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変幻自在のコース設定、今年は上れるスプリンターに有利か マシューズ、グローブスらスピードマンに絶好調ヒルシも優勝争いに加わる【Cycle*2024 グラン・ピエモンテ:プレビュー】
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介イル・ロンバルディアの前哨戦、グラン・ピエモンテ
伝統的に9月なかばから1カ月にわたって集中的に編成されるイタリア開催のワンデーレース。グランツールやUCI世界選手権大会といったシーズン最大レベルのレースが終わり、この時期はイル・ロンバルディアに向けた有力選手たちの最終調整や、長かった今季のレース活動を終えようという選手たちがいかにしてシーズンを締めくくろうかというところにフォーカスしていく。
秋のイタリアンレースのうち、ジロ・デ・イタリアなどを主催するRCSスポルトがオーガナイズするレースのひとつ、グラン・ピエモンテ。1906年に初開催され、今回で108回目の伝統の一戦は現地10月10日に行われる。
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【限定】【スタート~フィニッシュまで】Cycle*2024 イル・ロンバルディア (英語コメンタリー版)
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配信期間 : 2024年10月12日午後9:00 ~
大会の歴史をたどると、当時“レッドデビル”と呼ばれ恐れられたジョヴァンニ・ジェルビが初代王者に輝き、以降はイタリア人ライダーを中心に勝者を輩出。徐々に国際化を進めていくと、エディ・メルクスやフィリップ・ジルベールといったベルギー人選手や、エガン・ベルナルといったグランツールレーサーも主役に名を挙げた。
この大会最大の特徴が、レースコースが固定されず、年々趣きがまったく異なる点。ときにはスプリンター向けのレースになり、ときにはクライマー中心の展開が繰り広げられたりと、パターンが一定しないのである。だから、過去の優勝者リストには多彩なメンツが記されているし、いつだってどんなレースになるかの予想がつきにくい。昨年だって、ワウト・ファンアールト(ヴィスマ・リースアバイク)の参戦でスプリント勝負になるかと思いきや、早々に遅れたワウトを尻目に4人が逃げ切り。つまりは、何が起こっても不思議ではないレース、なのである。
グラン・ピエモンテ コースマップ
今回のスタート地は、ビエッラ・アルプス山脈の麓に位置するヴァルデンゴ。そこから100km地点を過ぎるまでおおむね平坦。今回のコースで最も難しい区間であるコルマ峠は登坂距離8.7kmで、平均勾配5.4%。この頂上が120km地点で、フィニッシュまでは62km。一度下って、残り45kmを切ったところからクレモジーナ(4.9km、2.9%)、トラヴェルサーニャ(3.1km、4%)の丘越えを立て続けにこなす。これらを終えたら、フィニッシュ地ボルゴマネロを基点とする11.2kmの周回コースへ。半周ほど走ったところでボルゴマネロの街に入って、最終周回の鐘を聞く。すると、あとはフィニッシュに向けた激しい主導権争いだ。レース距離は182km。1カ月ほど前に行われたぶどう祭りの余韻が残るボルゴマネロが、第108回大会の勝者誕生を見守る。
グラン・ピエモンテ コースプロフィール
レース終盤に丘越えが4つ連続した前回と比較すると、今回はいくぶん平坦寄りになったとのコース評。優勝争いは上れるスプリンターが有利との声が高い。
中心的存在となりそうなのが、ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ3勝を挙げてポイント賞に輝いたカーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)と、上れるスプリンターの代表格マイケル・マシューズ(ジェイコ・アルウラー)が挙がる。
グローブスは山岳比重の高かったブエルタで、いくつもの丘越えをこなして複数のステージ優勝へとつなげた。そのブエルタ以降は大きな結果を残していないが、今回のコースならしっかり対応してくるだろう。
マシューズは9月にグランプリ・シクリスト・ド・ケベックで優勝。高低の変化が激しいケベックの市街地コースを巧みに走ってみせた。その後狙っていたUCI世界選手権大会は不発に終わったが、好調は維持しているようだ。
グラン・ピエモンテ
dsmフィルメニッヒ・ポストNLは、今シーズン7勝を挙げているトビアスルンド・アンドレースンとブエルタでのステージ優勝が印象的なパヴェル・ビットネルの2枚看板でタイトル獲りを図る。ともに少々の起伏なら問題なくこなせるから、今回のルートも得意とするところ。展開次第では、ロマン・バルデが重責を引き継ぐことも考えられる。
ワンデーレースを大得意とするヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(アルケア・B&Bホテルズ)や、コービン・ストロング(イスラエル・プレミアテック)も終盤にもつれるとそのスピードが生きる。ジョヴァンニ・ロナルディ(チーム ポルティ・コメタ)も初のビッグタイトルに視界は良好だ。
何度も述べるように、なかなか予想通りにレースが運ばないのがグラン・ピエモンテである。スプリント決着を避けようと、丘陵区間でアタックを試みる選手が必ず出てくるだろう。
今季80勝と驚異の数字をたたき出しているUAEチームエミレーツは、絶好調のマルク・ヒルシがエース。シーズン後半に入ってからは連戦連勝で、イタリアでも4勝を挙げている。直近では10月6日のコッパ・アゴスティーニで勝っており、出場選手の中では群を抜く勢いがある。
昨年はスーダル・クイックステップで出場したバジオーリ
前回覇者のアンドレア・バジオーリはリドル・トレックに移り、チームまたぎでの2連覇に挑戦(昨年はスーダル・クイックステップの一員として出場)。世界選手権4位のトムス・スクインシュとの共闘も楽しみ。
EFエデュケーション・イージーポストは、ニールソン・パウレスに、ベテランのルイ・コスタも加わってチーム力は今大会随一。エースクラスをどう動かすかを注視したい。
アレックス・アランブル(モビスター)やアルベルト・ベッティオル(アスタナカザクスタン)は小集団のスプリントになれば強さを見せるし、マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)には一瞬のアタックで勝負を決められる決定力がある。フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ)は独走でも、スプリントでも勝ち切れる強さが大きな武器。
ちなみに、この大会の2日後には“落ち葉のクラシック”イル・ロンバルディアが控えている。ロンバルディアでの活躍を誓う選手たちが最終調整の場として、さらには前哨戦としてのムードも感じさせることだろう。その意味でも、今大会で活躍する選手をきっちり押さえておく必要がありそうだ。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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