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サイクル ロードレース コラム 2024年8月10日

ウィメンズプロトンのオールスター! オランダ開幕、最終決戦はラルプ・デュエズ フォレリングの2連覇はあるか!?【Cycle*2024 ツール・ド・フランス ファム:プレビュー】

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ツール・ド・フランス ファム

女子選手の最高峰のたたかい、2024年の最終決戦地はラルプ・デュエズ 

男子のツール・ド・フランスが閉幕後すぐにパリ五輪を迎えたが、バトンタッチのごとく今度は「女子版ツール・ド・フランス」ツール・ド・フランス ファムが幕を開ける。第3回大会は8月12日から18日まで、全8ステージで争われる。

ロードレースシーンにおける存在感、ならびにその価値が十分に確立され、注目度も上がるばかり。大会そのものの歴史は浅いが、いまに至るまで主催者、関係者、そしてウィメンズプロトンに身を置く選手たちの尽力は大きなものがあった。

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女子版のツール・ド・フランスが初めて開催されたのは1955年。当時はその1回限りだったが、1984年に復活。1989年まで継続して実施された。このときは男子ツールと同時開催され、フィニッシュ地を共通化するなどの工夫がなされた。運営も、その頃の主催者であるツール・ド・フランス協会が担った。

しかし、1990年の開催を断念すると、以降長くウィメンズプロトンがツールに触れる機会は設けられなかった。「女子版ツール・ド・フランス」と銘打って行われたレースはあったものの、主催がツールとは異なっていたことや、財政難、注目度の低さ、そして何よりツールを運営するA.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)との権利問題が大きな壁になった。

こうした状況を打破したのは、レースを走るライダーたちだった。いまもウィメンズプロトンのキャプテンを務めるマリアンヌ・フォス(ヴィスマ・リースアバイク)ら数人が、A.S.O.に女子版ツールの開催を嘆願したのが2013年。これが世界中で大きく報道され、さらには約10万人もの署名集めに成功。A.S.O.は2014年、ツール関連イベントとしてウィメンズレース「ラ・コルス・バイ・ル・ツール・ド・フランス」を立ち上げた。

初年度は男子ツールの最終ステージに先立って、シャンゼリゼ通りで開催。初代女王にはフォスが輝いた。以降、数年間は男子ツールと併催。そこには、男子ツールとの「ステージ共有」や「両レースの連動性によるメディア配信の効率性」といった、A.S.O.のねらいがあった。

ツール・ド・フランス ファム

スタートの瞬間を待ちわびる

しかし、ウィメンズプロトンからは「男子レースの陰に隠れてしまっている」「運営努力に欠けている」といった批判が相次いだ。男子ツール同様に平坦・丘陵・山岳・タイムトライアルと、複数の要素で構成されるステージレース化を求めたが、当時のA.S.O.は物流上、財政上の理由から男女同時期の開催は困難と判断。持続可能なイベントを目指し、あらゆる工夫が必要との見解を示した。

2021年まではワンデーイベントとして開催されることが多かったラ・コルスは、2022年に「ツール・ド・フランス ファム」としてステージレース化するため発展的に解消。A.S.O.はマリオン・ルッスさん(ジュリアン・アラフィリップのパートナー)をレースディレクターに迎えるとともに、ズイフト社と5年間のタイトルスポンサー契約を締結。全8ステージによるウィメンズプロトンのトップレースに仕立て上げた。

現行のレース形態になり、ラ・コルス時代よりはるかに総合力が問われ、選手ひとりひとりの個性や脚質が生かされるようになった。初代女王はアネミエク・ファンフルーテンが戴冠し、昨年はデミ・フォレリング(SDワークス・プロタイム)がビッグタイトルを手にした。

そして今年。第3回大会にして初めて、フランスを飛び出して国外開幕が実現。オランダ・ロッテルダムがグランデパール(開催地)を務める。総距離は949.7kmで、第5ステージの半ばにフランス入国後は、東部の丘陵地帯やアルプス山脈をゆく。

ツール・ド・フランス ファム

ツール・ド・フランス ファム 全体図

第1ステージ 8月12日 ロッテルダム~ハーグ 123km 平坦
第2ステージ 8月13日 ドルトレヒト~ロッテルダム 69.7km 平坦
第3ステージ 8月13日 ロッテルダム~ロッテルダム 6.3km 個人タイムトライアル
第4ステージ 8月14日 ファルケンブルフ~リエージュ 122.7km 丘陵
第5ステージ 8月15日 バストーニュ~アンネヴィル 152.5km 平坦
第6ステージ 8月16日 ルミルモン~モルトー 159.2km 丘陵
第7ステージ 8月17日 シャンパニョル~ル・グラン=ボルナン 166.4km 山岳
第8ステージ 8月18日 ル・グラン=ボルナン~ラルプ・デュエズ 149.9km 山岳

ツール・ド・フランス ファム

マイヨ・ジョーヌ着用するロッテ・コペッキー

オープニングは123kmの平坦ステージ。スプリンターが今大会最初のマイヨ・ジョーヌ着用者となることを目指してスピード勝負を繰り広げる。

第2・第3ステージは同日実施。69.7kmの平坦ルートによる第2ステージは、オールフラットに近い一方で強い風がプロトンを襲う可能性があるとの見方も。ロッテルダムに戻って行われる第3ステージは、6.3kmの個人タイムトライアル。短距離ながら、ここで発生したタイム差が後々の個人総合争いに影響することも考えられる。

ツール・ド・フランス ファム

第4ステージ

オランダからベルギーへ移る第4ステージは、8つの丘越えをこなすクラシックレースさながらのレイアウト。リエージュ~バストーニュ~リエージュで通過するラ・ルドゥットやフォルジュ、ラ・ロシュ・オー・フォーコンがレース後半の重要区間になる。

ツール・ド・フランス ファム

第5ステージ

第5ステージでいよいよフランスへ。ベルギー・バストーニュを出発後、中間地点を前にフランスに入国し、いくつかの丘越えをこなしながらフィニッシュへ向かう。主催者設定のカテゴリーは平坦。スプリンターにとって最後のステージ優勝のチャンスか。

ツール・ド・フランス ファム

第6ステージ

丘陵区間を行く第6ステージ。登坂区間の多くがレース後半に集中しており、メイン集団の人数が絞り込まれそう。この日最後の山岳ポイントであるコート・デ・ファンの頂上にはボーナスタイムが設定される。

ツール・ド・フランス ファム

第7ステージ

マイヨ・ジョーヌ争いは、最後の2日間が大きな意味を持つことになる。今大会最長の166.4kmで競う第7ステージは、2級山岳シナイヨンの頂上へ。前半には1級山岳クロワ・ド・ラ・セラ(登坂距離12km、5.1%)で脚を試したのち、3つのカテゴリー山岳をクリア。シナイヨンまでの7kmは平均勾配5.1%を上る。

ツール・ド・フランス ファム

第8ステージ

そして、最終・第8ステージが真の最終決戦。フィナーレにふさわしいルートが用意された。まず序盤に2級タミエ峠を越えたのち、平坦区間を進んで中間地点を通過。そこからは女王を決める2つの超級山岳へのアタック。先に上るグランドン峠は登坂距離19.7kmで、平均勾配7.2%。この頂上に達する頃には、前線は精鋭メンバーに絞り込まれていることだろう。その状態からいよいよラルプ・デュエズへ。7日前にロッテルダムをスタートし、900km以上走ってきた脚は13.8km・8.1%の急勾配にどう反応するだろうか。前日までのレース展開にもよるとはいえ、やはりラルプ・デュエズこそが今大会の覇権を決定づける絶対的なポイントとなるはずだ。

ツール・ド・フランス ファム

個人タイムトライアルを走るマーレン・ロイサー

レースのルールも押さえておきたい。個人TTステージをのぞく7ステージで、フィニッシュ上位3選手にボーナスタイムを付与。1位10秒、2位6秒、3位4秒。また第4・第5・第6ステージの終盤にはボーナスタイムが用意されていて、通過順に1位6秒・2位4秒・3位2秒。

中間スプリントポイントは各ステージ1カ所ずつで、1位から15位までの通過順にポイントを付与。フィニッシュでのポイント配分は、コースレイアウトに応じた設定になっている。山岳ポイントも超級から4級までカテゴリーごとに配点が変動。超級山岳を例にすると、一番に登頂した選手には15点が付与される。ステージごとの敢闘賞ライダーの選出や、制限時間も設定される。

そんな壮大な戦いには、UCIワールドランキング上位20人中18選手が集結。まさにウィメンズプロトンのオールスターが勢ぞろいだ。

最大の注目は、フォレリングの個人総合2連覇なるか。昨年、ついにファンフルーテンから女王の座を奪取し、さらに長期政権を築き上げようという段階にある。5月にはラ・ブエルタ フェメニーナを制しており、ツールを勝てば「ダブル・ツール」達成だ。今季は出場したステージレースすべてで個人総合優勝。山岳での強さが際立っており、安定して上位入りできるタイムトライアルと合わせても、今のウィメンズプロトンにおいてはNo.1のオールラウンダーであることは間違いない。

もちろん、他の選手たちもありとあらゆる戦術で打倒フォレリングを試みる。エリーザ・ロンゴボルギーニ(リドル・トレック)は、7月にジロ・デ・イタリア ウィメンで個人総合優勝。こちらも「ダブル・ツール」がかかっている。リドル・トレックはガイア・レアリーニも控えており、どちらでも勝負できる態勢を整える。キャニオン・スラムも同様に、過去2大会で個人総合3位を収めているカタジナ・ニエウィアドマとジロ個人総合3位のニーヴ・ブラッドバリーの2枚看板で勝負。

ツール・ド・フランス ファム

フォレリングの個人総合2連覇なるか

ブエルタで個人総合2位となったリーアンヌ・マルクス(ヴィスマ・リースアバイク)や、ジュリエット・ラブース(dsmフィルメニッヒ・ポストNL)も総合表彰台を狙う。エヴィータ・ムジック(エフデジ・スエズ)にも、地元フランス勢としての期待が高まっている。

大会前半戦の見どころとなるスプリンター陣の競演は、ロレーナ・ウィーベス(SDワークス・プロタイム)を筆頭に、フォス、シャーロッテ・コール(dsmフィルメニッヒ・ポストNL)の名が真っ先に挙がる。3人ともにオランダ人ライダーとあり、同国での第1ステージを勝って一番にマイヨ・ジョーヌに袖を通そうとモチベーションが高い。そこへエリーザ・バルサモ(リドル・トレック)も加わると、一気に水準が高まる。

パリ五輪のロード競技で金メダルを獲った2選手もスタートラインに並ぶ。個人タイムトライアルを勝ったグレース・ブラウンはエフデジ・スエズの一員として、ロードレースを勝ったクリステン・フォークナーはEF・オートリー・キャノンデールのメンバー入りが決まっている。

なお、前回大会でポイント賞を獲得したロッテ・コペッキー(SDワークス・プロタイム)は、五輪でロード・トラックとフル回転したこともありツールは回避する。

レースの華、4賞ジャージは男子と同様、個人総合時間賞「マイヨ・ジョーヌ」、ポイント賞「マイヨ・ヴェール」、山岳賞「マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ」、ヤングライダー賞「マイヨ・ブラン」。このほか、チーム総合時間賞、スーパー敢闘賞の表彰が大会最終日のポディウムで催される。

今大会の賞金総額は25万ユーロ(約4000万円)で、個人総合優勝者には5万ユーロ(約800万円)が贈られる。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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