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モーター スポーツ コラム 2019年2月12日

2019年WRC 第2戦ラリー・スウェーデン “お馴染みの雪上グランプリ”

Mr.フクイのものしり長者 de WRC ! by 福井 敏雄
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モンテで開幕したシリーズは僅かな休みで第2戦スウェーデンを迎えます。
開幕期は常にファンの高い注目を集めます。各チームの体制は? レギュレーション対応は? 特にドライバー変更後の下馬評は? それらがモンテやスウェーデンそれにメキシコまで続きます。最初の3戦は強い個性を持っているからです。VW撤退後ドライバー移籍などでシリーズポイント争いが平準化され、かえって面白くなりました。昨年は常勝オジェが中盤不調、3位まで落ちましたがその後、最終戦でヌーヴィルとの激戦を制しチャンピオン獲得など例年になく最後まで楽しませてくれました。タナックも大健闘でしたが車両トラブルで運に恵まれず残念な3位でしたが今一番速いドライバーだと思います。

そして、モンテはご存じのとおりオジェが2.2秒差でヌーヴィルを振り切りましたが、タナックのタイヤ交換後の激走には目を見張るものがありました。注目の9回チャンピオンのローブがヒュンダイで出場。まずまずの出来で4位、トヨタのミークは完走狙いで一応成功、ワークスで3台完走はトヨタだけというのは、この先メーカーチャンピオン防衛のためには必要なことです。オジェはシトロエンに移っても大成功。シトロエンは2台目以下が相変わらず問題です。フォードはスターが抜けて苦しい展開。エバンスとスニネンが時々以外に速いタイムを出す楽しみはあるものの体制としては力不足です。

このような状況でスウェーデンを迎えます。1950年初回開催の名門ラリーで当初は真夏の夏至のシーズンでしたが、1965年よりウィンターイベントになりました。スウェーデンは古くからボルボやサーブ等のメーカーがあり、モータースポーツ先進国としてフィンランドと共に多くの名ドライバーを輩出しています。WRC唯一の雪上イベントなので過去の記録を見るとフィンランドラリーよりも地元ドライバー以外の優勝者が少ないのです。ここで勝てた地元以外のドライバーはオジェ、ローブ、ヌーヴィルの3名だけです。毎度書いていますが、最大の特徴は硬い凍土の上の圧雪コース。除雪でできたスノーバンクをこすりながら約400本のスパイクを打った幅狭タイヤでグリップを得てSSの平均速度100キロ超えの高速走行、そしてマクレー選手の名前のついたコリンズ・クレストというジャンプ・ポイントが見どころです。気温が低く、雪も適当量あることが理想的条件ですが、ここ20年位頻繁に起きる地球温暖化により理想的な条件を楽しむことができないことがあります。タイヤは一種類しかないのでスパイクの本数調整はできるとしても、雪不足による土の一部露出、これによるスパイク落ちなど神経を使います。

主催者にとって一番の心配事は気象条件です。私が現役時代の1990年は異常気象のため雪の下の凍土が溶けてラリー直前に開催地域が大パニックになった時がありました。車はもちろん人も歩けなくなるほど凍土の表面が軟弱になり、生活物資が途絶えるほど村が孤立状態となりラリーどころではなくなったのです。災害レベルです。
主催者はやむなくラリー中止を宣言しその状況をスウェーデン自動車クラブの会長がパリで開催中のFIAラリー委員会出向いてビデオと共に説明されました。
ラリー委員会のメンバーは大半が他のWRC開催国の代表と利害関係者ですが、予定されたイベントを中止することはそれが天候の影響であっても如何に不名誉なことであり、この先の開催権剥奪の理由になり得るのです。私もこの会議にメーカーグループ代表として出席しておりましたがスウェーデン代表は平身低頭、如何に災害レベルの“不可抗力”であったかを懸命に説明していました。ラリー開催権は大切なものであり、守ろうとする人と足を引っ張る人との葛藤となります。このようにして過去約25カ国で開催されたWRCを13-14戦に絞ることは実績の少ない国にとって易しいことではありません。今話題になっているラリージャパンの復活活動もその中の一つです。WRC日本開催のハードルはかなり高いと見ますが、何とか実現したいものです。

マーカス・グロンホルム

ところで、今回のイベントにはお楽しみがひとつあります。WRC通算30勝、世界チャンピオン2回、スウェーデンラリー5勝しているマーカス・グロンホルムがトヨタチームからゲスト参戦します。マーカスの最盛期はプジョー時代でしたが80年代後半はトヨタ・フィンランド販売店チームで活躍していました。

ラリーイベントはワークスのみの限定された参加台数ではなく、メーカー系列の販売店などがその財力と技術レベルに応じて、使用済みのワークスカーを整備して2次使用したり能力に応じて整備したりして会場を盛り上げます。トヨタの場合、私が現役の時代にはフィンランド、スウェーデン、ベルギーそれに英国の代理店が活発にラリー活動をしていました。それらの活動から若手のドライバーを輩出し次の時代に移っていくのです。ドライバーの人材開発はWRC参加メーカーの数に比例して底辺の部分が広くなります。現在のワークスチームに加えてもう2社―3社増えれば状況は全く異なるでしょう。
日本からもう一つ、それにドイツとイタリーから参加メーカーが加われば文字通り“世界”選手権となります。そして開催地にアジアとアフリカが加われば更に“世界”選手権です。このような希望を持ちながら冬の祭典をお楽しみください。

スウェーデンラリーはHQが置かれるカールシュタットでのスーパーSS(以前は湖の氷上レースでしたが暖冬の影響を受けこのところ競馬場で行われています。)で始まり、金曜日はノルウェーで、土・日はスウェーデン領内で行います。コースは昨年とほぼ同じ。金曜日の最終ステージはノルウー領からスタート、ゴールがスウェーデン領で文字通り2国間ラリーとなります。

概要は次の通りです。

 SS本数SS kmLiaison kmTotal km
L-1(2/14-15) 8 140.65 km 511.65 km 652.33 km
L-2(2/16) 8 126.55 km 484.54 km 611.09 km
L-3(2/17) 3 51.94 km 151.27 km 203.21 km
Total 19 319.17 km 1147.46 km 1466.63 km
福井 敏雄

福井 敏雄

1960年代から欧州トヨタの輸出部員としてブリュッセルに駐在。1968年、トヨタ初参戦となったモンテカルロからラリー活動をサポート。トヨタ・モータースポーツ部のラリー担当部長、TTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ)副社長を歴任し、1995年までのトヨタのWRC圧勝劇を実現させた。

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