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【Cycle*2024 ストラーデ・ビアンケ ドンネ:レビュー】世界女王ロッテ・コペッキーがシエナ・カンポ広場に虹を架ける! マイヨ・アルカンシエルでの勝利に「一生に一度の喜びかもしれない!」
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介ストラーデ・ビアンケ ドンネ表彰台 優勝コペッキー、2位ロンゴボルギーニ、3位フォレリング
最強チームによる“白い道”制圧再び。ちょうど10回目のアニバーサリーだったストラーデ・ビアンケ ドンネは、世界女王の証であるマイヨ・アルカンシエルを着るロッテ・コペッキー(チームSDワークス)が2年ぶり2回目の優勝。レース後半はデミ・フォレリングとのチーム戦に持ち込み、最後はエリーザ・ロンゴボルギーニ(リドル・トレック)との一騎打ちを制した。
「ストラーデ・ビアンケを世界チャンピオンとして勝てるなんて、一生に一度の喜びになるかもしれませんね! 心から喜べる特別な勝利です」(ロッテ・コペッキー)
“白い道”と称される、イタリア・トスカーナ地方の未舗装路「ストラーデ・ビアンケ」が舞台のレースは、前回より1km長い137kmで争われた。最大の特徴であり魅力でもある未舗装区間は、前回の8カ所から12カ所へ一気に増加。この地の良さをレースを通じて発信するとともに、加速度を増すウィメンズレースのレベルアップに合わせるかのように、コース内の難所が増やされた。
それが影響したのか、リアルスタートからしばらくは集団から飛び出す選手が現れず。プロトンは一団のまま、淡々といくつかの未舗装セクションをクリアしていく。
ただ、静かに始まるレースほど、その後のギャップは大きくなるものだ。流れが急変したのは、60kmを地点を過ぎて迎えた5つ目の未舗装セクション「サン・マルティーノ・イン・グラニア」。レース内最長距離の9.5kmに及ぶ未舗装路でリドル・トレックが動く。ウィメンズプロトン最強のチームSDワークスに対抗するだけの戦力を有する彼女たちが、先手を打った格好だ。
集団を60人ほどまでに絞り込むと、第6セクションの急坂を利用して気鋭のオールラウンダー、ニーヴ・ブラッドバリー(キャニオン・スラム)やかつての世界女王であるエリザベス・ダイグナン(リドル・トレック)を含んだ11人が先行を開始した。
一方、メイン集団は先頭グループを常時射程圏に捉えながら進行。チームSDワークスが主導権を取り始めると、急坂区間ではコペッキーみずから集団メンバーをふるいにかける。チームとしてはヨーロッパ女王のミーシャ・ブレーデウォルツを前線に送り込んでいたものの、落車に見舞われてしまったこともあり、早々に先頭合流を図る態勢に切り替えていた。
鈍色の空模様で白い道はより白く
動きが活発になっていったメイン集団は、フィニッシュまで21kmを残したところで逃げメンバーをすべてキャッチ。未舗装セクションを2つ残してレースを振り出しに戻した。
いよいよ各チームのエースクラスによる力勝負モードへ。第11セクションの上りをきっかけにフォレリングが猛然とペースアップ。これに呼応するようにカタジナ・ニエウィアドマ(キャニオン・スラム)も急加速。やがて先頭に残ったのはコペッキー、フォレリングのチームSDワークス勢、ロンゴボルギーニとシリン・ファンアンローイのリドル・トレック勢、そこにニエウィアドマが加わる形になった。
すべての未舗装セクションを終えた直後、コペッキーが勝負に出た。急坂でのアタックに唯一反応できたのはロンゴボルギーニ。追走を余儀なくされたニエウィアドマにはフォレリングが抑えに入り、チームSDワークスとしては盤石の態勢になった。
「実のところ、脚の状態はベストとは言えませんでした。なので、チーム戦に持ち込んで勝利を目指すことにしました。とてもうまくいったと思います」(コペッキー)
ニエウィアドマとフォレリングを完全に引き離した先頭の2人。あとはどちらが決定打を放てるか。その瞬間はやはり、最後の難所でありハイライトとなるサンタ・カテリーナ通りの上りだった。
ロンゴボルギーニを前に出し、仕掛けどころを探ったコペッキー。計ったように残り500mで踏み込むと、ロンゴボルギーニに追う力は残っていなかった。
これが世界女王の強さだ。力強いペダリングと集中した表情は、最終コーナーを抜けたところでついに緩んだ。眼前に広がるカンポ広場とコース左右からの大歓声に、両腕を広げて喜びを表したコペッキー。トレードマークである右こぶしを突き上げると、キャリア2度目のストラーデ・ビアンケ ドンネ優勝のときを迎えた。
「今日は朝からベストコンディションではないと気づいていました。実際にレース中はずっと苦しかったです。でも、これはよくあることですし、幸いレース中にダメージが増すようなことはありませんでした。とにかく焦らず、サンタ・カタリーナ通りでアタックするタイミングを図りながら走っていました」(コペッキー)
激坂サンタ・カテリーナ通りでコペッキーがロンゴボルギーニを置き去りに
前週のオンループ・ヘット・ニュースブラッドでは、自信をもって臨みながらもまさかの敗戦。相手がマリアンヌ・フォス(ヴィスマ・リースアバイク)だったこともあるが、それにしても想定外の結果だった。そこで、この日は「レースをコントロールすること」をチーム内で徹底してスタートラインについていたという。残り30kmを切ってからはエース格のニアム・フィッシャーブラックを送り出して勝負に向けた基盤を固め、コペッキーとフォレリングの攻撃態勢を強化したことも奏功。チームを指揮するダニー・スタム氏も「1日を通して常に存在感を示せた。きっと誰にもまねできないチームプレーだ」と胸を張った。
これでチームSDワークスは、4年連続でストラーデ・ビアンケ ドンネを制覇。また、前身のボエルス・ドルマンスサイクリングチーム時代から数えると、10大会中7勝という驚異の数字を記録。今回はフォレリングも表彰台の最後の1枠を押さえ、ワン・スリーフィニッシュとなった。
UCIウィメンズワールドツアーは男子よりひと足早くレース数をこなしていて、これで5戦まで終了。次は3月10日のロンド・ファン・ドレンテが控える。さらに先には北のクラシック、アルデンヌクラシックが待っており、熾烈な戦いから一層目が離せなくなる。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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