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サイクル ロードレース コラム 2024年5月6日

フォレリングが悲願の初総合優勝、区間2勝と山岳賞も獲得【Cycle*2024 ラ・ブエルタ フェメニーナ:レビュー】

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ラ・ブエルタ フェメニーナ

第8ステージのフィニッシュで自転車を掲げたフォレリング

スペインを舞台とした女子ステージレースのラ・ブエルタ フェメニーナが4月28日から5月5日までの全8ステージで開催され、チームSDワークス・プロタイムのデミ・フォレリング(オランダ)が悲願の初優勝を遂げた。2023年は9秒差の総合2位で、オランダの先輩格アネミエク・ファンフルーテンに逆転負けを喫していた。

男子のグランツール、いわゆる三大ステージレースは23日間の日程を基本として開催される。それぞれにある女子版は日曜日に開幕し、1週間後の日曜日に終幕する8日間の日程が定着しつつある。例外的に2024ツール・ド・フランス ファムは、8月11日のパリ五輪閉会式に配慮して、翌12日月曜開幕の全7ステージにスケールダウン。つまり今季のラ・ブエルタ フェメニーナは世界最大級の女子ステージレースに昇格したと言える。

2023ツール・ド・フランス ファムで、絶対女王ファンフルーテンを倒して初優勝したのがフォレリングだ。アシスト役はそのシーズン終盤に世界チャンピオンとなるロッテ・コペッキー(ベルギー)だった。フォレリングのツール・ド・フランス ファム初制覇は新時代への転換期となり、ファンフルーテンはシーズン終了をもって引退した。

だから2024年はフォレリングの時代だと誰もが思った。ところが前年は連戦連勝した春のクラシックレースで一度も勝利できなかった。頼りのコペッキーはパリ五輪トラック競技で複数の金メダル獲得を目指して、春が終わるとロードレース活動を停止。フォレリングは力強いサポートが不在で臨むラ・ブエルタ フェメニーナとなった。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

チームタイムトライアルを制したリドル・トレック。左端がレアリーニ

4月28日、地中海沿岸のバレンシアで開幕。第1ステージはこの大会の恒例となったチームタイムトライアルだ。距離16kmのレースは大接戦となり、リドル・トレック(米国)が1秒に満たない僅差でヴェスマ・リースアバイク(オランダ)を制して優勝。リドル・トレック勢の中で最初にフィニッシュラインを通過したガイア・レアリーニ(イタリア)が総合1位のリーダージャージ、マイヨ・ロホを獲得した。

27歳のフォレリングが「いい走りをする超若い女の子」とマークしていた22歳だ。

J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル

【ハイライト】ラ・ブエルタ フェメニーナ 第8ステージ|Cycle*2024

「私にとってもチームにとっても素晴らしい結果」とレアリーニ。
「私たちはこれからの数ステージでマイヨ・ロホを守っていくことは間違いなく、もちろん最終日のマドリードまで守り切るつもり。今日のような平坦コースは上りで実力が発揮できる私にとってはベストではないけど、チームが完璧な戦略を持っていたので、このステージを勝つことができた」

レアリーニは2023年にトレック・セガフレードでデビュー。身長150cm、体重40kgで、山岳に強いオールラウンダーだ。2023ラ・ブエルタ フェメニーナでは、チームエースで同じイタリアのエリーザ・ロンゴボルギーニのアシスト役として見事な働きをこなし、注目されている逸材。

フォレリングを擁するチームSDワークス・プロタイムは1秒遅れの3位。フォレリングは総合13位からのスタートとなった。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

2日間首位に立ったバシュ

翌日はブニョール〜モンコファ間の118.5kmで第2ステージが行われ、2023パリ〜ルーベで優勝してダンスを披露したカナダチャンピオンのアリソン・ジャクソン(EFエデュケーション・キャノンデール)がゴール勝負を制して初優勝した。チームSDワークス・プロタイム勢は、同タイムの2位に入ったハンガリーチャンピオンのカタブランカ・バシュが、中間スプリントで2着通過の4秒、ゴールで6秒のボーナスタイムを獲得し、総合成績で首位に立った。

バシュはMTBクロスカントリーやシクロクロスの強豪選手としてハンガリーチャンピオンのタイトルを複数回獲得。2021年の東京五輪MTBクロスカントリーではスイス勢3人に続いて4位に入った実績を持つ。

「今日は最高の脚ではなかったけど、非常にテクニカルなフィニッシュだったことは私にとってアドバンテージだった」とバシュ。
「ボーナスタイムを狙うつもりはなかったけど、中間スプリントでまず獲得できたので挑戦してみた。マイヨ・ロホを着られるのは素晴らしいことだし、それをチームで守っていくことがこれからの目標」と、エースはあくまでもフォレリングであることを示唆した。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

ステージ2勝とポイント賞を獲得したフォス

第3ステージはヴィスマ・リースアバイクのマリアンヌ・フォス(オランダ)がゴール勝負を制して優勝。総合成績では前日に首位に立ったバシュがフォスを1秒差ながら上回ってマイヨ・ロホを守った。

続く第4ステージはEFエデュケーション・キャノンデールのクリステン・フォークナー(米国)が逃げ切り優勝した。フォスが中間スプリントポイントとゴールでボーナスタイムを稼ぎ、総合成績でバシュを逆転して首位に立つ。

そして戦いはピレネー山脈へ。ウエスカ〜ハカ間の114kmで行われた第5ステージは男子レースで採用されている難関ルートを通る。ここでフォレリングが独走勝利し、総合成績で首位に立った。ハカのゴールは悪魔のような急勾配で知られるが、フォレリングは残り800mからアタックし、追いすがるヤラ・カステレイン(フェニックス・ドゥクーニンク)とロンゴボルギーニを28秒突き放した。これが待望の今シーズン初勝利だった。

ボーナスタイムも獲得したフォレリングは21秒遅れの総合7位の位置から、大会5日目で一気に首位に。総合2位ロンゴボルギーニとの差は31秒だ。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

ピレネー山脈を目指す

翌第6ステージは2日連続の頂上ゴールとなり、ラ・ラグナネグラへ。この峠はすでにブエルタ・ア・エスパーニャで2回採用されていて、スペイン随一のロードコースとして知られる。レースはFDJスエズのエヴィータ・ムジック(フランス)がステージ優勝するのだが、わずか2秒遅れでゴールしたのがフォレリングだ。総合優勝を争うライバル選手にさらに差をつけて、初優勝に前進した。

「今日はとてもいい感じだった。最後の登りは向かい風のため昨日より少し難しかった。誰かの前にいるか後ろにいるかで大きな違いが生じた。もちろん、他の選手の後ろにつける方がはるかに簡単。エヴィータ(ムジック)を突き放せなかったので、彼女の勝利は当然」とレースをリードしたフォレリング。

「簡単に総合優勝できるとは思っていない。クラッシュなどの事故があればすべてが終わる。チームも私も集中力を維持する必要がある。今日のコースでの向かい風も難敵で、パワフルなエスケープが状況を難しくする可能性もある。私のチームメイトは、一日中レースをコントロールするパフォーマンスを見せた。今日と同じように集中力を維持すれば、必ずマイヨ・ロホを家に持ち帰ることができる」(フォレリング)

平坦基調の第7ステージはフォスがスプリント勝負を制して優勝。首位のフォレリングは2秒遅れの区間4位。総合2位ロンゴボルギーニが区間3位のボーナスタイム4秒を獲得し、その差を56秒から52秒に縮めた。

そして最終日の第8ステージ。ディストリト・テレフォニカ〜ヴァルデスキ/コミュニダード・デ・マドリード間の89.5kmでレースが行われ、最後の6kmでアタックしたのがフォレリングだ。

「結局のところ、この区間で有利になるようにアタックしなければならないと思った」とフォレリング。
「チームは一日中いい仕事をしてくれた。このような厳しい山岳ステージでは少し緊張したけど、この最後の登りはそれほど厳しいとは思わなかった。向かい風があったが、それほど強くなく、追い風になってからは自分のペースで走ることができた」

マイヨ・ロホを身につけたフォレリングが独走勝利。初の総合優勝を獲得した。総合優勝のマイヨ・ロホを獲得しただけでなく、最終日に山岳賞ジャージも奪取。ヴィスマ・リースアバイクのリージャンヌ・マルクス(オランダ)が最後にロンゴボルギーニを逆転して総合2位に。ロンゴボルギーニは3位だった。

「後半の登りでリードを広げることができて、このステージでも優勝できてよかった」とフォレリング。
「このような形でラ・ブエルタ フェメニーナを終えることができて素晴らしい。チームとして、この一週間ここで力強い走りをした。ステージ2勝、総合優勝、そして表彰台もいくつか獲得したことで、チームとして自分たちを誇りに思うことができる」

ラ・ブエルタ フェメニーナ

総合優勝のフォレリングを中央に、左が2位マルクス、右が3位ロンゴボルギーニ

春のクラシックで勝ちたかったのに勝てなかったのは残念だったというフォレリングだが、自らの強さと調子のよさをようやく示すことができ、コンディションは上り調子だ。

「コースはたくさんの登りがあった。すべてのグランツールが女子ロードレースをステップアップさせていることをうれしく思う。この総合優勝がこの夏に向けていいスタートとなることを願っている。スペインで素晴らしいステージレースを走れて、数カ月以内にはツール・ド・フランス ファムに出場したい」

文:山口和幸

代替画像

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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