。そして、カルソニックIMPUL GT-Rは佐々木大樹が残留、新たなパートナーとして選ばれたのはジェームス・ロシターで、彼もまた昨年までトヨタ陣営に属したドライバーだ。リアライズコーポレーションADVAN GT-R(KONDO RACING)は高星明誠が残留し、ヤン・マーデンボローと新たに組むこととなった。
ここ数年、ドライバーのシャッフルはごく普通に行われてきたが、他陣営のドライバーを引き入れるあたり、よほど昨年の悪しき記憶を払拭したいのだろう。だが、ことカルソニックINPUL GT-Rに関しては、さっそく効果を発揮している印象がある。3月16?17日に岡山で行われた公式テストではトップタイムをマークしているからだ。全体的にテストではニッサン陣営が好調で、いい意味での化学変化が起こったということか。
昨年優勝のホンダ陣営が奮わず……
公式テストで2番手につけたのはWAKO’S 4CR LC500、次いでau TOM’S LC500、ZENT CERUMO LC500と、レクサス陣営も悪くない。その一方で、明らかに不調と言わざるを得ないのがホンダ陣営である。最上位はARTA NSX-GTの8番手で、残る4台は揃って下位に沈んでいる。昨年もKEIHIN NSX-GTが優勝を飾っているコースである、相性が悪いはずがないのだが……。
まぁ、テストはあくまでもテストであって、必ずしも速さを極めず、決勝での安定感を求めているケースも多々あることだ。さらにテストが行われた2日間は天候が不順な上に気温が低く、本戦に向けたセットアップがしにくかったという背景もある。それにしても。
一説にはハンデ対策と言われ、ミッドシップであるNSX-GTにハンデを課すべきか、との議論真っ只中に本来の速さを見せてしまえば、元も子もないと。その一方で、オールシーズン安定したエンジンとするべく、特性を大幅に改めたという技術者の声もあるとはいえ。
そうは言えども、カルソニックINPUL GT-Rが有利なのは間違いない。ただ、それ以外は予測困難と、こと開幕戦だけに言わざるを得ない。
小暮、JP、松浦が今年はGT300へ。ニューマシンは我慢が必要?
今年のGT500には、新たなシートを得たドライバーが多かったのは前述のとおり。ということは失ったドライバーもいたわけで……。中でも衝撃的だったのは、長年ホンダ陣営でさまざまな話題を提供してくれた、小暮卓史の名がラインアップから消えていたことだった。その小暮が、なんとGT300へ! マネパランボルギーニGT3を、元嶋佑弥とともにドライブすることになったのだ。テストでは中位に留まったものの、GT500車両とGT300車両では特性が異なり、まだ合わせこみが十分でなかったからと予想される。まさに慣れの問題だが、そのあたり完璧にクリアすれば、かなり面白い存在になりそうだ。
GT500からの移行ドライバーは、その他にもJ.P.デ・オリベイラと松浦孝亮の名が挙げられる。それぞれドライブするのはD’station Vantage GT3とUPGARAGE NSX GT3で、ペアを組むのはオリベイラが藤井誠暢、松浦が小林崇志となる。いずれもマシンを入れ替えての参戦となるだけに、テストでは様子見の感はあったが、本番では要チェックとなるだろう。
GT300には、マシン的にも新勢力が。藤井とオリベイラがドライブするアストンマーティン ヴァンテージAMR GT3、荒聖治とアレックス・パロウのドライブするマクラーレン720S GT3は、いずれも4?のV8ツインターボエンジンを搭載するだけに、さぞかし直線番長ぶりを発揮してくれるものと予想されたが、テスト直前のBoP変更でブースト圧が下げられてしまう。
一方、JAF-GTとしてニューマシンは、2台のトヨタプリウスPHVだ。嵯峨宏紀/中山友貴組、永井宏明/織戸学組のTOYOTA GR SPORTS PRIUS PHV apr GTの特徴は、従来はミッドシップだったのに対し、FR化されていることだ。ちなみに従来どおり、嵯峨組はハイブリッドシステムを搭載するが、永井組は非搭載。まだ開発途上ではあるだけに、いきなりの活躍は難しそうだが、仕上がってきた時の速さに期待がかかる。
公式テストトップはK-tunes RC F GT3が。それでもマザーシャシー有利か?
公式テストでGT300最速タイムを記録したのは、K-tunes RC F GT3だった。ベテラン新田守男と、昨年まで全日本F3を戦っていた阪口晴南が新コンビを結成して挑み、チームの本拠が地元岡山であるだけに、力の入れようは半端でなかった。速さに関してルーキーの阪口に不安はないという新田であるが、SUPER GTならではの洗礼に、どう対処できるかがカギとなりそうだ。GT500にどう抜かれるか、そして今まで経験したことのないドライバー交代。この辺りがスムーズにできるようなら、いきなりの快進撃も決して夢ではない。
2番手タイムを記したのは、松井孝允/佐藤公哉組のHOPPY 86 MC。岡山のコースとマザーシャシー(MC)が相性抜群なのは、過去の結果からも明らか。5番手に高橋一穂/加藤寛規組のシンティアム・アップル・ロータスが、7番手に脇阪薫一/吉田広樹組の埼玉トヨペットGBマークX MCがつけていたことが、その印象に拍車をかける。坂口夏月/平木湧也組のADVICSマッハ車検MC86を含め、上位独占の期待がかかる。
その間に割って入ったのは、3番手が谷口信輝/片岡龍也組のグッドスマイル初音ミクAMG、4番手が井口卓人/山内英輝組のSUBARU BRZ R&D SPORTで、この2台も岡山との相性は良し。ディフェンディングチャンピオンである、LEON PYRAMID AMGはドイツ・ニュルブルクリンクへのレース参戦で蒲生尚弥が走行せず、黒澤治樹だけの走行であったため、テストでは下位に甘んじたが、谷口組同様、開幕戦での活躍が期待できそうだ。FIA-GT3の中ではメルセデスAMGが岡山のコースを最も得意としているのが、その根拠である。
こうして、ざっと挙げただけでも、どのチームにも優勝の可能性がありそうな予感。GT300は、これまでになく大混戦になりそうだ……。
秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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