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電気自動車のフォーミュラカーレース「FIAフォーミュラE選手権」はアフリカ大陸から大西洋を横断し、南アメリカ大陸へ。シーズン5(2018年~19年)の第3戦の舞台となるのは昨シーズンから開催されているチリの首都、サンティアゴです。1月26日(土)に行われる予選、決勝の模様を「J SPORTS」では生放送でお送りします。
サンティアゴでの開催は今回で2回目ですが、ジャン・エリック・ヴェルニュ(DSテチータ)が優勝した海沿いの市街地サーキットとは異なるコースで開催されます。今回はサンティアゴ市の中心にある大きな公園を使った、14のコーナーを持つ約2.4kmのコースが舞台です。公園の外周路を使った大きな弧を描く高速コーナーが特徴のレイアウトで、ブレーキングゾーンでの激しいバトルが見られそうで楽しみです。
というわけで、マシンがニューマシン「Gen2」に変わっただけでなく、昨シーズンと全く違うコース特性となるため、過去のデータからは戦況が読み取れない、いわばぶっつけ本番の戦いとなるのが今回の特徴です。予想が難しいですね。
しかし、ここまで「Gen2」を使った2戦で、何となく勢力図が見えてきた印象です。速さを持っているのは開幕戦・ディルイーヤを制した「BMW iアンドレッティレーシング」です。第2戦・マラケシュ(モロッコ)でも他を圧倒する速さを見せつけ、序盤からアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(BMW)とアレクサンダー・シムス(BMW)の2人がレースをリード。3位以下も接戦になるシーンこそありましたが、安定した速さはマラケシュのレースを通じて証明されました。
ところがどっこい、レースでは大きな波乱が待っていました。3番手以降を引き離しにかかった残り10分のタイミングで2位のシムスが1位のダ・コスタにアタック。サイドバイサイドに持ち込みますが2台ともにブレーキをロックアップして接触。まさかの同士討ちとなり、首位のダ・コスタはウォールに真っ直ぐ突っ込んでしまいリタイアに。なんと開幕戦・ディルイーヤを制したアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(BMW)がノーポイントに終わるということになりました。非常に勿体無い取りこぼしとなり、これはダ・コスタにとって後々大きく響いてくることになるでしょう。
というのも、今季はこれまで以上の接近戦が40分に渡って展開され、アタックモードによるパワーアップをうまく使って差を詰め、リスクを負わずにオーバーテイクを繰り返しながら、戦略的に上位完走を狙うというレースになっているからです。セーフティカーが介入して差が詰まる可能性もありますから、予選で上位に入り、スタートの混乱をうまくくぐりぬけて、あとはライバルと駆け引きをしながら勝負の時を待つというのが吉。上位勢はポイントの取りこぼしをせずにシーズンを進めていくことに重点を置いているように見えます。だからこそ、「BMW iアンドレッティレーシング」の同士討ちは絶対にやってはいけないことでした。
漁夫の利、ごっつあんですとばかりに優勝を飾ったのがジェローム・ダンブロージオ(マヒンドラ)。彼はまさにじっくりとレース展開を読む、そんなレースを展開していました。レースが折り返しを迎えるタイミングまでアタックモードを使わずに上位グループで駆け引きをしていましたからね。まさにしてやったりの作戦勝ち。これでジェローム・ダンブロージオ(マヒンドラ)がシリーズランキング首位に躍り出ました。
そして、ダンブロージオと同じように巧みにレースを戦ったのが「ヴァージン・レーシング/アウディ」のロビン・フラインスとサム・バード。フラインスが2位、バードが3位でフィニッシュしました。ヴァージンは昨年までDSヴァージンとしてシトロエンのパワートレインを使っていましたが、今季からはアウディのパワートレインにスイッチ。開幕戦・ディルイーヤが2台ともノーポイントに終わりましたが、サム・バード(ヴァージン)が予選でもポールポジションを獲得するなどパッケージの素性の良さは実証済み。見事なチームワークでこれからポイントを重ねていきそうです。
第2戦・マラケシュでこれまた勿体無いことをしたのがチャンピオンのジャン・エリック・ヴェルニュ(DSテチータ)。スタート直後にインに無理やり飛び込んで接触からスピン。最後尾までドロップしてしまいました。しかし、そこからの怒涛の追い上げが凄かった。次々にライバルをオーバーテイクし、どんどんトップ集団に近づき、ポイント圏内へ。アンドレ・ロッテラー(DSテチータ)と共に5位、6位でフィニッシュし、ジャン・エリック・ヴェルニュ(DSテチータ)は何とか同点のランキング2位につけました。DSテチータの速さと実力は本物ですね。
こう見ていくと、上位争いをするチームが大体固まってきた印象です。「BMW iアンドレッティレーシング」「マヒンドラ・レーシング」「ヴァージン・レーシング/アウディ」そして「DSテチータ」の4チームがトータル的には良い仕上がりを見せています。自動車メーカーワークスの「アウディ・スポーツ」「日産e.dams」「ジャガーレーシング」「HWA(メルセデス)」はちょっと波に乗れていない状況になっています。
さて、今回の第3戦も新コースですから波乱含みの要素を持ったレースであることは間違いないですから、序盤の2戦でうまくまとめられなかった自動車メーカーのワークス勢が逆襲の狼煙をあげることになるのでしょうか。そうなれば、「フォーミュラE」シーズン5は益々面白くなっていくでしょう。
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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