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世界に伍する圧倒的ポテンシャル、開花目前。サンフレッチェ広島ユース・木吹翔太がイメージする一番高い景色 【NEXT TEENS FILE.】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史サンフレッチェ広島ユース・木吹翔太
うまく行ったことも、うまく行かなかったことも、受け入れて、消化して、成長に繋げてきた自信は確実にある。周囲から掛けられている期待にだって、もちろん応えたい。でも、自分に一番期待しているのは、間違いなく自分自身。イメージしている一番高い景色まで、絶対にたどり着いてやる。
「まずはサンフレッチェ広島で試合にどんどん出て、J1の舞台で活躍して、その先では海外でも活躍できるように頑張っていきたいです。その中でもちろんA代表も目指していますし、ワールドカップにも出たいと思います」
来季からのトップチーム昇格が内定している、203センチのスペシャルな才能。サンフレッチェ広島ユースのキャプテンマークを託された木吹翔太が見据える未来には、無限の可能性が広がっている。
「全体の内容としてはボールも持てて、相手のロングボールもディフェンスラインでしっかり弾けていたので、良かったかなと思います」。終わったばかりの試合を木吹はそう振り返る。プレミアリーグWEST第7節。名古屋グランパスU-18と対峙した上位対決はスコアこそ3-2ではあったものの、野田知監督も今季一番と認める内容でホームチームが勝利。山あいのグラウンドに広島ユースの歓喜の咆哮が響いた。
今季は一貫して3バックを採用してきたが、この試合は4バックにシフト。ただ、大きな役割は変わらない。「4バックになっても自分たちの繋ぐところとか、1枚剥がして運ぶところとか、中盤で数的優位を作ってとか、そこは変わらないですからね」と話す背番号4も時折自らボールを持ち出し、積極的にオーバーラップするシーンに、攻撃への意欲を滲ませる。
もちろん守備面でも一定の水準は落とさない。「トレーナーの方にメニューを組んでもらって、週の中でどういうサイクルで自分を高めていくかもちゃんと考えてもらって、そこにしっかりと取り組めているので、前よりは身体もごつくなってきましたし、動きもイメージと合ってきたので、そこへの手応えはあります」。長身ゆえに悩まされていた身体のバランスも、着実に改善されつつあるようだ。
加えて今季はキャプテンにも指名されている。「『やっても副キャプテンぐらいかな』とは思っていたので、自分がキャプテンをやるイメージはなかったですね。野田さんから言われた時はビックリしました」と笑ったものの、その役割を任されたことを意気に感じていないはずがない。
自分なりのキャプテン像も、なんとなく見えてきた。「(小谷)楓河が声を出してやってくれますし、僕はそんなにワーワー声を出してやれるタイプではないので、言うところは言いますけど、プレーで示したり、日頃のところから気を配って、自分が見本となってやることをまず意識して生活しています。やるからには自分も責任を持ってやりたいですし、成長できるチャンスだと思っているので、1年間しっかりキャプテンとしてチームを引っ張っていきたいですね」。この機会もまた成長する絶好のチャンスと捉え、チームメイトとポジティブに向き合っている。
中学時代を過ごしたJFAアカデミー福島時代から年代別代表も経験。その2メートル近い身長のインパクトも相まって、常に小さくない期待を寄せられてきたが、広島ユースに加入した1年目はプレミアリーグもわずか2試合・10分間の出場のみ。決して思うような時間を過ごせていたわけではない。
「広島に来て、1年生の頃から期待してもらっていたんですけど、なかなかAチームに絡めなかったですし、代表にも呼ばれなくなっていって……。それでも腐らずに、しっかりとやるべきことは続けられていたのかなとは思います」。もがき、悩み、その上で前を向いて戦い続ける姿勢は、周囲にもちゃんと伝わっていた。
そんな木吹に大きな転機が訪れたのは昨年6月のこと。それまでフォワードや攻撃的な中盤を務めることが多かったポジションが、センターバックへと変わったことだ。「沢田さん(沢田謙太郎アカデミーダイレクター)に『センターバックをやってみないか?』と言ってもらったんですけど、野田さんもそうですし、うまく行かない時にスタッフの皆さんが自分のことをちゃんと見てくれていたので、自分も『もっと頑張らないといけないな』『期待に応えないといけないな』と思ったんです」
持ち前の素直さで真摯にセンターバックへと取り組むと、9月には久々に代表にも復帰。中学生のころから目指してきたFIFA U-17ワールドカップのメンバー入りは果たせなかったが、ユースで過ごしてきた2年間についても「もちろん良いことばかりではなかったですけど、結果的には意味のある挫折だったのかなと思います」と言及しており、成長の過程として必要な時間だったと、既にしっかりと自分の中で折り合いを付けている様子も窺える。
2024年はアカデミーラストイヤー。縁もゆかりもなかった吉田の地で寝食を共にし、
濃厚な時間を過ごしてきた仲間との最後の1年に懸ける想いは、人一倍強い。
「スタメンの選手だけじゃなくて、ベンチの選手もふてくされることなく声を出して、僕たちと一緒に戦ってくれますし、ベンチ外の選手も含めて一体感を持てるので、そういうところは良いチームだなと思いますし、日頃から良い雰囲気でできているのかなと思います」
「チームとしてはクラブユースの優勝とプレミアファイナルでの優勝を目標にしているので、そこへ向けてチームのために自分の力を発揮したいですし、個人としては1個上の世代のオリンピック予選とかアジアの大会もあるので、そこに絡んでいけるようにしたいと思っています」
天を翔けるペガサスのように、力強さとしなやかさを兼ね備えた圧倒的ポテンシャルの持ち主。他に類を見ないスケールを誇る木吹翔太がたゆまぬ努力を貫く限り、これから切り拓いていく道の先には、それこそ日本サッカーを変え得るような、楽しみな未来が待っているに違いない。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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