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【ジロ・デ・イタリア2024 レースレポート:第18ステージ】メルリールがゴールスプリント勝負を制して区間2勝目!ミランは2年連続のポイント賞獲得に王手
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸メルリール(中央)がミラン(右)を制した
第107回ジロ・デ・イタリアは5月23日、フィエラ・ディ・プリミエロ〜パドヴァ間の178kmで第18ステージが行われ、スーダル・クイックステップのティム・メルリール(ベルギー)がゴールスプリント勝負を制して優勝。第3ステージに続く今大会2勝目、大会通算3勝目を挙げた。
首位のリーダージャージ、マリア・ローザを着用するUAEチームエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)は他の有力選手とともにタイム差なしの30位でフィニッシュ。総合2位ダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)との差は変わらず7分42秒。大会は残り3ステージ。
イタリア北部が舞台となる終盤戦。この日は山岳エリアから南下して、アドリア海にも近いパドヴァを目指す平坦ステージだ。フィエラ・ディ・プリミエロをスタートすると、17.6km地点のラモンに4級山岳があるだけで、前半は下り基調。後半はゴールまで平坦路だ。
リドル・トレック勢がエーススプリンターのジョナサン・ミラン(イタリア)に勝たせるために、逃げた選手を吸収して最後のゴール勝負に持ち込む作戦を取ることが予想された。チューダープロサイクリングチームのアルベルト・ダイネーゼ(イタリア)のホームタウンでもあり、このスイスチームも最後の主導権争いに加わってくるはずだ。
2024ジロ・デ・イタリア第18ステージ
残念ながらこの日も雨が降りしきる中を選手団がスタートした。ポルティ・コメタやVFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネら、この大会で積極的に動いてステージ優勝を目指すチームがアタックしていく。しかしスタート直後は緩やかな下り坂で、集団全体のペースが高く、そのため逃げが決まらない。
レースが動いたのは4級山岳の上りに入ってからだ。EFエデュケーション・イージーポストのミッケルフレーリク・ホノレ(デンマーク)、ポルティ・コメタのミルコ・マエストリ(イタリア)とアンドレア・ピエトロボン(イタリア)、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネのフィリッポ・フィオレッリ(イタリア)の4選手が先頭グループを形成した。
それでもメイン集団は落ち着いていた。リドル・トレックとスーダル・クイックステップがしっかりとペースメークして、最大でも2分半のタイム差でレースを進めていく。残り60km地点でそのタイム差がわずかになるとメイン集団からヴィスマ・リースアバイクのエドアルド・アッフィニ(イタリア)が抜け出して先頭グループに追いつき5選手となった。
街はピンク色
しかしスプリンターを擁するチームは容赦ない。残り10kmで逃げていた全ての選手を吸収し、予想通りに大集団のゴールスプリント勝負へ。パドヴァはヴェネツィアとヴィチェンツァに挟まれた歴史の古い都市で、しかもゴールは市街地に設定されている。沿道とフィニッシュ地点の広場には大観衆が押し寄せた。それに至る道路はクルマのスピードを抑制する凸部があったり、鋭角コーナーが出現したりする。そんな設定舞台でスーダル・クイックステップ、チューダープロサイクリングチーム、リドル・トレックらが隊列を組んでハイペースでゴールを目指す。
最後の直角コーナーを先頭でクリアしたのはリドル・トレックの牽引役だったが、シモーネ・コンソンニ(イタリア)はエースのミランが大集団の中に埋もれているのに気付き、ここで戦闘を終了。ミランは単独で最後のスプリントに挑むしかなかった。
イスラエル・プレミアテックのユーゴ・オフステテール(フランス)、ダイネーゼ、アルペシン・ドゥクーニンクのカーデン・グローブス(オーストラリア)がスプリントを開始。ようやく前が開けたミランとメルリールがゴール手前で他チームのスプリンターを逆転。メルリールがわずかに先着し、ミランは2位になった。ベルギー勢がジロ・デ・イタリアの1大会でステージ2勝を挙げたのは1987年のロジェ・ド・ブラマンク以来というから久しぶりだ。
メルリール(左)がミラン(右)を打ち破った
2021年の第2ステージ以来の区間優勝となった第3ステージ、メルリールはスプリント開始が早すぎたミランを抜き去って制した。この日のパドヴァでは、リドル・トレックのコンソンニが、ミランが後ろに付いてきていないことに気づいてあきらめた。経験豊富なメルリールがそれを見逃しはずはなかった。単独になってもわずかな位置まで追い込んできたミランはさすがだったが、メルリールはこれで平坦ステージでのミランとの対局を2勝3敗とした。グランドフィナーレのローマで最後の戦いが待っている。
この勝利により、メルリールはシーズンの勝ち星を9にした。ポガチャルは今大会の5勝を含めてすでに12回優勝しているが、今シーズンの前半戦で最も成功を収めているスプリンターとして優れたレベルを改めて示している。
「チームメートのジュリアン・アラフィリップと、今日もやってやろうと話し合っていた。レース中に僕らは常にいいポジションで走っていた。最後の1kmがかなり速かったのにはちょっとびっくりしたけど、スプリントを始めるタイミングはしっかりとわかった。接戦だったけど、自分の速さには自信があった」とステージ優勝したメルリール。
グランツール3週目にも勝てるという実力を見せつけたかったという。この大会が終わるまでの日数を数え、チャンスのステージのために山岳ステージを乗り越えてきた。
「みんなが僕をいいポジションに連れていってくれた。アラフィリップたちの後ろをキープして走った。残り2kmでポジション争いが始まったので、残り900mの最終コーナー手前でチームメイトにポジションを上げていくように頼んだ。最終コーナーで好位置を失ったのは焦ったが、フィニッシュラインの300m手前でベストな位置を確保した」
ミランは2位に甘んじたものの、ポイント賞のトップを堅持。初参戦だった前年を含めて39日間のうち35日もマリア・チクラミーノを着用していることになる。ミランがこのシクラメン色のリーダージャージを獲得できなかったのは2023年の第1ステージでレムコ・エヴェネプール、2024年の最初の3ステージでジョナタン・ナルバエス、フィオレッリ、メルリールが獲得した日だけだ。
ミランのポイント賞総得点は327点で、同2位のグローブスの200点に大差をつけていて、無難に最終日まで走りきれば2年連続の受賞となる。
マリア・ローザを守ったポガチャル
総合成績ではポガチャルがこれで17日間マリア・ローザを着用することに成功した。1995年に総合優勝したスイスのトニー・ロミンゲルが21日間着用したという記録があるが、21世紀になってからは最長日数となる。
「今日はいい一日で、速いフィニッシュと速いステージだった。雨が降る前にパドヴァに到着できてとてもうれしい」とマリア・ローザのポガチャル。ゴール後はステージ10位に終わったチームスプリンターのフアン・モラノについて言及した。
「フアン・モラノとも同じ成功を分かち合いたい。ここ数週間で僕たちがやってきたことは、ピュアなチームワークだ。モラノも僕のために多くのことをしてくれた。平坦ステージのスプリントで彼にはチャンスがあったけど、今日は終盤が混沌としていたし、僕がアシストとして牽引することは難しかった。最終日のローマでマリア・ローザを獲得することが主な目標ではあるけど、ローマではモラノがステージ優勝するチャンスがあることを知っている」(ポガチャル)
文:山口和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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