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サイクル ロードレース コラム 2024年1月9日

【2024展望 | サイクルロードレース】新しい年は、新しい物語の始まり。熱狂必至の新シーズンが幕を開ける!

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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グランツール総取りのユンボ・ヴィスマ

グランツール総取りのユンボ・ヴィスマ

新しい年は、新しい物語の始まり。真夏の南半球で幕を開ける2024シーズンは、たくさんの明るい期待に満ちている。初春のヨーロッパを彩る伝統のモニュメント。いつも以上に楽しみなジロ・デ・イタリアと、いつもとちょっと違うツール・ド・フランス。チャンピオンたちの視線の先にはきっと、4年に1度の夏季五輪もあるはずだ。

■2023年は、超大物たちによる独占だった

過ぎていったシーズンを思う時、脳裏に浮かぶのは、1つの強大なチームと、3人の偉大なるチャンピオン。彼らが紡ぎ出した栄光の記録と、興奮の記憶。

グランツールのピンク、黄色、赤の3つの総合リーダージャージは、すべてユンボ・ヴィスマ色に染まった。しかも春のジロ・デ・イタリアを持ち帰ったプリモシュ・ログリッチと、夏にツール・ド・フランス連覇を果たしたヨナス・ヴィンゲゴーとが、自らを山で懸命に支えてきてくれたセップ・クスの秋のブエルタ・ア・エスパーニャ初戴冠を、そろって表彰台の上で祝った。

これほどまでの独占を、自転車界は、いまだ経験したことはない。総合表彰台の3つの場所に同じチームの選手が並ぶのは、1966年ブエルタ以来57年ぶりであり、ジロ、ツール、ブエルタを同一シーズンで同一チームがすべて勝ち取るのは、正真正銘、史上初めてだった。

5つのモニュメントと、2つのロード世界選手権に関してもやはり、わずか3人だけでタイトルを分け合った。

タデイ・ポガチャル

タデイ・ポガチャル

タデイ・ポガチャルは、ツール・ド・フランス優勝経験者としては、あのエディ・メルクス以来48年ぶりのツール・デ・フランドル勝利を成し遂げた。すでにリエージュ〜バストーニュ〜リエージュとイル・ロンバルディアを獲得済みの24歳(当時)にとって、つまり「メルクスに次ぐ史上2番目に若い年齢」でのモニュメント3種類獲得。

すぐにマチュー・ファンデルプールも肩を並べた。これまでのフランドル2勝に加えて、昨春、ミラノ〜サンレモとパリ〜ルーベを一挙に制圧した。しかも冬のシクロクロス世界選手権に続いて、夏のロードレース世界選手権でも頂点に君臨するという無双っぷりで、CXとロードの同一年世界制覇を成功させた「史上唯一」のチャンピオンになった。

SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル

【ハイライト】UCI世界選手権大会 男子エリート ロードレース|Cycle*2023

レムコ・エヴェネプール

レムコ・エヴェネプール

また2022年の秋にロードレースで世界一になったレムコ・エヴェネプールは、2023年の夏には、23歳で「史上最年少」個人タイムトライアル世界王者に。ポガチャルと同様にグランツールタイトルこそ逃したが──2人とも、ある意味では主役だった──、自身2度目のリエージュはきっちりと手中に収めた。

■2024年モニュメント、主人公は誰だ

夢は5大モニュメント全制覇。こう公言してはばからないポガチャルの春一番の目標は、もちろんミラノ〜サンレモ優勝に違いない。

過去2大会のポガチャルは苦杯を喫した。チーム一丸となってレースを激化するも、一昨季は下りでマテイ・モホリッチにぶち抜かれて5位、昨季はポッジオ最終盤でファンデルプールの加速に反応できず4位。果たして今年は、「クラシチッシマ」攻略に向けて、どんな作戦で挑むのだろうか?もしもミッションを成功させた場合、史上7人目の、そして現役では唯一、モニュメント4種類を掌握することとなる。

ワウト・ファンアールト

ワウト・ファンアールト

一方では2020年勝者ワウト・ファンアールトは、サンレモを欠場予定。所属チームのヴィスマ・リースアバイクがスプリンター中心でメンバーを組んできた場合、3年ぶりに「スプリンターズクラシック」らしい風景が繰り広げられる可能性もあり。

そのファンアールトは、すでに3度制しているシクロクロス世界選手権も、サンレモもスキップして、春はひたすら石畳2大モニュメントへと照準を合わせる。この冬のシクロクロスは、あくまで春を想いながら走り、宿敵マチューに歯が立たず2位続きだろうが、あっさり「クラシックに向けた調整」と割り切るほど。

至極当然ではあるけれど、この冬まさしく無敵状態のファンデルプールも、サンレモからルーベまで容赦なく獲りに行く。

ただ残念ながら、もはやフランドルをクリア済みのポガチャルは、この春は石畳に戻らないつもりだから、昨シーズン通してファンを夢中にさせたマチューvsワウトvsポガチャルの三つ巴戦はどうやらしばらくお預けだ。

マチュー・ファンデルプール

マチュー・ファンデルプール

代わりにリエージュ〜バストーニュ〜リエージュやイル・ロンバルディアで、ようやく本気のレムコvsポガチャルが実現するかもしれない!

同じ2019年にプロ入りし、いずれも「神童」の呼び名をほしいままにしてきた2人だが、代表戦を除くとたったの14日間しか同じレースを走ったことがない。しかも昨春レムコのリエージュ連覇の際には、ポガチャルが落車骨折で去り、昨秋ポガチャルのロンバルディア3連覇時には、レムコがレース序盤に落車出血。この春こそ、2人のガチガチのバトルが、絶対に見たい。

ちなみに1年前はファンアールトがリエージュで3位表彰台乗りを果たし、ファンデルプールも2020年大会で6位に食い込んでいる。「勝ちたいレースはもはやすべて勝った」と豪語するマチューは、次はリエージュに狙いを定めるのではないかと噂されている。

■2024年グランツール、久々のダブルツール成功なるか

ジロ・デ・イタリアに、いよいよポガチャルが初めて乗り込む。しかも、プロ1年目から毎年1つずつグランツールに出場し、そのすべてで総合表彰台に上がってきた25歳は、プロ6年目にしてルーティーンを変える。それがジロとツールのダブル参戦で……目指すはダブル総合優勝!

1998年のマルコ・パンターニを最後に、いわゆる「ダブルツール」を成し遂げたチャンピオンは存在しない。かつてアルベルト・コンタドールが、2度、挑戦に失敗した。最近では2018年にクリストファー・フルームがトライしたが、惜しくもジロ1位&ツール3位に甘んじた。

マリア・ローザで表彰台にのぼるゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ)

ゲラント・トーマス

そもそもポガチャルがダブルツールに挑むための、第一条件は、5月のイタリアでマリア・ローザを持ち帰ること。まずは37歳ゲラント・トーマス、復活ナイロ・キンタナ、電撃移籍キアン・アイデブルックス等々、手強いライバルたちをまとめて蹴散らさねばならない。

同じくジロ初出場のファンアールトは、総合争いなど念頭になく、いつも通り区間獲りに集中するとのこと。なんと言っても現役屈指の謎脚質オールラウンダー。初日マリア・ローザは射程圏内だし、6日目には「白い道」もあるし、2回のタイムトライアルではフィリッポ・ガンナとの一騎打ちが期待できそうだし、正直少なく見積もっても「ワウト向きステージ」が二桁はある。

ヨナス・ヴィンゲゴー

ヨナス・ヴィンゲゴー

ジロには頼もしい補佐役ラファウ・マイカを連れて行くポガチャルだが、6月末にイタリアから走り出すツールには、文字通り総力戦で臨む。アダム・イェーツフアン・アユソジョアン・アルメイダ、パヴェル・シヴァコフ、マルク・ソレル……そうそうたるグランツール総合エース級で周囲を固め、3年ぶりにマイヨ・ジョーヌ奪還を企む。

もちろん2連覇中のヨナス・ヴィンゲゴーが、眼前に大きく立ちはだかるはずだ。ただし、今年のツールは、過去4年間のようなポガチャルvs「ヴィスマ・リースアバイクのエース」という単純な構図には、決して収まりそうもない。

なにしろツール総合優勝の夢を追い求めるため、新天地へ移籍したプリモシュ・ログリッチは、悲願達成に燃えている。ついにツール獲りへと踏み出すエヴェネプールにとって、2024年フランス一周の特殊性は、大いなるアドバンテージにほかならない。大会史上初めてのニース閉幕を彩るために、最終日には、1989年大会以来となる個人タイムトライアルが用意された。

かつての最強軍団イネオス・グレナディアーズは、トーマス&カルロス・ロドリゲストム・ピドコックの3人体制を敷いてくる。さらにはサイモン・イェーツリチャル・カラパスエンリク・マステイオ・ゲイガンハートダヴィド・ゴデュ……と、2024年ツールにおいて総合注目選手は事欠かない。

引退撤回し、もう1年現役続行を決めたマーク・カヴェンディッシュの、ステージ勝利数単独史上最多35勝への挑戦もまた見逃せないのだ。

■パリ五輪、ロードも、ロード以外も

この夏はシャンゼリゼでの大集団スプリントフィニッシュが見られない代わりに、ツール終了直後に、パリでオリンピックが幕を開ける。

しかも日曜日にニースでアップダウンTT34kmをこなしてからわずか6日後の、7月27日土曜日に、全長32.4kmの市街地平坦個人タイムトライアルが待ち受ける。現役TT世界王者のエヴェネプールは、ツール総合も、五輪TTも、ついでに言えば8月3日のロードレースも、当たり前のようにすべて勝ちに行くつもりらしい。

フィリッポ・ガンナ

フィリッポ・ガンナ

フィリッポ・ガンナはこの五輪TTを今年最大の目標に掲げているが、昨夏のスーパー世界選でもトライし、トラック団体追い抜き金・ロードTT銀のダブルメダル獲得を成し遂げたように、8月5日から始まるトラック団体追い抜きも勝ちに行く。マジソンでは2021年大会にミケル・モルコフが、オムニアムでは2016年大会にエリア・ヴィヴィアーニが金メダルに輝いており、今回もトラックでのロードレーサー探しが楽しそう。

トーマス・ピドコック

トム・ピドコック

マウンテンバイクにだって、おなじみの顔ぶれが並ぶ。現役五輪金メダリストにして現役世界チャンピオンのピドコックは、ツールで初めての総合争いに3週間打ち込んだ後、7月29日、MTBの連覇を狙いに行く。やはりグラスゴー大会でダブル参戦(ロード金・MTB落車リタイア)を試みたファンデルプールは、パリ五輪では、いまだロードとMTBを両立するかどうか悩み中らしいけれど。

そうそう、昨季限りでロードレースの表舞台から去ったペーター・サガンは、今季はパリ五輪に向けて、100%マウンテンバイクで突っ走る。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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