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電気自動車の「FIAフォーミュラE選手権」はいよいよ新世代マシン「Gen2」を使用するシーズン5(2018年~19年)が始まります。開幕戦の舞台は初開催の中東サウジアラビア。年をまたいで2019年の7月まで全13戦で開催されます。サウジアラビアでの新時代オープニングレースは現地時間の12月15日(土)に予選、決勝レースが開催。「J SPORTS」では今年も生放送中心にお送りします。
さて、話題豊富な「フォーミュラE」の新シーズン。何からお話ししましょうかというところですが、やはり今季から新世代のマシン「Gen2(ジェンツー)」に車体が変更され、ペースやラップタイムが向上し、レースフォーマットも変更されることが今シーズンの大きな変更点と言えるので、まずはここから行きましょう。
新世代マシン「Gen2」はシーズン4まで使用されていた第一世代のマシンに比べて、より近未来的なイメージを抱かせるデザインになっています。「フォーミュラE」では全車が新世代の「Gen2」を使用するワンメイクシャシーのレースになっています。安全性を考慮してタイヤを覆うカウルが装着され、先代車に比べてドラッグ(空気抵抗)は大きくなった印象ですが、最高出力は予選時に200kwから250kwにパワーアップし、最高速度もこれまでの時速225kmから280kmへと大幅アップ。10月に行われたバレンシア(常設サーキット)でのテスト走行ではラップタイムが先代モデルよりも4秒ほど速くなっています。
これまではスリムで軽く、どちらかと言うと入門フォーミュラカーチックなマシンだったせいか、どうしても映像的にはラジコンっぽさが否めませんでしたが、ダウンフォースも向上し、駆動系などが洗練されたニューマシンの登場は「フォーミュラE」のレベルを一段も二段も上昇させることになるでしょう。
さらに、先代モデルではピットでのマシン乗り換えが名物でしたが、新導入の「Gen2」ではバッテリーからモーターへの供給可能エネルギー量が大幅に向上し、乗り換えがなくなります。レースフォーマットは「45分+1周」というスプリントレースになることから、速さとドライバー&チームによるエネルギーマネージメント能力がさらに要求されることに。最もエネルギー量が少ない状態で走ったドライバー(決勝上位10台中)にボーナスポイントが加えられることにもなり、ファステストラップのボーナスポイントは廃止されました。
さらに「マリオカートモード」とも呼ばれる「アタックモード」が登場。出力が一定期間25kw向上するシステムで、このモードがレースにどう影響するかは蓋を開けてからのお楽しみという新シーズンならではの要素も楽しみです。
そして、今季はドライバーラインナップも大幅に豪華ラインナップとなりました。というのも近年の傾向として電気自動車に注力する自動車メーカーが「Gen2」導入のシーズン5から力を入れてプロモーションを行い、ワークス参戦あるいはその準備を進めているからです。これまで「アウディ」「ジャガー」がワークス参戦してきましたが、今季からは「BMW」がワークス参戦。そして、「メルセデス」はワークスは名乗っていないもののHWAという実質的なワークスチームの形態で参戦。そして、「ルノー」からバッジを変えるような形で日本から「ニッサン」が参戦します。
自動車メーカーの積極的な関与と新型マシンによるペースアップから、当然求められるのはモータースポーツのトップカテゴリーで実績を残してきた実力派ドライバーの実力です。資金力だけでレースを続けてきたF1予備軍的なドライバーや闘争心を失ったベテランには出る幕がないと言った状況になってきています。
豪華なドライバーラインナップで注目は元F1ウイナーのフェリペ・マッサ(ヴェンチュリ)でしょう。つい最近までF1で走った大ベテランの存在感は「フォーミュラE」の格式をさらに高めます。そして、日本でもおなじみのストフェル・バンドーン(HWA)がF1から転向。第2戦からはパスカル・ウェーレイン(マヒンドラ)も参戦するなど、セバスチャン・ブエミ(日産)、ジャン・エリック・ヴェルニュ(テチータ)、ルーカス・ディグラッシ(アウディ)、ネルソン・ピケJr.(ジャガー)などの継続参戦組に加わる形で、元F1という肩書きを持つドライバーが増加。非常に注目度と関心が高まるシーズンと言えますね。
他にも、WECチャンピオンのアンドレ・ロッテラー(テチータ)、マカオF3ウイナーのエドワルド・モルタラ(ヴェンチュリ)、WTCCチャンピオンのホセ・マリア・ロペス(GEOX・ドラゴン)、WECフェラーリワークスドライバーで昨シーズンのチャンピオンのサム・バード(ヴァージン)を含め、元F1ドライバーという肩書きにとらわれない実績の持ち主や「フォーミュラE」でその名を轟かせたドライバーが多数参戦し、今季は全11チーム22台で争います。
新型マシンの導入、レースフォーマットの新規定など構成要素の多くがリニューアルするシーズンになるので、正直いうと勢力図は未知数。1年目ということもあり、大なり小なりの混乱やそれに伴う変更なども生じて来ることでしょう。そういう意味では蓋を開けてみないと分からないシーズン5。電気自動車レースの最高峰「フォーミュラE」の新時代は今後のモータースポーツ史の1ページとしてしっかり見ておく必要があると言えるでしょう。日本からは「ニッサン」がセバスチャン・ブエミ、オリバー・ローランドのラインナップで参戦します。国内での関心も高まるであろう「フォーミュラE」に是非ご注目ください。
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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