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2月にオーストラリアのフィリップアイランドで開催された「FIMスーパースポーツ世界選手権」(排気量600cc)の2018年シーズンは3月23日(金)~25日(日)にタイ王国のブリーラムにあるチャンインターナショナルサーキットで第2戦を迎えます。今年も全レースをオンエアしているJ SPORTSでは3月28日 (水) 午後10:00から、J SPORTS 3でオンエアされるほか、J SPORTSオンデマンドでも映像を配信します。
開幕戦のオーストラリア戦は今季が波乱のシーズンとなることを予感させる幕開けとなりました。レースはメインカテゴリーの「スーパーバイク世界選手権」と同様にタイヤの安全性を重視してピットイン、タイヤ交換ありのルールに急遽変更されました。しかし、レース序盤に転倒によるアクシデントで赤旗が掲示され、結局、ピットイン無しの9周によるスプリントレースに。ポールポジションからスタートした2017年のチャンピオン、ルーカス・マヒアス(ヤマハ)が見事にポールトゥウインを飾りました。
そして、2位以下4位までもヤマハYZF-R6がトップ4独占状態となり、昨年登場したR6のニューモデルの速さが色濃く出たリザルトになりました。2位に入ったのは「BARDAHL Evan Bros. WorldSSP Team」から参戦するランディ・クルメナッハー。「スーパースポーツ世界選手権」に復帰したクルメナッハーですがイキイキとした走りを披露してくれましたね。そして、何といっても注目は「Kallio Racing」から参戦のサンドロ・コルテセが3位まで追い上げたこと。レース短縮が無ければ優勝の可能性すらあったのではないでしょうか。さすがMoto2を戦ってきたグランプリライダーという貫禄の走りを見せました。コルテセにとっては今回のチャンインターナショナルサーキットは初レースということになりますから、彼にとってブランニューな環境でどこまでのパフォーマンスを見せるか楽しみですし、これは今季を占う上でも大きなポイントになってくるのではないかと思います。
そして、日本期待の大久保光(カワサキ)はオープニングラップで接触されて転倒。その後、赤旗中断でレースがやり直しとなったおかげで、レースを戦うことができました。しかしながら、結果は14位と苦しい展開のカワサキデビュー戦になってしまいました。ただ、チャンインターナショナルサーキットは大久保が「スーパースポーツ世界選手権」のベストリザルトである6位フィニッシュを果たしたサーキットですし、カワサキでのウォーミングアップも終わった第2戦は大久保の力強いレースに期待が高まります。
今季、大久保はチャンピオン経験が何度もある名門チーム「Kawasaki Puccetti Racing」に移籍したわけですが、このチームのエースは5度のワールドチャンピオンであるケナン・ソフォーグル(トルコ)です。そのソフォーグルは開幕戦では予選2番手を獲得したもののリスタートしたレースではズルズルと順位を下げて13位フィニッシュと、ソフォーグルらしくないレース展開に。実はレースウィークに転倒して怪我を負ってしまっていました。ソフォーグルはレース後すぐに母国トルコへと帰国し、皮膚の移植手術を受けたとのこと。タイでの第2戦に間に合うか懸念されていましたが、やはり回復、出場には至らず、今回はアジア選手権でカワサキZX-6Rを駆るアズラン・シャー・カマルザマン(マレーシア)が代役で出場するようです(ソフォーグルの出場はドクターチェックで判断)。
アズランは日本では夏の鈴鹿8耐でお馴染みのライダーで、近年はカワサキでアジア選手権を戦っています。3月3日、4日にチャンインターナショナルサーキットでアジア選手権が開催され、2戦連続の3位フィニッシュを飾っています。同じ600ccで改造範囲が少ないカテゴリーであるために暑さとコースに慣れたアズランにとっては代役と言えども、かつてMoto2で世界選手権を戦った経験を持つアズランにとって再び世界選手権レースに挑戦する大きなチャンスとなります。
アジアという意味ではワイルドカード参戦のライダーにも注目が集まります。特にレース熱が高まるタイでは今、母国のライダーたちがノリに乗っている状況であり、2015年には地元タイのラタパー・ウィライローがホンダCBR600RRで優勝を飾り、タイ王国国歌の大合唱でサーキットが包まれたというレースがありました。今年は10月に「MotoGPタイグランプリ」が初開催されることになっているチャンインターナショナルサーキットで地元の声援を受けたタイ人ライダーのパフォーマンスは侮れません。
今回は地元からカワサキZX-6Rでティティポン・ウォラコンが参戦するのですが、3月前半のアジア選手権ではレース1で優勝を飾る速さを見せており、ちょっと今回注目しておいた方が良い存在となっています。実はそのチーム監督となるのが「スーパースポーツ世界選手権」にかつて参戦したライダーであり、J SPORTSの中継では解説者を務める藤原克昭。カワサキのアドバイザーでもある藤原の存在はティティポン・ウォラコンにとって大きな力となるでしょう。大久保光に限らず、地元アジアパワーが炸裂の週末となるでしょうか。
そういった普段のヨーロッパラウンドとは異なる要素が絡んでくるのがフライアウェイ戦となるチャンインターナショナルサーキットでのレースの面白いところ。その中で開幕戦に好調を示したヤマハのライダーたちはレースをどう組み立てて行くか、さらにその中で主導権を握るのは誰になるか、予測不能な展開も楽しみなレースが始まります。
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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