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サッカー フットサル コラム 2022年5月17日

ジュビロ磐田U-18の正当な競争。中村駿太、舩橋京汰、後藤啓介の起用法に見る指揮官の信念 【高円宮杯プレミアリーグWEST ジュビロ磐田U-18×ヴィッセル神戸U-18マッチレビュー】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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中村駿太

まずはメンバー表を見て、驚いた。ジュビロ磐田U-18は今シーズン初黒星を喫した前節のセレッソ大阪U-18戦から、スタメンを5人も入れ替えてきた。とりわけ意外だったのはボランチとフォワードの人選。前者ではここまで全試合に起用されてきた野口来夢に代えて、中村駿太が今季初スタメン。後者ではここまでベンチにすら入っていなかった舩橋京汰が、得点源の伊藤猛志の横に並び、どちらのポジションもこなせる後藤啓介は、この日のヴィッセル神戸U-18戦もサブからのスタートとなる。

結果から言えば、中村も舩橋もフル出場を果たし、チームの勝利に大きく貢献した。この試合は伊藤猛志がスーパーな2点を奪い、途中出場の後藤もまた素晴らしいゴールを叩き出して、3-1で勝ち切ったのだが、試合後の前田遼一監督は開口一番こう語っている。

「ゴールは素晴らしかったですね。ただ、ゴールは決めていなかったですけど、舩橋京汰は90分間攻守に渡って献身的にプレーしていたので、そのプレーが勝利に繋がったかなと思います」。

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確かに舩橋の献身的なプレーは、際立っていた。前線から果敢にプレスを掛けたかと思えば、サイドへ流れて身体を張ったキープを見せ、カウンターの際には長い距離を全速力で駆け抜ける。後藤が投入された73分にベンチへ下がったのが舩橋ではなく、2ゴールを挙げていた伊藤猛志だったことも、攻守に動き続けられる彼の重要性をよく現わしていたように思う。

2度の決定機を決め切れなかったことは、間違いなく本人にとっても痛恨のはずだが、1年生だった去年の開幕戦からプレミアでの出場機会を得ていた中、ようやく訪れた今季初出場のチャンスでハイパフォーマンス。舩橋も含めた前線のポジション争いは、ますます激化することだろう。

そして、中村の攻守に効果的なプレーも目を惹いた。指揮官の言葉がその価値を過不足なく表現している。「先ほどは京汰のことを言いましたけど、あの駿太のプレーがそこに繋がったと言っても過言ではないと思っています。攻守におけるパフォーマンスは本当に素晴らしかったです」。

【ハイライト】ジュビロ磐田U-18 vs. ヴィッセル神戸U-18|高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ2022 EAST 第7節

舩橋京汰

舩橋同様に1年生からスタメン起用されたリーグ戦の試合もあり、より意気込んで迎えた新シーズンはやや苦しい序盤に。なかなか出場機会に恵まれなかったが、「悔しい部分もあったんですけど、自分の特徴を生かして、チャンスが来るまで待つことを意識して、練習で120パーセントの力を出すようにしていました」という姿勢を評価した上で、前田監督はこの日の起用をジャッジしたそうだ。

「攻守の切り替えのところ、守備のところ、繋ぎのところはやってほしかったところで、そういう部分は凄く良かったですし、奪われた瞬間に回収する場面もそうですけど、他の選手に回収させるためのプレーもしていたので、本当に良いプレーをしてくれたなと思います」と前田監督。中村もこの日の収穫を問われると、「自信ですね。今まで試合に出られていなかったので、自信がなくてすぐにバックバスしたり、後ろ向きなプレーが多かったんですけど、今日は90分出られて、『やっていけるぞ』という自信は付きました」ときっぱり。ただ、もちろん野口もこのまま黙ってはいないはずだ。ボランチの定位置争いも、一層シビアなものになっていくことは想像に難くない。

「今シーズンに入って先発が1回しかなくて、今日はいつも出ている輝くんもいなくて,『今日こそは自分が』と思っていたんですけど、スタメンじゃなかったので、より悔しかったんです」。後藤はそう試合前の心境を振り返る。前節で負傷したフォワードの原田輝が欠場。その試合でも原田に代わって前半途中からピッチに送り出されており、この日のスタメンも十分に予想されていたが、指揮官が下したフォワードのチョイスは舩橋だった。

73分。アップエリアにいた後藤に声が掛かる。「本当に悔しくて、悔しくて。でも、ここで腐ったり、折れたら、結果も残せないし、次にも繋がらないし、まずは流れが良くなかったので、『自分が入って流れを変えてやろう』と思いました」。登場から2分後。左サイドで舩橋のパスを受けると、カットインしながら右足一閃。ボールは右のポストを叩いて、ゴールネットへ弾み込む。

「どんどん中に仕掛けていきながら、『パスを出そうかな』と思ったんですけど、『ここは打たないとな』って。「『遼一さん、見たか!』と。メチャメチャ嬉しかったです」。悔しさと意地を乗せた一撃で、自らの存在を強烈にアピールしてみせた。

後藤啓介

前田監督の中で、選手選考の基準はハッキリしている。後藤に求めることを問われても、「チームとしてやっている、ボールを奪いに行くところ、攻撃のところ、良いポジションから動き出すこと、そういう部分を90分間続けてやることですかね。凄く爆発的なものは持っていますが、それを継続してできるかというと、まだ今出ている猛志と京汰の方ができるのかなと思って、途中出場が多くなっています」ときっぱり。90分間戦い続けられるか否かは、このチームにとって何よりも大事な“基準”になる。

年代別代表の常連であり、191センチの長身を誇りながら技術ベースも高い後藤の才能は、一目瞭然だ。だが、プロの第一線で戦い続けてきた前田監督は、彼にとっていま必要なものを正しい目で見極めている。この成長過程の段階で、この指揮官と出会えたことは、おそらく彼にとって今後のキャリアの中でも大きなポイントとなってくるに違いない。

後藤本人ももちろん自分の現状は理解している。「プレーの質というか、100パーセントまで体も動いていないので、そこがスタメンで出られていない原因かなと思います。まずは先発で出たいという気持ちが一番ですけど、選手層が厳しい方が自分たちの成長にも繋がりますし、自分も成長していけると思うので、そこも良いところかなと。練習から100パーセントでやって、早く調子を戻してスタメンで出て、もっとチームを上に引っ張っていけたらいいなと思います」。

監督として重要なことを問われ、「練習から100パーセントやることが全てかなと感じていますし、それが逆に一番難しいことかなとも思っています。すべての選手にそういう気持ちでプレーさせることが大事なんですよね」と答えた前田監督。後藤がほとんど同じようなフレーズを口にしていたことからも、普段からこのマインドを選手たちへ訴えかけていることも十分に窺える。

正当な努力には、正当な評価を下す。必要な努力には、必要な時間を与える。それゆえに大事なことは、練習から100パーセントやること。前田監督の信念は、揺るがない。

文:土屋雅史

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土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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