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一昨年王者と昨年王者の対峙!夏の日本一への試金石は生田決戦!川崎フロンターレU-18×青森山田高校マッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグEAST第10節】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史川崎フロンターレU-18・加治佐海
9節を終了した時点で、順位表の一番上に立っている川崎フロンターレU-18。開幕3連勝と絶好のスタートを切ったものの、4節以降の5試合では黒星が先行。とりわけ中断明けとなった8節の横浜FCユース戦では逆転負けを突き付けられ、今季初の連敗を喫するなど、やや結果に恵まれない時期に入っていた。
だが、アウェイに乗り込んだ前節の尚志高校戦は、前半こそなかなかチャンスを作り切れなかったが、後半に入ってギアを上げると、64分にセットプレーから林駿佑が先制ゴールをゲット。2年生守護神の松澤成音も決定的なピンチでファインセーブを披露して、終わってみれば1-0で粘り勝ち。1試合消化の少ない流通経済大柏高校と勝ち点で並びながら、得失点差で暫定首位をキープしている。
現在の順位は7位。EAST連覇を目指す青森山田高校は、思ったように勝ち点を伸ばし切れていない。開幕からの3試合は2勝1分けと上々の成果を手にした中で、4節からは悔しい3連敗。7節の大宮アルディージャU18戦もスコアレスドローと、4試合未勝利でインターハイ予選へと突入する。
迎えた決勝の八戸学院野辺地西高校戦は、苦しみながらも1-0で競り勝って、県24連覇を達成。「スタメンもベンチもサポートも含めて、1つの目標に向かって全員のベクトルが同じ方向を向けたことは凄く大きなことですし、チームが1つになれたというのが、この大会を通して一番良かったかなと思います」と話したのはキャプテンの小沼蒼珠。インターハイ予選後はFC東京U-18に勝ち切ると、前節の前橋育英高校戦も後半アディショナルタイムにPKで追い付き、勝ち点1を獲得。ここに来て確実に調子は上向きつつある。
新たな役割へポジティブに取り組んでいるのが、川崎U-18の7番を背負う加治佐海だ。昨シーズンは右サイドハーフで出場することが多かったが、今季は2トップの一角へとコンバート。「去年は自分が内側でプレーしていて、江原(叡志)くんが幅を取っていたんですけど、内側でのプレーがフォワードになっても凄く生きているかなと思います」と今までの経験を集結させて、新境地を開拓している。
ここまでは9試合に出場して2ゴール。守備時の献身性も際立つハードワーカーは「ゴール前で怖い選手になりたいです。あと、守備の基準は絶対にトップに行っても求められると思っているので、もっと守備の基準も上げたいですし、もっとゴールへ向かう迫力を出して、絶対にトップ昇格したいです」と今年に懸ける想いも十分。逞しい万能系アタッカー。“フォワード・加治佐”の存在がチームに好影響をもたらしている
今年の川崎U-18の11番は児玉昌太郎に託された。そのプレースタイルは実に明快。左サイドでボールを持ったら、最優先事項はドリブル勝負。昨シーズンの11番で、やはり左サイドハーフを務めていた岡野一恭平(中央大)とスタイルに似通った部分も多く、本人も「岡野一選手にも『11番は児玉に託すしかないと思ってたよ』と言ってもらって、それぐらい期待してもらっていることも嬉しかったですし、それに見合った活躍を今後もできるように頑張りたいと思います」と“先輩”の想いも汲んで、ピッチに立ち続けている。
2年生だった昨季はサイドバックに回った時期もあったが、その経験も今のプレーに役立っているという。「監督からも『最近のサイドハーフは守備もできないと戦っていけない』というお話も戴いていて、それこそ岡野一さんとか志村海里さん(日本体育大)とも対峙していたので、今ではボールを持っている時に、どうしたらサイドバックが苦しいかなというのはわかりますね」。アグレッシブに仕掛ける突破はチームの大きな武器。児玉のチャンスメイク力には、この試合も是非注目したい。
青森山田のキーマンは小沼蒼珠だ。2年生ながら高校選手権で日本一に貢献したこともあって、どの会場に行っても知名度の高さが窺えるディフェンダーは、最高学年になってキャプテンに就任。「大きいものを背負っているからこそ、自分が一番やらないといけないですし、自分の成長にも絶対に繋がるものがあるので、誇りとプライドを持ってキャプテンマークを付けさせてもらっています」と強い自覚を口にする。
サッカー選手としての向上心も頼もしい。「今年は飛躍の1年にしたいです。もっと小沼蒼珠という存在を伝えられたらと思っていますし、もっと上のレベルに行きたいなという想いがあるので、この1年は誰よりも努力して、誰よりも苦労して、飛躍したいと思っています」。常に成長への意欲を燃やす青森山田のキャプテンには、ここからのシーズンも大いに躍動してほしい。
昨年のプレミアでの対戦は川崎U-18から見て1分け1敗。ただ、今回の会場でもあるAnkerフロンタウン生田で行われた一戦は、終盤にPKで川崎U-18が追い付き、勝ち点1を分け合ったのだが、そのPKを献上した青森山田の選手が、守備固めで投入されたばかりの小沼だったという因縁もある。
それぞれクラブユース選手権にインターハイと、この夏に控えている全国大会では明確に日本一を狙いに行く両雄にとって、試金石にもなるような今節のゲーム。2022年のEAST王者と2023年のEAST王者が対峙する90分間から、目が離せない。
青森山田高校のキャプテン・小沼蒼珠
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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