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前橋育英高校・山田佳が期したリベンジは叶わず。それでもサッカーは明日も続いていく 高円宮杯プレミアリーグEAST 前橋育英高校×尚志高校マッチレビュー』
土屋雅史コラム by 土屋 雅史前橋育英高校・山田佳
思い描いたシナリオ通りになんて、いつでもうまく行くはずがない。この夏のリベンジを期して、並々ならぬ気合を携えて臨んでも、再び跳ね返された男の心中が穏やかであるはずがない。それでも、また明日にはトレーニングが待っていて、週末には次の試合が待っている。サッカーと生きていく限り、きっとそんな日々はどこまでも続いていく。
「毎週毎週試合があって、こういうふうに複数失点で負けて、連敗して、チームの雰囲気としては最悪に近くても、それでも試合が来てしまうのは、メンタル的にちょっとキツい部分はあるんですけど、ここでどれだけ踏ん張れるかとか、ここからどれだけ復活していけるかが大切だと思います」。
前橋育英高校の2年生センターバック。山田佳は積み重ねる日常の先で、繰り返される勝利と敗戦を味わいつつ、前を向いて、自分が信じる未来へと歩き続けていく。
個人としてのモチベーションは大いに高まっていた。山田は9月に開催された国際ユースin新潟を戦うU-17日本代表に招集される。ほぼ1年ぶりとなる年代別代表に呼ばれたことが、プレミアリーグの舞台でしっかりと成長を示したことの成果であることは言うまでもない。
「ラインコントロールやヘディングのところ、相手の1.5列目の選手を潰すところは前までの代表活動と比べて良くなっていましたし、自分の持ち味のキックも何本か出せたんですけど、ゴール前のチャレンジするところや身体を投げ出すところは全然ダメで、良いところも悪いところもハッキリ出たので、活動自体は良かったですね。周りのみんなも凄く上手くて、やっぱり代表で頻繁に活動できたら、今後の自分の成長にもすごく刺激になると思いますし、改めてああいう環境でやりたいという気持ちは強くなりました」。
ただ、チームは山田不在で臨んだ川崎フロンターレU-18とのホームゲームに0-3と完敗を喫すると、代表での経験を得た2年生センターバックも復帰し、必勝態勢で挑んだ柏レイソルU-18戦も0-5で大敗。「代表から帰ってきた自分がチームを引っ張らないといけないですし、雰囲気を良くする責任があったんですけど、それがうまくできなかったのが悔しいですね」とは山田。だが、次の試合はすぐにやってくる。しかも対戦相手は夏のインターハイで敗れた尚志高校だ。
山田にはどうしてもリベンジしたい気持ちがあった。インターハイの尚志戦は前半に自身が献上したPKを決められ、試合はそのまま0-1でタイムアップ。連覇を狙った前橋育英は3回戦敗退という現実を突き付けられる。
「試合内容としては五分だったんですけど、あのPKを与えてしまったのは、自分の日頃の行いだったり、そういう細かいところが足りなかったからだと思っています。あの1本で負けたのが悔しくて、今回の試合は『絶対に自分がやってやろう』という気持ちが強かったです」。因縁の相手に勝って、連敗を止めて、チームも選手権予選に向けて上昇気流に乗っていく。シナリオは整っているはずだった。
結果から先に言えば、前橋育英は返り討ちに遭う。前半だけで3失点を許し、後半は自分たちの時間も作ったものの、ファイナルスコアは0-3。しかも、コーナーキックからともにフリーでヘディングを放たれての2失点には、ディフェンス陣にも小さくないダメージが残ったことは間違いない。
「セットプレーは自分たちの課題で、同じ選手に決められるならまだそこがダメなんだなとわかるんですけど、今回はそれぞれ違う選手に決められるということは、『チーム全体として全然守れていないんだな』と感じたので、もっと練習しないといけないなと思いました」と唇を噛んだ山田は、さらに勝敗に対する自分のプレーの責任の大きさを痛感していた。
「今日の試合で凄く感じたのは、失点したポイントが自分じゃなくても、全員でチームなので、自分がどれだけ周りを動かせるか、周りを鼓舞できるかが大事だなと。でも、チームを動かすためにはまず自分が一番にやらないといけないわけで、やっぱりリーダーシップをもっと鍛えていかないといけないなと思いました」。
因縁の相手に再び敗れ、連敗は3に伸びた。それでも、次の日曜日には市立船橋高校戦が控えている。勝っても、負けても、明日のトレーニングはやってくるし、週末には試合がやってくるのだ。
山田は必死に前を向く。「でも、これで次に勝てた時には凄く盛り上がると思いますし、負けてもまたプレミアの強い相手と試合をするキツさはありながら、その中で雰囲気をどれだけ良くできるかとか、チームがどれだけ良くなっていくかは、サッカーの楽しさだと思いますね」。そう話した直後、呟くように言葉はこう続いた。「勝ちたいです。勝ちたいですね。来週、頑張ります」。
みんな勝ちたいけれど、みんなが勝てるわけではない。どれだけ努力しても、それが実を結ぶとは限らない。でも、それでも、勝つ日を信じて、努力が実を結ぶ日を信じて、今日も、明日も、再び日常と向き合っていく。それはきっとサッカーを始めたばかりの小学生も、プレミアの舞台で戦う高校生も、プロの世界に身を投じたJリーガーも、そこに広さや長さの違いはあれど、等しく通っていく道だ。それは山田にとっても、もちろん例外ではない。
思い描いたシナリオ通りになんて、いつでもうまく行くはずがない。だからこそ、やっぱりサッカーは面白い。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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