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【Cycle*2024 ミラノ~トリノ:プレビュー】クラシックシーズンを占う「アンティパスト」 カヴェンディッシュやデマールら経験豊富なスプリンターに加えて留目夕陽も参戦!
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介歴史深いミラノ〜トリノ
イタリア伝統のワンデーレース「ミラノ~トリノ」の2024年大会が3月13日に開催される。今年で105回目を迎えるレースは、加速度を増す春のクラシックシーズンにつなぐ「アンティパスト」(前菜)として、彩りと緊張感を持たせている。
「世界最古のワンデーレース」とのテーマで話を始めると、実のところさまざまな意見が沸き上がる。1892年に始まったリエージュ~バストーニュ~リエージュだという声もあれば、このミラノ~トリノだとの意見も出てくる。
ひとつはっきりしているのは、この大会が1876年に初めて開催された、ということ。つまりはリエージュより前に発足しているのである。
しかし、その後第2回大会まで20年もの月日を要したり、再開したと思いきやまた数年空いたりと、開催そのものがなかなか定着しなかった。また、主催者が数回代わっており、そのたびに大会のコンセプトやテイストにも変化が施されたことで、レースとしての趣きが年々異なっていたこともこの手の議論に影響を与えた。
ちなみに、第1回大会は8人が出走し、半数の4人が完走。初代覇者はパオロ・マレッティとの記録が残されている。そして現在は、ジロ・デ・イタリアと同じくRCSスポルトの主催でレース運営がなされている。
もうひとつ大事な要素として、開催時期とコースの変化が激しい点も挙げておかなければならない。3月に開催されるようになったのが2022年からで(過去に数回3月に開催されたことはある)、それまでは「秋の三連祭壇画」の一戦として10月に行われていた。当時は丘陵…ときに山岳とも捉えられるほどのハードなコースが採用されていて、優勝者としてアルベルト・コンタドールやティボー・ピノといった近年の偉大なライダーの名も記されている。
そんな経緯もあって、簡潔に説明するのが難しい大会ではあるけれど、時期が移ろうと、コースが変わろうと、大きな意味合いを持つレースであることだけは間違いない。今大会の3日後には大事な大事なミラノ~サンレモが控えているけど、それにとどまらず春のクラシックにリンクしていくであろう一戦に今年はなりそうだ。
開催時期とコースの変化が激しいミラノ〜トリノ
今回はミラノ郊外のローを出発。西へと針路をとって、トリノから少し北に位置するサラッサを基点とする周回コースを1回めぐってフィニッシュに達する。レース距離としては177kmと、昨年より約20km短縮。全体的に平坦基調だった前回よりは少しばかりアップダウンが増えていて、スプリンターが最後まで残れるかはレース展開次第といった印象。フィニッシュまでも3.5kmほど上っていて、1~2%の勾配ながらもそれまで踏んできた距離を思うと楽とは言い難い。コースへの適応力がカギになってくる。
それら要因を考慮してか、各チームとも多種多様なメンバーを配備。どんな展開になっても対応できる体制を整えている印象だ。
スプリンターでは、2年前に勝っているマーク・カヴェンディッシュ(アスタナカザクスタン)が、ターゲットレースとして参戦を表明。確実にUCIポイントを獲得するためのシフトをチームが配した関係から、3日後のミラノ~サンレモは回避してこのレースに集中する。15年前に勝ったミラノ~サンレモへの思いを封印して臨むとはいえ、UCIプロシリーズのこのレースでも勝てば200点を付与される。自身のため、チームのため、強い思いで走ることになる。
シーズン序盤からチーム状態が良いアルケア・B&Bホテルズは、こちらも2020年に勝っているアルノー・デマールで勝負。上りに強く、フィニッシュ前でのスピードにも長けている選手としては、イバン・ガルシアとダヴィデ・チモライのモビスター勢、ブライアン・コカールとアクセル・ジングレ(ザングル)のコフィディス勢の名も挙がる。
アルウラー・ツアーで1勝を挙げたカスペル・ファンウーデン(dsmフィルメニッヒ・ポストNL)の戦いぶりや、ソーレン・ヴァーレンショルトとアレクサンダー・クリストフによるウノエックスモビリティのホットラインも見もの。ライリー・シーアン(イスラエル・プレミアテック)は、昨年のパリ~ツールでのジャイアントキリング再現なるか。
前回大会の優勝者はアーヴィッド・デクライン(チューダープロサイクリングチーム)
スプリントのムードを断ち切るべく、上りで仕掛ける選手としてはマルク・ヒルシ(UAEチームエミレーツ)やアルベルト・ベッティオル(EFエデュケーション・イージーポスト)、エイネルアウグスト・ルビオ(モビスター)あたり。彼らがきっと、レースを活性化させることだろう。
そして、日本勢では留目夕陽(EFエデュケーション・イージーポスト)が出走予定メンバーにリストイン。前述のベッティオルや、スピードのあるマライン・ファンデンベルフらを支えつつ、自身も上位入りをかけて走るチャンス。なお、UCIプロシリーズは40位までに同ポイントが付与される。
このレースから、春の大一番につなぐ走りを見せるのは誰だろうか。ミラノ~トリノをきっかけに、推しの選手を見つけてみるのも良さそうだ。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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