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サイクル ロードレース コラム 2024年8月26日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2024 レースレポート:第9ステージ】アダム・イェーツが前半戦の最難関で逃げ切り優勝…カラパスが総合3位に急浮上

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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UAEチームエミレーツのアダム・イェーツが今大会初区間賞

UAEチームエミレーツのアダム・イェーツが今大会初区間賞

第79回ブエルタ・ア・エスパーニャは8月25日、開幕からの9日間の締めくくりとなる第9ステージが行われ、UAEチームエミレーツのアダム・イェーツ(英国)が2位に1分39秒差をつける独走で大会初優勝。第6ステージで首位に立ったデカトロン・AG2Rラモンディアルのベン・オコーナー (オーストラリア)が区間3位でボーナスタイム4秒を獲得。総合2位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とのタイム差を3分49秒から3分53秒に広げた。

タデイ・ポガチャルを擁してジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスを連覇したUAEチームエミレーツは、ジョアン・アルメイダ(ポルトガル)とアダム・イェーツをツートップに起用してグランツール全制覇を目指していた。ところが前日、アルメイダが4分53秒遅れの60位でゴールし、総合3位から9分06秒遅れの26位に陥落した。そしてこの日、アルメイダはコロナ罹患が判明して出走せず。9分27秒遅れの総合27位と低迷しているアダム・イェーツがなんとかしなくてはならない状況に追い込まれていた。

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大会9日目、8月25日の第9ステージはモトリル〜グラナダ間の178km。シエラネバダの山岳を走るルートで、カテゴリー1級の山岳が2つあり、2つ目の峠は2度上る。獲得標高は今大会で2番目に多い4370m。今大会のクイーンステージの一つである。最初のエル・プルチェは距離8.9km、平均勾配7.6%、最大勾配17%。2度上るアサリャナスは距離7.1km、平均勾配9.5%、最大勾配20%というから恐ろしい。

1回目の休息日を前にして、攻撃を仕掛けようとする選手たちのモチベーションが高まっていた。舞台は過去の大会でも激しいバトルが展開されたシエラネバダ山脈だ。ポイント賞ジャージを着用するヴィスマ・リースアバイクのワウト・ファンアールト(ベルギー)、グルパマ・FDJのエースながらここまで際立ったアピールができていないダヴィド・ゴデュ(フランス)、そしてツートップの一翼を失ったUAEチームエミレーツのアダム・イェーツらが勝負を仕掛けた。

口火を切ったのはファンアールトだ。すぐに多くのアタッカーがその動きに乗った。ジェイ・ヴァイン、アダム・イェーツ、マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ)、オスカル・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ)、カスパー・アスグリーン(ティーレックス・クイックステップ)、パトリック・コンラッド、マティアス・ヴァチェク(リドル・トレック)、クインテン・ヘルマンス、クサンドロ・ムーリッセ(アルペシン・ドゥクーニンク)、 ヨナス・グレゴー(ロット・デスティニー)、ゴデュ、シュテファン・キュング(グルパマ・FDJ)、ダレン・ラファーティー、ジェームズ・ショー(EFエデュケーション・イージーポスト)、ネルソン・オリヴェイラ(モビスター)、トースタイン・トレーエン(バーレーン・ヴィクトリアス)、フェリックス・エンゲルハート、クリス・ハーパー(ジェイコ・アルウラー)、マックス・プール(dsmフィルメニッヒ・ポストNL)、ルーベン・フェルナンデス、ヘスス・エラダ、ヨナタン・ラストラ(コフィディス)、パブロ・カストリーリョ、パウ・ミケル(エキポケルンファルマ)ら26人が第1集団を形成した。

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【ハイライト】ブエルタ・ア・エスパーニャ 第9ステージ|Cycle*2024

このなかで総合成績の上位はゴデュが6分30秒遅れ、アダム・イェーツが9分27秒遅れ、プールが10分8秒遅れ。この第1集団に選手を送り込んでいないデカトロン・AG2Rラモンディアルとレッドブル・ボーラ・ハンスグローエが第2集団の先頭に立ってタイム差を管理する役目を負った。

残り90km、その日最初の山岳であるエル・プルチェの麓で、EFエデュケーション・イージーポストのリチャル・カラパス(エクアドル)が第2集団から飛び出して、5分前を走る先頭をたった1人で追いかけ始めたのである。レースはこの動きをきっかけに一気に活性化した。

先頭集団ではソレルが猛烈なペースで走り始め、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエの追い上げに抵抗する構えを見せた。エル・プルチェの頂上はゴデュが先頭で通過。カラパスは2分35秒差まで追い上げていて、第2集団は5分差でここを通過した。

先頭集団の中でマルク・ソレルらが勝負を仕掛けていく

先頭集団の中でマルク・ソレルらが勝負を仕掛けていく

2度上りのアサリャナスでさらに戦いは激しさを増した。1回目の登攀で、ヴァインがさらにハードルを上げた。このオーストラリアのヒルクライマーに続くのは、チームエースのイェーツとゴデュだけになった。

イェーツは頂上まで5km、フィニッシュまで残り58.5km地点で単独になった。カラパスは第1集団にいたカストリーリョとともにゴデュとヴァインに追いつくが、イェーツまでは捉えきれない。イェーツは2分50秒リードして2度目の上り坂に突入。この時点でメイン集団は6分40秒遅れだ。

独走のイェーツを追って、エンリク・マス(モビスター)が頂上から約6kmの地点でアタック。パヴェル・シヴァコフ(UAEチームエミレーツ)だけが追撃を試みるが、マスについていけなかった。マスは頂上総合優勝争いの他選手との差を1分に広げていた。

総合3位の位置にいるマスはさらに順位を上げていきそうな展開となったが、グラナダに向かう下り坂でバイクコントロールを失った。幸いにも落車は回避したがコースアウト。結局、ログリッチらの有力選手は残り1kmでマスに追いつき、ゴデュも同様に捉えた。ログリッチが捕まえることができなかった上位選手は総合18位の位置にいるカラパスだけだった。

フィニッシュまでの下り坂でもトップを譲らなかったアダム・イェーツがシエラネバダ山脈の象徴的な山岳を舞台とした第9ステージを制覇。本人やUAEチームエミレーツにとってここまでのブエルタ・ア・エスパーニャは残念な結果ばかりだったが、最初の休息日を前にして見事なワンマンショーを披露した。スペインのビルバオで開催された2023ツール・ド・フランスの第1ステージに続いて、2度目のグランツール区間優勝を果たした。

「これまでこんな苦しみは経験したことがなかった。とても暑かった。最後の上りから全力で走っていたけど、どこまで行けるかわからなかった。グランツールではここ数年不運に見舞われてばかりで、本当にうまくやれるか分からなかった」とイェーツ。

「それでもグランツールのステージでまた優勝することができてうれしい。マルク(ソレル)とジェイ(ヴァイン)がブレイクを牽引してくれた。素晴らしいチームワークだった。彼らは僕を完璧に援護してくれた。マルクはペースを超高速に保つ素晴らしい仕事をし、アサリャナスではジェイも超ハードに走り、僕とゴデュだけになった。ゴデュが暑さで苦しんでいるのが分かった。僕も苦しかったけど、行くしかないと分かっていた。そしてそこからは、ゴールラインまでずっと苦しみ続けた。正直、総合順位なんてどうでもいい。今日はステージがすべてだった」

1分39秒遅れまで迫って2位でフィニッシュしたのはカラパスだ。残り約90kmで勇気をもって総合のトップグループから飛び出したことで一気に総合3位に順位を上げた。マスもチャレンジしたが下り坂で危険なミスをして追いつかれた。

総合1位のベン・オコーナーはチームメイトのサポートに感謝

総合1位のベン・オコーナーはチームメイトのサポートに感謝

総合1位のオコーナーは3分45秒遅れの区間3位でゴール。ログリッチやティーレックス・クイックステップのミケル・ランダ(スペイン)も同タイムだったが、オコーナーはボーナスタイム4秒を獲得。ログリッチとの差をわずかだが広げた。

「アダム・イェーツが勝ったことはうれしい。今日は彼の逃げを許してしまったんだけど、絶対に注意しなければならない選手というわけでもなかった。カラパスは意外だった。とても長く粘った」とオコーナー。

「マルクとジェイが完璧にお膳立てしてくれた」と語るアダム・イェーツ

「マルクとジェイが完璧にお膳立てしてくれた」と語るアダム・イェーツ

「この日のチームワークにとても満足している。本当に落ち着いていたと思う。フェリックス(フェリックス・ガル)が最後の上りで素晴らしかった。だから今日はタイムを失わなかった。まだ戦う気は満々だよ。これからは1秒1秒が大事だ。最終的には自分の実力を発揮できたと思うので誇りに思う」

バーレーン・ヴィクトリアスのアントニオ・ティベーリ(イタリア)がリタイアし、ヤングライダー賞はログリッチのアシスト役、総合6位のフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ)に移った。

「今日の目標はプリモシュ(ログリッチ)のために走ることだった。いい仕事をしたと思う。最後の上りで引っ張れた。ヤングライダーを争うライバルたちが全員落ちるとは思っていなかったが、今は純白ジャージを着ることができて満足している」とリポヴィッツ 。

「うれしいことに明日は休み。今のところプリモシュとは話をしていないけど、総合順位の上位選手たちと一緒に走れたので、まだ2週間残っているけど大丈夫だ。純白ジャージのために走るとは思っていなかったが、これからの2週間でどうなるかみてみたい」

ワウト・ファンアールトは「セップ(クス)のためになにかしたくて、逃げ集団に入った。最初からトライしてみようと思ったし、いいグループだった。でも、自分が望むほど長く粘れるほどの体力がなくてあまり活躍できなかった」とコメント。

「アダム・イェーツと2人のチームメイトは強かった。ソレルとヴァインはやるべきことがわかっていたし、彼らはチームとして本当によくやった。無線でアダム・イェーツとのギャップがかなり大きいと聞いたので、彼の勝利を認めざるを得なかった。もちろん、休息日が楽しみだ。最後の2日間は山岳でかなり厳しかったので、休息日に再調整したい」

文・山口和幸

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山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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