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ツールを沸かせた“あの男”たちがさいたまへやってくる! 第10回記念を祝う豪華ライダーの競演【Cycle*2024 ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム:プレビュー】
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介2023年さいたまクリテリウム スタート直前
世界最大の自転車ロードレース、ツール・ド・フランス。われわれにとっての夏は、いつだってツール一色。スター選手のアタックに熱狂し、思いがけず訪れたドラマに涙し、ライダーたちの人間らしい一面にクスリ……とさせられたり。ひとつひとつの場面・局面に一喜一憂する、これ以上ない幸せな時間である。
決して忘れることのない素晴らしき日々に、さらなる彩りを。今年で10回目を迎える「ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム」は、ツールを沸かせ、世界を震撼させたスーパースターたちが、さいたま新都心の市街地コースを駆け抜けるスペシャルイベントだ。
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昨年の優勝者はタデイ・ポガチャル
その年のツールで活躍した選手たちが、秋に来日するのはもはや慣例。2013年に始まったこのクリテリウムは、新型コロナによる2020・2021年の中止を乗り越えながら、日本のロードレースファンが世界とともに育み、われわれにとって欠かせないイベントとなった。
さいたまでのクリテリウム開催は、「ツール・ド・フランスの歴史」を変えるきっかけになったと言っても決して大げさではない。「ツール・ド・フランスの名を冠した大会」としては世界初のイベントであり、それもツールの100回記念大会の年に生まれている。本場ヨーロッパで築かれているロードレースのエッセンスがそのまま日本に持ち込まれ、日本にいながらにして本場の興奮と感動を味わえることがコンセプトとなっている。だから、ツール覇者がマイヨ・ジョーヌを着てさいたま新都心を走るし、本番さながらのレースが展開されるのである。
世界190カ国で国際中継する“ツールブランド”も手は抜かない。大会を運営するスタッフやメディアも本番同様だし、コース内外での演出やバリケードもツールで使われるものが採用される。実際のツールと違うのは、周囲の景色だけ。さいたま新都心の高層ビル群は、ツールの伝統と格式に大いなるアクセントをもたらしている。
迎える2024年大会。開催日11月2日は、お昼からのオープニングセレモニーを経て、出場選手たちによるコース上でのオープニング走行。沿道を含め会場が温まったところで、「タイムトライアルレース」に選手たちは臨む。
昨年のクリテリウムレース (左)新城幸也選手 (右)ジュリオ・チッコーネ
タイムトライアルレースは、チームTT方式で行われ、海外・国内それぞれの参加チームが3人ないし4人一組でフィニッシュラインを目指す。3.2kmのコースを1周し、そのタイムで順位を決める。各チーム2番手ライダーのフィニッシュライン通過タイムが有効になる。これとは別に、日本の女子・男子ジュニア・パラサイクリング・秩父宮杯埼玉県自転車道路競走大会優勝者による個人タイムトライアルレースも催される。
チームTTで各選手・チームの走りに魅せられたところで、満を持して行うは「クリテリウムメインレース」。こちらは1周約3.6kmのコースを17周回し、一番にフィニッシュラインを通過した選手が優勝。ひと目で誰が勝ったかが分かる、ロードレースの本質が詰まった一戦である。
レース途中、2・6・10・14周目のフィニッシュライン通過時に中間スプリントポイントが設けられ、上位通過4選手に5・3・2・1ポイントが付与される。総獲得ポイントがトップの選手がポイント賞に輝く。また、4・8・12・16周目の山岳ポイントでは上位3選手に3・2・1ポイントが付与。こちらも総獲得ポイントが一番の選手が山岳賞に。そのほか、敢闘賞、新人賞(1999年1月1日以降生まれの選手対象)、チーム賞、日本人チーム賞が設けられる。
今回のレースで使用されるコースは、これまで通りさいたま新都心の高層ビル群を縫うようなレイアウトであると同時に、第10回大会を記念して初めて「さいたまスーパーアリーナ」のメインアリーナを通過。まだ誰も見たことのない、新たなクリテリウムを実感することができそうだ。
そんなさいたまのコースに挑むのは、海外・国内それぞれ7チーム。
ツール2024の4賞ライダーでは、ポイント賞のマイヨ・ヴェールを獲得したビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)が初来日。ツールでステージ3勝とセンセーショナルな活躍で、すっかり世界の一流スプリンターに仲間入りした。もちろん、さいたまのスピードコースにも適応するだろう。
ヤスペル・フィリプセンやビニヤム・ギルマイがさいたまにやってくる!
ツールでギルマイと好勝負を演じたヤスペル・フィリプセンは、スペシャルチーム「ツール・ド・フランス クリテリウムレジェンズ」の一員として参戦。さいたまでは2年前に勝っており、2度目の優勝を目指す。脇を固めるのは、クリストファー・フルーム、ヴィクトル・カンペナールツ、ベン・オコーナーと、豪華すぎるほどの布陣。
今年のブエルタ・ア・エスパーニャを制したプリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)は、さいたまのコースでも強さを見せるだろうか。お得意のポディウムでの“テレマーク姿勢”にも期待しよう。ツール第1ステージで劇的な逃げ切り勝利を挙げたロマン・バルデ(dsmフィルメニッヒ・ポストNL)は来シーズン途中での現役引退を控えており、日本での雄姿はこれが最後になるかもしれない。
最後といえば、マーク・カヴェンディッシュ(アスタナカザクスタン)も、ライダー姿はこれが見納めとなる可能性が高い。今年のツールでステージ通算35勝の新記録を達成。誰もが望んだ最高の形で、キャリアを終えようとしている。10月29日にはパリでツール2025のルートプレゼンテーションに出席。そこでは、来年のツール出場に含みを持たせたジョークも聞かれたが、現所属チームのスタッフに就任するとの一部報道もあり、日本でその走りが見られるのは最後と思っておいた方が良いだろう。
そして忘れてはならない、「ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム」の顔、新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)。今季限りでのチーム退団が明らかになっており、現チームでのジャージ姿を見られる最後のチャンス。2019年にはこの大会を制しており、5年ぶりに大仕事をやってのけるかにも注目だ。
迎え撃つ日本勢は、今年の全日本TT王者の金子宗平が「スペシャルチームジャパン for さいたま」の一員としてエントリー。J SPORTS中継解説でもおなじみ畑中勇介(キナンレーシングチーム)も現役引退を控えており、レースシーンを見られるのは残りわずか。
レースにとどまらず、オフィシャルサポーター向けの大感謝祭(有料)や、メインアリーナ―周辺でのキッズクリテや体験型スポーツフェスなど、楽しめるコンテンツが盛りだくさん。前日11月1日にはJ SPORTSで前夜祭スペシャルが放映される。
さいたまが世界の自転車ロードレースの中心地に。その一端となるべく、現地で、ライブで、決定的瞬間に立ち会おう!
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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