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サッカー フットサル コラム 2024年6月27日

努力を重ね続けられるキャプテンの決意。流通経済大柏高校・奈須琉世が携え直した“二冠”への覚悟 【NEXT TEENS FILE.】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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流通経済大柏高校のキャプテン・奈須琉世

その男は並々ならぬ勝利への意欲を燃やしていた。同じチームに2回も、しかも2週続けて負けるなんて、プライドが絶対に許さない。何が何でも勝つ。何が何でも倒す。自分にはピッチ上にも、ピッチ外にも、最高の仲間たちが付いているんだから。

「インターハイに負けた後は自分も悔しくて涙を流しましたし、チームメイトも本当に悔しがっていて、しばらく立ち直れなかったですけど、もう終わったことなので、今度はやり返すしかないなと。このまま引きずっていても、自分たちのレベルも上がっていかないですし、何が何でも勝ちを獲ろうという気持ちをチーム内で合わせて、この試合に向かってきました」

永遠のライバル・市立船橋高校と“2週連続”で公式戦を戦うことになった、流通経済大柏高校のキャプテン。奈須琉世は1週間前に突き付けられた悔しすぎる敗戦のリベンジを誓って、この日の戦場へと足を踏み入れた。

「初めて公式戦で負けたので、思いのほかダメージはありましたね」。榎本雅大監督がそう言及した試合は、夏の全国切符を懸けたインターハイ千葉県予選決勝。今季の流通経済大柏はプレミアリーグで開幕から8戦無敗。この予選でも3試合で7得点無失点と、圧倒的な結果で勝ち上がってきた。

だが、対照的にプレミアリーグではいまだ白星がなく、今予選も接戦を何とか制してきた市立船橋が、ファイナルでは意地を見せる。先制点を奪い、いったんは流通経済大柏も追い付いたものの、終盤に挙げた勝ち越しゴールを守り切り、2-1で勝利。千葉県の代表権を鮮やかにさらっていった。

日本一を目指していたインターハイの予期せぬ終焉。流通経済大柏の選手たちにショックが広がる。だが、彼らにはすぐに雪辱を果たす機会が用意されていた。決勝から1週間後。ホームで戦うプレミアリーグEAST第9節の対戦相手は、市立船橋だったのだ。

「2週連続で市船と試合できることはなかなかないですし、自分たちは『あそこで負けた悔しさを、ここで勝って晴らそう』とチームでも話していました。選手権でも後期のプレミアでも市船とやる機会はあるので、ここで1回叩かないといけないですから」と話した奈須を中心に、流通経済大柏の選手たちは改めてファイティングポーズを取り直す。

 

試合は序盤から流通経済大柏が攻勢を強める。「自分たちの今年の良さは見てくれている人もわかってくれていると思いますし、市船がそこを対策してくる中でも、自分たちはそれでもやり通すと、今週話し合って決めていました」(奈須)。多彩な個性が織りなす、多彩なパターンのアタックを繰り出し続けると、51分には葛西亮太のゴールで先制。ホームチームが1点のリードを奪う。

だが、市立船橋もワンチャンスをモノにする。63分。奈須の目の前に飛び込んだ伊丹俊元が、豪快なヘディングを叩き込む。「『危ないシーンは何が何でも自分が身体を張る』という責任感を持っていた中で、インターハイの決勝でも伊丹選手に決められて、今回も自分の目の前で決められたので、センターバックとしての実力不足も感じます」。失点を防ぎ切れなかった守備者の後悔が、その口調に滲む。

結果は1-1のドロー。「何が何でも勝ちたいと思っていた中で、引き分けという結果をポジティブに捉えれば、まだプレミアで無敗なんですけど、これからもっと自分たちの課題を突き詰めて、チームを良くしていきたいなと思いました」。必勝を期したリターンマッチは一定の成果を得ながら、リベンジを果たせなかった悔しさも抱える90分間となった。

2年生だった昨シーズンの前半戦。奈須がプレーしていたのは千葉県1部リーグを主戦場とするCチームだったという。「2年生に上がるころの最初はAチームにいたんですけど、なかなか調子が上がらずに苦しんで、夏まではCチームでやらせてもらっていました」

それでも前を向き、モチベーションを高められるだけの意志が、この男にはあった。「自分がCチームにいた時は、とにかく失うものはなかったので、Aチームと紅白戦をやる時に『絶対に何かを見せてやろう』と思っていました。そこで監督の目に留まったり、Aチームの選手に『コイツ、嫌な選手だな』と思わせたら、自分もトップチームに絡めると思っていたので、ミスを怖がらずに、どんどんチャレンジしましたね」

インターハイをきっかけにAチームのメンバーへ食い込むと、後半戦はプレミアリーグでもスタメンに抜擢され、守備で安定したパフォーマンスを披露。複数ポジションをこなせるポリバレントさも手伝って、チームの重要な戦力として存在感を高めることに成功した。

迎えた高校ラストイヤー。キャプテンには自ら立候補したそうだ。「中学時代もやっていたので、キャプテンが嫌だということはないですし、もちろん難しい役割なのはわかっていましたけど、だからと言って『キャプテンにならないのは違うな』と感じていて、チームの中心になって仕事をしたいとも思っていたので、スタッフに『キャプテンをやりたい』ということを伝えました」

今季のチームもとにかく個性派揃い。そんなメンバーばかりが居並ぶ130人近い部員をまとめる仕事が、大変でないはずがない。「1人でまとめるのはさすがに難しいですけど、各カテゴリーにキャプテンがいますし、もう1人のキャプテンの佐藤夢真選手と一緒に、みんなを引っ張っていっている感じです」

「みんな個性が強いので、そこを自分がどうまとめるかは本当に難しい役割で、今も悩んでいるんですけど、自分が言ったことに対してみんなが付いてきてくれていますし、自分が変わっていかないとチームも変わっていかないので、常にチームの先頭に立てるように意識しています」。このグループに圧倒的な一体感を醸成するため、奈須はさまざまなことを考え、試行錯誤しながら、キャプテンとしての日常を積み重ねている。

まだまだシーズンは続く。首位争いを繰り広げているプレミアリーグ。より日本一への渇望感が高まった高校選手権。残された2つのタイトルを手中に収めるべく、ここからチームがどういう方向に進んでいくかは、キャプテンのかじ取りに懸かっている。

「残っているプレミアリーグと選手権で二冠を達成したいと思いますし、あの負けが自分たちのターニングポイントになるように、ここから右肩上がりでどんどん良くなっていくように、キャプテンとしての責任と自覚を持って、このチームを支えていきたいなと思っています」

みんなで高め合ってきた力には、自信しかない。あとはそれを適切な時に、適切な形で打ち出すだけ。流通経済大柏を束ねる2024年のキャプテン。奈須琉世が地道に、丁寧に培ってきたリーダーシップは、このチームがさらなる進化を遂げるために、絶対不可欠だ。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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