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サイクル ロードレース コラム 2024年9月5日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2024 レースレポート:第17ステージ】雨中のスプリントバトルを制したカーデン・グローブス 思いがけず引き継いだグリーンジャージにも動揺せず「奇妙な状況だったけど、誰かがこのジャージを着ていなければいけない」

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ウェットな路面でリスクだらけのスプリント勝負を制したグローブス

灰色の空から雨が降り注ぎ、気温が低下する中でのレース。前日にはラゴス・デ・コバドンガを上ったプロトンは、ウェットな路面を慎重に進みながら、20年ぶりにフィニッシュ地を務めるサンタンデールの街を目指した。

4人の逃げでしばし進んだレースは、先行したメンバーを確実にキャッチしていった集団によるスプリント勝負。最後は、この日からポイント賞のグリーンジャージを引き継いだカーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)が制し、今大会3勝目を挙げた。

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「今日の目標はステージ優勝、ただひとつだった。チームメートみんな、それぞれにやるべきことを果たしたんだ。今大会3勝目を挙げられて本当にハッピー。チームに報いることができてスペシャルな気分だよ!」(カーデン・グローブス)

建築家フアン・デ・カスティーリョの記念碑前をスタートした第17ステージ。彼はキャリアの大半をポルトガルで過ごしており、今大会の同国開幕ともリンクする。メモリアルなムードに包まれながら、141.5kmのレースが始まる。

前日、グリーンジャージを着ていながらダウンヒルで落車負傷、リタイアしたワウト・ファンアールト(ヴィスマ・リースアバイク)は、幸い骨折は見られず。膝に深い切り傷を負ったため一晩を病院で過ごしたが、これからベルギーに帰国して精密検査を受けるという。昨年、すべてのグランツールを制する大偉業を成し遂げたヴィスマ・リースアバイクだけど、今季は不運の連続。今大会大活躍のワウトの走りでついにそれが晴れるかと思いきや、どうにも苦しい状況は簡単にはぬぐえない。

「いつかはこの状況が終わると良いのだけれど。少なくとも昨日まではその段階には達していなかったようだね」とは、チームを率いるグリシア・ニールマン氏。

疲労を考慮したマイケル・ウッズ (イスラエル・プレミアテック)に加え、サンデル・デペステル(デカトロン・AG2Rラモンディアル)も出走を取りやめ。マイヨ・ロホのベン・オコーナーを擁するリーダーチームは、アシストを1人減らし臨むことを余儀なくされる。

J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル

【ハイライト】ブエルタ・ア・エスパーニャ 第17ステージ|Cycle*2024

このあと乳牛も選手と並走

そうして始まったレースは、早々に飛び出したヨナス・グレゴー(ロット・デスティニー)、ティボー・ゲルナレック(アルケア・B&Bホテルズ)、トマ・シャンピオン(コフィディス)、シャビエル・イササ(エウスカルテル・エウスカディ)の4人が先導。散発的に追走を狙った動きが見られたものの、いずれも先頭合流には至らない。スタートから1時間が経つ頃には、先頭4選手は集団に対して4分以上のリードを得た。

コース中盤にそびえた2つの2級山岳。瞬間的に20%近い急坂ゾーンが控えたラ・エストラングアダでは、グレゴーが頂上を1位通過する一方で、シャンピオンとイササが後退。その後の下りで追いつくと、次に上ったカラコルでも同様の流れ。レース後半の平坦路に入ると4人逃げの構図が再度整った。

一方、その頃メイン集団ではアルペシン・ドゥクーニンク、dsmフィルメニッヒ・ポストNL、エキポケルンファルマの3チームが中心に立ってペーシングが本格化。じわりじわりと前を行く4人とのタイム差を縮めると、フィニッシュまで30kmを残した段階でおおよそ2分差。完全に射程圏内に捉えて、その5km先では約1分40秒差に。直後に通過した中間スプリントポイントはシャンピオンが1位通過し、メイン集団ではグローブスが先着。全体5位通過で10点を加算させている。

先頭4人は最後まで信じてフィニッシュラインを目指す

スタートから降り続いた雨は、残り20kmを切ったあたりからさらに強まって、レース全体に緊張感をもたらす。それでもメイン集団の勢いは増す一方で、残り16kmではヴィクトル・カンペナールツ(ロット・デスティニー)がアタック。これで急激にアクティブになった集団は、逃げのメンバーをすぐ目の前に捉えられるところまでやってきた。

ラウンドアバウトを含んだテクニカルなルーティングもあり、残り10kmを切ってからは逃げとの差をなかなか詰められずにいた集団だったが、残り2.6kmでついにキャッチ。同時にマウロ・シュミット(ジェイコ・アルウラー)とマックス・プール(dsmフィルメニッヒ・ポストNL)がカウンターで飛び出すと、カンペナールツも追随。スプリントを狙うdsm勢はプールが抑え役になって、シュミットとカンペナールツを好きには逃がさない構えだ。

2級山岳は思いのほか激勾配が続いた

3人が先行したまま残り1kmを示すフラムルージュを通過。乱れていたメイン集団は、アルペシン・ドゥクーニンクがスプリントトレインを立て直すと、最終コーナーを抜けたところで追いつくことに成功。タイミングを同じくしてスプリントが始まると、グローブスのグリーンジャージが雨に映える。パヴェル・ビットネル(dsmフィルメニッヒ・ポストNL)の追い上げをかわし、一番にフィニッシュラインを駆け抜けた。

「ウェットな路面でリスクだらけのスプリントだった。でも、僕たちのチームはとても強かったから、何としても勝って証明したかったんだ。残り数キロでアタックする選手が出るであろうことも想定していたから、慌てることはなかったよ」(グローブス)

ワウトのリタイアによって舞い込んできたポイント賞のグリーンジャージ。今大会3勝目を挙げて、ここからは無事にマドリードへと運ぶことがミッションになる。残るステージは山岳と個人タイムトライアルで、この日が実質最後のスプリントチャンスだった。ワウトの大会離脱を惜しみながらも、「ロードレースは何が起こるか分からないから」と、ここまで集中して走り続けてきたことを強調する。

「昨日まではポイント賞2位を維持することにフォーカスしていた。ワウトのアクシデントを望んでいたわけではないけど、“もしかしたら”ということもあるからね。こうしてグリーンジャージが僕に届いたけど、それがロードレースであり、プロスポーツなんだ。レースをやれば誰かが勝つし、誰かがジャージを着ていなければいけない。奇妙な状況ではあったけど、動揺はないよ」(グローブス)

このステージは、オーストラリア人選手が4賞中3つを占める、同国にとってはスペシャルデーでもあった。オコーナーはマイヨ・ロホをキープし、グローブスは前述の通り、山岳賞ではジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ)が2位に14点差をつけている。3人は引き続き、各賞のリーダーとして翌日のスタートラインに並ぶ。

「チームが違えど仲間の勝利に立ち会えるのは、いつだって嬉しいことだよ。オーストラリアの自転車界にとっても素晴らしい1日になったね。個人的には今日のステージでは楽をさせてもらって、良いリカバリーになった。明日もジャージを守ることに集中しながら走るとするよ」(ベン・オコーナー)

僅差となっている個人総合争いは、オコーナーから5秒差でプリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)、同じく1分25秒差でエンリク・マス(モビスター チーム)、1分46秒差でリチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト)が続く。残る4ステージが、戦いのすべてを見届ける。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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