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モーター スポーツ コラム 2018年4月11日

SUPER GT第1戦 レビュー

SUPER GT by 秦 直之
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今シーズンはホンダNSX-GTの年? フロントローを独占した予選

KEIHIN NSX-GT

今シーズンもSUPER GTは、岡山国際サーキットで幕を開けた。最初の走行となる土曜日の公式練習は前日までの雨が路面にわずかながらも残っていたり、2回の赤旗中断があったり、さらには終了間際ににわか雨に見舞われたりして、各車十分な走り込みができなかったという印象が強かった。ただでさえGT500は戦力拮抗で予想困難なシーズンとされていただけに、何か正解を得るまでには至らなかった。

続いて行われた予選も、開始直前に雨がポツリポツリと。Q1こそドライコンディションは保たれたが、Q2開始直前に雨は降り始め、いざ走行開始の頃にはとてもドライタイヤでは走行できない状態にまで変化してしまう。その雨をも味方につけて、ポールポジションを獲得したのは塚越広大/小暮卓史組のKEIHIN NSX-GT。野尻智紀/伊沢拓也組のARTA NSX-GTが続き、ホンダ勢がフロントローを独占する。
「Q1とQ2の間で天気が大きく変わってタイヤ選択がすごく重要だったんですが、短い時間でチームが素晴らしい判断をしてくれたのと、何より小暮さんが(Q2に)つなげてくれたので、ポールポジションが取れました。今年はシャシー、エンジンともにレベルアップしていて、公式テストからいい感触を得られていました」と語るのはQ2を担当した塚越。

GT300では平峰一貴/マルコ・マッペリ組のマネパランボルギーニGT3が、ポールポジションを獲得。日本ではほぼ無名にも等しいマッペリは、ランボルギーニのファクトリードライバー。雨の岡山を走るのはもちろん初めてであっても、ウラカンGT3での豊富な経験が活かされることとなった。Q1を担当した平峰は13番手でギリギリの通過だっただけに、「正直、ドライコンディションのままでは難しいな、と思っていたから恵みの雨になった」とマッペリ。2番手にはリチャード・ライアン/富田竜一郎組のHitotsuyama Audi R8 LMSがつけて、戦前の「JAF-GT有利説」は覆された格好だが、Q2でドライコンディションが保たれていたなら、果たして……。

スタートでしっかりトップを守ったKEIHIN NSX-GT

第1戦 GT500

ともあれ、それまでは気まぐれな天候に翻弄され続けていたが、日曜日の決勝レースに関しては最初から最後までドライコンディションが保たれた。今年からのスタート直前には、しっかり隊列を整えていることが義務づけられたが、今回はフォーメイションラップの開始時にグリッドで一旦停止する光景が。実はこれイレギュラーで、パレードラップ中にGT300にスピンした車両があったため、戻るのを待ったためである。
「しっかり(グリッドの)枠を通るよう心がけた」というKEIHIN NSX-GTの小暮は、規定どおりグリーンシグナルが点灯してから加速し始めたが、この流れは後続に少なからぬ混乱を来していた。従来であれば多少の加速も許されていたのだが、今年からの規定を小暮は律儀に守ったからなのだが……。意図せぬ小暮のトラップにはまってしまったのが、フォーラムエンジニアリングADVAN GT-RのJ.P.デ・オリベイラとMOTUL AUTECH GT-Rのロニー・クインタレッリで、1コーナーには小暮の背後で飛び込むも、のちにドライビングスルーが課せられてしまったのは、そのためである。

いずれにせよ、オリベイラとクインタレッリの逆転を許さず、なおかつこのふたりを盾にして早い段階から、小暮は後続を引き離すことに成功。GT300勢を最初に処理していく頃には、事実上の2番手であるWAKO’S 4CR LC500のフェリックス・ローゼンクヴィストに、もう6秒以上の差をつけていた。

苦戦を強いられていたバトン? のちに明らかになった真実

RAYBRIG NSX-GT

さて、今シーズン最大の話題を集めている、RAYBRIG NSX-GTを駆る、元F1チャンピオンのジェンソン・バトンは、予選6番手からスタートを切っていた。だが、ほとんど経験したことがないであろうローリングスタートや、GT300の処理に戸惑っている様子は明らかで、一時は9番手にまで後退。36周目にはピットに戻って、山本尚貴と早めの交代を行なっていた。ただし、タイヤは無交換! となれば、バトンは無理せず、しっかりタイヤマネージメントを行っていたことになる。

逆に序盤のうちに順位を上げていたのが、KeePer TOM’S LC500のニック・キャシディだ。予選は9番手でQ2進出さえ許されなかったものの、じわりじわりと来て16周目にはローゼンクヴィストを抜いて、事実上の3番手に。さらに22周目の1コーナーではオリベイラをパス。このあたりはさすが、昨年のチャンピオンだけはある。そして、オリベイラとクインタレッリが前述のとおり、ドライビングスルーを課せられたこともよって、26周目には正真正銘の2番手につけることとなった。

その頃、小暮とキャシディの間隔は4秒を切るまでに。30周目からは背後に迫り、36周目のヘアピンでインを刺すも、キャシディは前に出るまでには至らず。だが、38周目のヘアピンで軽く接触しながら、待望のトップに立つこととなった。41周目、KEIHIN NSX-GTがピットイン。塚越への交代と合わせ、行なった作業をわずか41秒で済ませたのに対し、45周目にピットに入ったKeePer TOM’S LC500は、平川亮をコースに送り出すのに46秒を要してしまう。

その間にストレートを駆け抜けていったのが塚越、さらに山本だった。前述のとおりRAYBRIG NSX-GTはタイヤ無交換で、ロスを最小限にしていたことが大きく功を奏したわけだ。一方、いったんは塚越と並んだ山本ながら、逆転するまでに至らなかったのが、最後になって影響を及ぼすことにも。

辛くも逃げ切りなったKEIHIN NSX-GTは、2010年以来の勝利に

KEIHIN REAL RACING

第1戦 GT500 表彰台

一方、再びトップに立ったKEIHIN NSX-GTは交代からしばらくは、また独走状態としていたものの、ゴール間際のペースが今ひとつ。あわやRAYBRIG NSX-GTの、そしてバトンの優勝かと思われたものの、辛くも塚越は逃げ切りに成功。KEIHIN NSX-GTは2010年以来となる、久々の優勝を飾ることとなった。ちなみに、フロントグリルにデブリを拾っていたが、塚越は気づいておらず、それはペースが上がらなかった理由ではなかったという。
「無線でも言われませんでしたし、気を使わせないよう配慮してくれたんでしょう、僕自身いつ刺さったのか分からなかったし。あとで思えばハンドリングに少し影響があったかな、というぐらい。どうやらクルマの仕上がりは100号車(RAYBRIG NSX-GT)の方が良かったようで、もっともっと僕らのクルマもポテンシャルを上げていく必要性は感じましたが、本当に久しぶりの優勝なんで、すごく嬉しいです。応援してくれる皆さんに、ようやく恩返しできました」と塚越。そして、小暮は「何が起こったのか、クルマの形状が変わったのを知った時は、僕はすごくびっくりしました(笑)。僕は1号車(KeePer TOM’S LC500)に抜かれてしまいましたが、ピットも頑張ってくれましたし、塚越選手が100号車を抜いてくれたのが何より大きかったですね。優勝できたことが心から嬉しいです」と、チラリ本音を語っていた。

3位はKeePer TOM’S LC500が獲得。予選8番手から追い上げて表彰台を獲得し、連覇に向けてはまずまずのスタートを切ったと言えるだろう。

目まぐるしくトップが入れ替わった序盤のGT300

第1戦 GT300

GT300はスタート前のグリッドで、ポールポジションのマネパランボルギーニGT3に不穏な動きが。なにやらメカニックたちが作業をしていたからだ。のちに明らかになるが、これは電気系トラブルに見舞われていたため。これはしかし解消され、平峰はトップでレースを開始するも、トップをキープできたのは8周目まで。「タイヤのマッチングが今ひとつ」と平峰は語り、その後徐々に順位を落としてしまう。代わってトップに立ったのはGAINER TANAX GT-Rの安田裕信だったが、やはりトップを守りきれず。17周目からはHitotsuyama Audi R8 LMSのライアンがトップに浮上。いったんは後続との差を4秒近くまで広げていたが、そこに迫って来たのがTOYOTA PRIUS apr GTの嵯峨宏紀だった。なかなか抜けずにいたが、それはピットで見守る平手晃平に見せ場を渡そうとしているかのように見えた。

ところがTOYOTA PRIUS apr GTは、30周目に突然スローダウンし、その後ピットに戻って、そのままリタイアの憂き目に。駆動系トラブルが原因だった。これで一気に楽になったHitotsuyama Audi R8 LMSだったが、37周目にライアンから富田に代わって間もなく、ABSにトラブルが発生、さらに駆動系トラブルにも見舞われて、リタイアを余儀なくされる。そして、全車がドライバー交代を終えるとトップに立っていたのは、HOPPY 86 MCの松井孝允。序盤は坪井翔が激しいバトルを繰り広げながら3番手を走行し、タイヤ無交換でロスを最小限にしていたことで、狙いどおりの順位を得ることとなる。

序盤の我慢が実ったUPGARAGE 86 MC、チーム結成4年目の初優勝!

UPGARAGE 86 MC

しかし、唯一予想外だったのは、UPGARAGE 86 MCの小林崇志が背後につけていたことだろう。同じくタイヤ無交換で、しかも前半を担当した中山友貴は「僕たちは25号車(HOPPY 86 MC)と違ってバトルをほとんどしなくて済んだから、それほどタイヤを酷使していなかった。その違いは大きかったのかもしれません」と語る。そのアドバンテージは確実にあったようで、しばらくの間は松井が鉄壁のガードで小林を封じ込めていたが、57周目のWヘアピン出口でGT500車両を利用し、UPGARAGE 86 MCが待望のトップに躍り出る。

D’station Porsche

そこから先は逃げ続けた小林に対し、なんとか2番手は死守したい松井に、今度は新たな刺客が襲いかかる。それがD’station Porscheのスヴェン・ミューラーだ。スタートを担当した藤井誠暢が予選20番手から徐々に順位を上げ、しかもトップとの間隔はむしろ詰めていたという状況で、ドライバー交代をギリギリまで遅らせていたことで、41周目からはトップも走行。45周目にミューラーと代われば、大きく順位を下げるものと思われていたものの、リヤ2本のタイヤ交換としたことで4番手に踏みとどまっていた。そんなミューラーが2番手に上がったのは72周目のヘアピン。綺麗にインを刺した光景に、今シーズンはポルシェ侮りがたしの印象を強くした。

秦 直之

秦 直之

大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。

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