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「自分らしさ」を貫く司令塔。この男にしか見えない景色が必ずある【モーリスレベロトーナメント U-19日本代表・中島洋太朗(サンフレッチェ広島)】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史U-19日本代表・中島洋太朗
決して誇張ではなく、彼がピッチに立っている試合を10分ぐらい見ていれば、もうわかってしまうはずだ。きっと特別な何かを持っている選手なのだと。それぐらい中島洋太朗は、多くの人が期待せざるを得ない才能を持ち合わせている。
まず、ボールが自然と集まってくる。それは所属チームでも、代表チームでも。中盤のど真ん中にポジションを取りながら、チームメイトからパスを引き出し、再びチームメイトへとパスを供給していく。
昨年9月にはサンフレッチェ広島とプロ契約を締結。既にトップチームデビューも飾っている。今年の3月30日。J1第5節。エディオンピースウイングスタジアム広島。89分から登場すると、スタンドから万雷の拍手が降り注ぐ。背番号はやはりサンフレッチェでプレーしていた父の浩司氏も付けていた35番。次代のチームを担うであろう17歳が、紫のサポーターの前にとうとうその姿を現したというわけだ。
世界との邂逅は、多くのものを自身に突き付けてくれた。昨年11月。中島はFIFA U-17ワールドカップで全4試合にスタメン出場。「自分の武器の攻撃はワールドカップでもやれることもありました」と確かな手応えを得た一方で、新たな気付きも持ち帰ってきたという。
「強度の部分では、自分はまだまだだなと感じましたし、特にアルゼンチンは勝つために大事な部分をわかっているというか、みんながここという時に3人も4人も5人もスプリントできたり、時間帯によった賢さとかもちょっと日本と違う感じがありましたね」。肌で感じた彼らの勝負へとこだわる執念は、記憶の中に刻み込んでいる。
今回のモーリスレベロトーナメントでは第2戦のインドネシア戦にスタメンで登場。前半からドイスボランチを組む大関友翔を前に押し出し、バランスを取りながらゲームメイク。後半には本間ジャスティンにスピード、コースとも完璧なスルーパスを通し、神田奏真のゴールを“アシストのアシスト”で演出。実力の一端を披露する。
だが、3点をリードした時間帯に、やや厳しい判定ではあったものの、エリア内でのファウルを取られてPKを献上。失点に絡んでしまったこともあって、試合後の浮かない顔も印象的だった。
雄弁なタイプではないが、軸に携えている意志の強さはプレーを見れば一目瞭然。この男にしか見えない景色が、必ずある。これまでも“自分らしさ”を貫いてきた、U-19日本代表の司令塔。中島洋太朗がプロヴァンスの地でさらなる躍動を見せるチャンスは、まだまだ十分に残されている。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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