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若きクリムゾンレッドを束ねるディフェンスリーダー。ヴィッセル神戸U-18・山田海斗は今度こそ「3度目の正直」を手繰り寄せる 【NEXT TEENS FILE.】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史ヴィッセル神戸U-18・山田海斗
2年も続けて突き付けられた“リーグ2位”という悔し過ぎる経験は、もうこれ以上味わいたくない。この仲間たちと、このチームでプレーできる、最後の1年。みんなで掲げた『3度目の正直』を成し遂げるまでは、どれだけ厳しい状況になったとしても、諦めるなんて選択肢は存在しない。
「プレミアの後期は最初の2試合で大津戦と広島戦があるので、まずはその2試合に向けて頑張っていきつつ、チームとしてはケガ人も多くてなかなか難しい状況ですけど、彼らの分も自分たち3年生が引っ張っていきたいなと思います」
ヴィッセル神戸U-18の最終ラインを堂々と束ねてきた、191センチの長身を誇るディフェンスリーダー。山田海斗はこれから足を踏み入れていく勝負のリーグ後半戦に向けて、自分がクリムゾンレッドのアカデミーで身に着けてきたものすべてを注ぎ込む準備を、着々と整えている。
山田の2024年はトップチームのキャンプからスタートした。周囲はシビアな世界で揉まれてきているプロの選手たち。もちろん痛感した課題は少なくなかったけれど、それと同じくらい得られたものはとてつもなく多かった。
「守備の粘り強さは出せましたし、大迫(勇也)選手からは『まだアジリティが課題だから、そこを良くしたらもっと良くなるぞ』というアドバイスはもらえたので、そういう意味でも本当に良い経験ができたのかなと思います」。世界を知るチームのエースから贈られたアドバイスは、スッと心の中に入ってきた。
とりわけ印象深かったのは、ヴィッセルアカデミー出身でもあり、同じセンターバックでもある山川哲史の存在感。実は小学生時代のチームも一緒だという“大先輩”のサッカーと向き合う姿勢も、17歳にとってはとにかく刺激的だった。
「哲史くんのプレーは参考になりましたね。自分は小学校のチームも一緒で、よく知っている選手ですし、プレー面も何もかもバランス良くできて、ベテランの選手にもちゃんと言うところは言っていましたし、チームにとって大事な選手なんだなと感じました」。山川からもらった基準は、自分の中で大切な場所にしっかりと据えている。
ここまでのプレミアリーグでは、全10試合にスタメンフル出場。今季の主将に指名されている江口拓真が長期の負傷離脱を強いられているため、一貫してキャプテンマークを託されているが、以前より積極的に声を出し、チームを牽引する意欲も十分。その立ち姿には以前にも増してリーダー感が漂っている。
意識しているのは継続の重要性だ。「安部さん(安部雄大監督)の姿勢はずっと同じで、『去年からやってきたことを意識する中で、自分の長所を生かせ』とは言われているので、そういう意味ではほとんどの選手が長所を出せていると思います」。昨季から出場している選手が多い中で、もちろん改善する部分は改善しつつ、良かった部分も微調整しつつ、やり続けていくことの大事さはシーズンを戦っていく中で、より実感しているという。
さらに個人としては、既にトップチームの公式戦の雰囲気も味わっている。今年の4月17日。U-18所属の岡奨瑛と山田は、FC今治とアウェイで戦ったYBCルヴァンカップ1stラウンド2回戦のメンバーに招集。試合出場は叶わなかったものの、ベンチやアップエリアで感じたことが、多くの学びをもたらしてくれたことは間違いない。
「正直試合には出たかったですけど、プロの雰囲気はなかなか経験できないもので、いつもは試合に出ている選手が常に声を出して、ベンチから盛り上げていく“チーム感”は凄くいいなと思いましたし、勝つために自分もベンチから盛り上げられたのは凄く良い経験になったと思います」
ここでも山田に気付きを与えてくれたのは、アカデミーの先輩だったそうだ。「先制された時にはちょっと静かになったんですけど、そこから大きい声を出して盛り上げていた(佐々木)大樹くんが途中から出て、結局決勝点のPKも決めたので、『常にチームのために動いていたら、そういうチャンスも来るのかな』と思いました」
実は試合に出られそうな雰囲気も、少しだけあったという。「本多(勇喜)選手がちょっと足を痛めていたので、ずっと『あるぞ』とは言われていて、試合が延長まで行ったので、『余計あるぞ』と言われたんですけど、本多選手が最後の方まで粘り強くプレーしていたので、自分は出られなかったですね」。次こそは届きそうで届かなかった“ラインの向こう側”に足を踏み入れるべく、さらなる成長を追い求めていく。
過去2シーズンの神戸U-18は、後半戦に驚異的な巻き返しを見せてきた。2022年シーズンは7勝3分け1敗。2023年シーズンは9勝2敗。どちらもタイトルには一歩届かなかったとはいえ、その経験は今季のチームがここから挑む残り11試合にも、小さくない希望の灯をともしてくれるはずだ。
まだ春先のこと。リーグが開幕したばかりの頃に、山田が話していた言葉を思い出す。「無駄な失点を減らすことはみんなが意識できてきていますし、先制される試合だったり、内容が良くない試合もあるかもしれないですけど、そういった時に勝ち切れるチームが強いと監督も常に言ってくれているので、そういうところを全員が意識したら結果は付いてくると思います」
このチームに残されているプレミアリーグの試合を“11”から“12”に増やし、最後の最後にみんなで日本一の優勝カップを掲げるため、山田は経験してきたものすべてを目の前のピッチへ還元し、チーム全員の力を結集して、今度こそ『3度目の正直』を手繰り寄せる。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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